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「士業ビジネスはコロナでどう変わる?」司法書士からみるオンラインでのビジネスの進め方

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司法書士の木村光太朗さん

コロナ前は、仕事の基本は「対面」だった

神奈川県茅ケ崎市、JR茅ケ崎駅近くに、司法書士の木村光太朗さんの事務所はある。2016年に個人事務所を開業、現在は2名のスタッフとともに業務にあたっている。駅近の利便性が高い立地。地元の方と「対面コミュニケーション」が取りやすい場所でもあった。

司法書士をはじめ、弁護士、弁理士、税理士、行政書士などの士業は個人情報や重要書類を扱うことから、対面業務が多い。個人事務所や小規模オフィスでIT環境が整備されていない事務所も多く、リモートワークや在宅勤務の導入も進んでいない。司法書士事務所と弁護士事務所ではテレワーク導入率が22%というデータ(*)もある。導入が進まない理由としては、「電話や来客への対応」「セキュリティが万全ではない」「データ共有やペーパーレス化に対応できていない」という課題が大きく影響している。

(*)アックスコンサルティング調べ

司法書士の仕事において、顧客の本人確認をすることも重要で、「対面で本人確認ができないことで『なりすまし詐欺』の被害がでたことも過去にはありましたし、相続案件などの場合は相談者がご高齢の方の場合が多く、対面のほうが安心感があるということもあります。双方にとって顔を合わせることがビジネスをうまく進めることにつながっていました」と木村さんは話す。「コロナ前までは基本的にお客様に事務所に来ていただくか、こちらが訪問するか。オンラインでの相談や打ち合わせは行っていませんでした」

ところが、新型コロナウイルスが猛威をふるい始め、4月に緊急事態宣言が発出されると、木村さんの事務所も対面業務を中止して、2名いるスタッフも在宅勤務に切り替えた。5月には売り上げが、前年同月比70~80%ほど落ち込んだ。コロナの弊害は業務全般に影を落とした。

「私は、認知症などで財産管理が難しい方の成年後見人も務めています。コロナ前は病院や施設に定期的に会いに行っていましたが、コロナで行けない状態が長い間続きました」。特別養護老人ホームなどではIT環境が整っていない施設もあり、職員とのオンラインの打ち合わせもままならないこともある。病院の体制やウェブ会議への意識は徐々に変化してきたが、「後見人業務で顔を見合わせてお話しができないのは、やはり影響がありました」と木村さんは話す。

コミュニケーションツールひとつで、変わるビジネス

木村さんはコロナ禍の前から、「ICT活用の重要性」を認識し、業務にも取り入れてきた。後押しになったのは、所属している日本青年会議所(JCI日本)の地域ビジョン確立委員会の薦めだ。この委員会はICT活用を積極的に推進して、ビジネスやコミュニケーションの生産性を高める活動に取り組んでいる。

木村さんは今年の1月にコミュニケーションツールWebex Teamsを導入した。以前は、電話やFAX、メール、チャットでスタッフとやり取りをしていたが、Webex Teamsを活用することでビジネスもコミュニケーションも変化しつつあることを実感している。

「たとえば以前使用していたデータのアップロードサービスやチャットは、一定の期間を経過するとデータ保存期間が終了してしまったり、案件ごとのグループ分けが難しかったり、また個人情報のデータはセキュリティの不安もあり、オンライン上で高度な業務はできませんでした。それがWebex Teamsだと、過去の資料にも簡単にアクセスでき共有も簡単にできる。企業や案件ごとにスペースを作れるので、情報整理をするにも、可視化するという部分でも役立っています」

司法書士の仕事でオンライン化の大きなハードルだったセキュリティも、Webex Teamsなら安心だという。今まではスタッフ間での資料共有も手渡しやFAXが基本にあったが、Webex Teamsは、大容量のサイズの資料も手間なく暗号化して簡単に共有できるうえに、データと通信を2重で暗号化することで当人同士以外の外部からのアクセスを防ぐセキュリティがある。

「急ぎの資料がWebex Teamsで手軽に送受信できるようになり、作業効率もあがりました」と木村さんは話す。

JCI日本のメンバーとWebex Teamsで打ち合わせ

事務所スタッフの在宅勤務も、このセキュリティへの安心感があったからこそ実現できた。スタッフや同業者、JCI日本のコミュニケーションでWebex Teamsを活用することが多いそうだが、チャット機能にくわえて、会議機能や電話機能も使い、資料を共有しながら会議や打ち合わせをおこなっている。

対面が基本だった司法書士の業務も、いま徐々に変わり始めている。
「お客様にはオンラインでも対面でも、相談や打ち合わせができることを事前にお知らせして、お客様の都合の良い方法を選んでいただくようにしています。企業からの相談や打ち合わせはウェブ会議が増えてきたのでWebex Teamsで対応しています。個人のお客様ですと、まだ電話やメールで相談されることが多いので、いまは法人か個人で使い分けることが多いです。必ずしもお客様と会わなくてもビジネスが進められることに気づきました」

リモートワークの普及でウェブ会議システムの認知度も上がり、オンラインで打ち合わせることへのハードルも下がってきた。木村さんは、個人の顧客でも今後はオンラインで打ち合わせができることを感じ始めている。「移動時間や準備時間の節約、それに双方にとって交通費の節約にもなりますし、これからもっと広がっていくと思います」

個人事務所のWi-Fi環境の整え方

木村さんはコロナを受け、事務所のWi-Fi環境もシスコシステムズのツールで充実させた。

「リモートワークが普及したからなのか、住宅街でもある事務所周辺のWi-Fiが大渋滞していたようなんです。事務所がふたつのフロアに分かれているので、今までのWi-Fi環境ではプリンターがうまく作動しなくなってしまいました」。そこで導入したのが、「Meraki GO」だ。

「ITに特別詳しいわけではない」と木村さんは言うが、Wi-FiアクセスポイントのMeraki GOはスマホアプリひとつでネットワーク設定もデバイス管理も簡単にできる。本体サイズも小さく、場所を取らないメリットもある。

コンパクト設計のMeraki GOは2019年のグッドデザイン賞を受賞した

Wi-FiのアカウントもひとつのMeraki GOで4つまで作成できるので、たとえば本人用アカウント、ゲスト用アカウント、プリンター用アカウントなど分けて使用することで、どのアカウントでどのくらいの通信量があり、どこにアクセスしたかなど詳細な使用状況もスマホアプリでひと目でわかるようになっている。

「事務所の来訪者やお客様もQRコードを読み込むだけですぐにWi-Fiにつなげる手軽さも役立っています。マーケティングにも活用できるのではないかと思いますね。スマホやPCを開いている時間や時間帯もわかるわけですから。新しいサービス提供や事業拡大の戦略を立てるときなどにも使えそうです」

新しいビジネスの可能性

コロナ禍でもピンチをチャンスと捉え、ITを積極的に活用している木村さん。仕事のネットワークも広がっている。
5月には、岐阜で旅館を経営するJCI日本の地域ビジョン確立委員会の委員長や長野の松本にいるゲスト講師などともにウェビナーをはじめて主催した。打ち合わせに使ったのももちろんWebex Teamsだ。
「対面での打ち合わせよりスピーディーに事前準備が進みました。今までですと、ゲスト講師の方に会いに松本に行き、岐阜に事前打ち合わせに行き……と、準備に時間を費やすイベントだったと思うのですが、効率がいいですよね。企画立案からおおよそ2週間ほどで準備は整いました。打ち合わせから開催まで一度も対面なく進められたことで、JCIや仕事の活動の幅も今後より広がると思います」。このスピード感こそオンラインの真骨頂と言えるだろう。

移動時間も打ち合わせにあてられ、全国の仲間たちとすぐにオンラインで繋がることができる。JCI日本の会議ひとつとっても、今までは茅ヶ崎から東京の往復と準備時間も含めると3時間ほどかかっていた時間を節約できるようになった。

木村さんは、「新しい司法書士のあり方で、自分の仕事を全国に広げられる可能性を秘めていると思います」と話す。実際、ハワイ在住の人から日本で起きた相続の問題で、木村さんに依頼が来た。「以前であれば対面できないと難しかった案件ですが、ウェブ会議で顔を合わせて打ち合わせできることで、お互いにキャラクターもわかり信頼関係を築けました。それに司法書士の業務は法務局への申請業務がありますが、2008年より全国の法務局でオンライン申請が可能になったので、茅ヶ崎にいても沖縄の法務局にも北海道の法務局にも申請もできます」

コロナ禍を思い切ったICT活用へのチャンスととらえ、仕事に広がりを持たせることができた木村さん。「地元密着」の事務所としてこれからも対面を大切にする。そこにオンラインの価値も加えたハイブリッド型の働き方で顧客の要望に応え、新しい司法書士ビジネスの地平を拓いていく。

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