テレワークでビジネスを継続させる
新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威をふるい、不要不急の外出自粛が続くなか、企業では場所にとらわれない柔軟な働き方「テレワーク」の導入が急務とされている。
2019年4月1日に、多様な働き方を推奨する働き方改革関連法の順次適用が始まってからちょうど1年。実際に改革を進めていた企業やこれから着手する企業など対応はさまざまだ。本来ならテレワークの導入にあたり、複数のサービスを多角的に検討するところ、今回のような社会の急激な変化で急遽テレワークを導入した企業も多いだろう。
一方で、2001年からテレワークを含めたワークスタイルイノベーションを推進してきた企業がある。世界最大のコンピュータネットワーク機器開発会社「シスコシステムズ」(以下、シスコ)だ。シスコは世界で圧倒的なシェアを誇るWeb会議システム「Webex Meetings」や、チームコミュニケーションツール「Webex Teams」を展開している。
「今日、いますぐに」導入できる
一般的なテレワークのツールには、電話と同じようにサーバーを介さず相手とダイレクトに接続するP to P(Point to Point)の接続形態をとる会議システムと、インターネット回線を用いる会議システムがある。どちらもテレワークに使用できる会議システムで、前者は回線が安定しているというメリットがあるが、専用機を用いるため費用がかかり、また場所が限られる。一方、後者はインターネット回線が安定している昨今は、前者と同様のクオリティで会議を開けるようになり格段に普及しはじめている。無料で気軽に始められたり、さまざまなデバイスで複数の人が参加することができるなど、各社サービスはさまざま。
「Webex Meetings」は現在世界シェアトップのクラウド会議システムで、インターネット環境があれば簡単に始められ、資料や画面の共有、最大1000名(ビデオ会議端末は200台まで可能)での大規模会議が可能だ。ネット環境が悪いときは電話回線で会議に参加することもできる。導入は簡単で、会議主催者がアカウントをつくり、参加者を招待するというもので、すぐに、今日にでも始められる。
さらに「Webex」は、より”チームコラボレーション”に特化し、どこにいてもチームが連携して高い生産性を維持できるよう、会議はもちろん、チャット感覚のビジネスメッセージング、共有した資料に書き込みのできるホワイトボード機能なども備えている。
テレワークがビジネスの主軸に
働き方改革を推進し、すでにテレワークを導入してきた企業にとって、これまでは会社という“リアルなオフィス空間での業務”と、テレワークという“バーチャル空間での業務”をシームレスにつなげることが課題だった。つまり主となるのは会社での業務で、テレワークは会社での業務を自宅でいかに再現するか、ということを中心に考えられてきた。しかし昨今の状況下では、それが逆転するかたちになっているという。シスコで中小企業やスタートアップユーザー向けのビジネス開発を担当する中元聡さんはテレワークの現状を次のようにとらえている。
「現在多くの会社で在宅勤務が強いられ、多くの人が“どうしてもオフィスでしかできないこと”のために会社に行くようになっています。そうなると、オフィスワーカーは大半の仕事を在宅勤務ですることになります。つまり今後は在宅での仕事を中心にしたビジネスを考えていくことが重要になります。Web会議やチャットのようなバーチャル空間で、どれだけビジネスを継続できるのか、いまこそ考えるタイミングなんですね」
企業が求める3つの要素
Webexの導入を検討する企業の問い合わせは、今回の事態でかなり増えているという。
ここ最近でテレワークを始めた多くの企業が特に気にしていることはどのようなことなのだろうか?
シスコのマーケティング本部プロジェクトマネージャーで、実際に企業からの問い合わせを受けている高山慶子さんは次のような要望が多いと話す。
「感染拡大が社会問題化した当初は、就職活動の時期ということもあり、面接や会社説明会をウェブでしたいという要望が多かったです。しばらくするとWeb会議やビジネスチャットで日々のコミュニケーションをとりたいという問い合わせが増えました。さらに外出自粛が長引きそうな今は、会社の業務システムを本当に自宅のパソコンで行ってよいのかというセキュリティ面も重視されるようになってきています」
テレワークを導入する際に企業が求めるのは、
①コミュニケーション手段の確立
②自宅からの情報アクセス
③情報セキュリティの確保
と中元さんは言う。
一番重要なのはセキュリティ
「いかにセキュアであるか――」
多種多様なサービスが乱立するなか、この点がWeb会議システムを選択するうえでの大きな指針になる。
音声のやりとりやデータの共有をバーチャル空間で行う際、“丸裸”の状態で会社の機密情報をやりとりするわけにはいかない。
シスコのコラボレーションアーキテクチャ事業部にてビジネス開発を中心に活動する田邊靖貴さんは、Web会議のソリューションについて「『みんなが使えて、話さえできればいい』という簡易的なツールだと、セキュリティ面が危ういこともあります。機密情報を扱うことが多いビジネスこそ、まずセキュリティを考えてシステムを選んでほしいと思います」と指摘する。
「Webex」の場合、参加者を自社のドメインやメールアドレスを持つ人だけに限定したり、SSOという統一認証を通らないとミーティングに入れないようにしたり、会議のセキュリティ機能を細かく設定することができる。もちろんミーティング毎のパスワードも簡単に設定可能。さらに田邊さんは次のように続ける。
「利用者目線のセキュリティ機能も大事ですが、企業のIT担当者の方が気にするのは、ネットワークレベルでのセキュリティや、サービス提供者のセキュリティに対する姿勢です。Webex Meetingsの場合、通信経路上の映像や音声、データはすべて暗号化されていますし、データセンター内でも暗号化してエンドツーエンドで暗号化することもできます。また、シスコ社内には、セキュリティと信頼に関する独立した組織があり、セキュリティの脆弱性が発覚した場合にはすべてを自ら開示しています。開発においても、すべての機能に対してセキュリティとお客様のプライバシー尊重を確認するプロセスが組み込まれていますし、Webexの利用者のデータを第三者に貸与・販売することなど一切ありません」
堅牢性の高さは、WebexがFISC(The Center for Financial Industry Information Systems公益財団法人金融情報システムセンター)の基準を満たしているということからも窺える。FISCとはセキュリティが特に厳しい金融情報システムの安全基準となるものだ。
テレワークがうまくいく6つのコツ
企業がテレワーク導入を決め、いざ自宅で使うとなると、これまで生活空間だった自宅を仕事場にしなくてはいけない。そうなると、ユーザー視点の課題も浮かび上がってくる。
「快適な仕事空間にするためにはどうしたらよいのか?」
シスコでは生産性を高め、健やかにテレワークを行うコツを 6つにまとめて社員に共有しているという。
①仕事と生活空間を分ける
②通常の1日の生活スケジュール・業務スケジュールを立てる
③集中を阻害する要因を最小限に
④こまめに休憩をとる
⑤コネクト・つながりを保つ
⑥通勤時間分の時間を有効活用する
田邊さんは「チームのミーティングを毎朝セットして、メンバーがそこに入って雑談してから仕事を始めている人たちもいます。私のチームでは、夕方に2時間くらいゆるくミーティングをセットしておいて、仕事が終わったあと少し雑談したい人が話せる部屋をWebex Meetings上に作っています。顔を見合わせて話す機会が大切なんですね」と、テレワークでもチームがうまくいく秘訣を教えてくれた。
中元さんも「3月、4月に歓送迎会ができない方も多いかと思います。チームのゆるっとした飲み会にも、Webexは使えます」と、会議だけではない多様な用途もあると話す。実際に、シスコでは運動不足解消のためトライアルで「Webex」を使ってヨガクラスも取り入れているという。
AIでリアルタイム議事録も
このようにさまざまな使い方ができるWebexだが、今後、さらに便利な機能が実装される予定だという。田邊さんは「最近、特に力を入れているのがAIです。まもなくリリースされるのが、Web会議の内容をリアルタイムで文字に起こし、字幕を出し、重要な点にハイライトを入れて議事録にしてくれる『Webex Assistant for Webex Meetings』(※導入当初は英語版のみの予定)です」という。
さらに、AIが会議参加者の顔認識をして名前を表示する機能や、「People Insights」という、参加者個人が公開している職歴や所属企業の情報などを自動で収集して提示してくれる機能も実装されている。このような機能により、初めて仕事をするメンバーでも詳しい自己紹介をしなくともお互いの名前をすぐ覚えられたり、共通項を見つけることもでき、コミュニケーションが活発になる。
テレワークの今後の課題
新型コロナウイルス感染症の影響下で、「テレワークを導入してみたけれど…」という見切り発射せざるをえなかった企業は多い。先行きの見えない状況で、急激な改革が強いられているなか、今後の企業が直面する課題について中元さんは次のように指摘をする。
「会議や電話などのソフト面を整えたあとは、インフラの整備が必要です。社員の自宅から安全に会社のシステムに接続できるVPN(バーチャルプライベートネットワーク)の構築や、サイバーセキュリティ対策なども必要になります。
そして、「在宅を前提にどう労務規定を作るのか、評価制度を作るのかが課題になってくると思います。従来の9時〜17時でオフィスで仕事をして成果を出すという測り方では難しくなってきます。以前から働き方改革を進めてきた会社組織は従来からそういう考え方を持ちながら進めてきたと思うので、今回のような事態でより加速していくでしょう。今後は時間と場所を選ばず、アウトプットされたものが評価されるような制度が増えていくと考えています」
テレワークが軸となったときに、ビジネスをどうまわしていくのか。企業と個人が考えなければいけない課題は山積みではあるが、まずは生産性を維持できる環境を整える必要がある。そしてテレワークを進めることにより、これまでの業務が見直され、効率よく仕事をしていくヒントが見つかるかもしれない。
【テレワーク参考情報】
働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)
現在、厚生労働省は「働き方改革推進支援助成金」に新型コロナウイルス感染症対策を目的とした取組を行う事業主を支援する特例コースを時限的に設置している。新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークを新規で導入する中小企業事業主、試行的に導入している事業主も対象を対象に設備投資などで補助金が出るしくみ。詳しくはこちらへ