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新型コロナが広がる日韓で自宅隔離を経験して考えたこと 

現地発 韓国エンタメ事情 更新日: 公開日:
自宅隔離中、友人から届いた手作りキムチやピビンパセット=成川彩撮影

日本と韓国を行き来して暮らしている関係で、両国で自宅隔離を経験することになってしまった。新型コロナウイルス感染対策の一環だ。

まずは3月28日に韓国から日本に入国し、4月5日に出国するまでの9日間、東京の自宅で過ごした。

日本政府は3月5日、中国と韓国からの入国者について、指定された場所での2週間隔離措置を発表した。措置は9日からで、日本国籍者も対象だ。

28日に一時帰国したのは、新たなビザの取得のために必要な書類を入手するためだった。今の在留資格は4月末まで。書類さえ入手したら早めに韓国に戻ってビザを申請する必要があった。飛行機のチケットを購入する前に在韓日本大使館に「2週間隔離というのは、例えば1週間で韓国へ戻るのは可能か」と問い合わせた。だが、返ってきたのは「たぶんだめだが、成田に着いて確認してほしい」という曖昧な回答のみ。大使館が把握していないのには驚いたが、とりあえず片道チケットを購入した。

ほとんど人影のない仁川国際空港=成川彩撮影

28日、仁川国際空港は、ほぼ勤務スタッフ以外は姿が見えないほど、がらんとしていた。SF映画を見ているようだった。乗ったのはチェジュ航空で、乗客は20人ほど。機内では「質問票」が渡され、「体調に異常はありますか」などの新型コロナ感染にまつわる質問や、日本での滞在先などを回答した。成田国際空港に着陸し、飛行機を降りて入国審査に進む前に、2週間隔離についての説明を受けた。事前に調べていた通りで、自宅で過ごしてもいいが、自宅までは公共交通機関は使えない。「どうやって自宅に行きますか」と聞かれたので、「夫が車で迎えに来ています」と言えば、それでOKだった。気になっていた「2週間以内に韓国に戻るのは可能か」の質問には「まったく問題ない。2週間以上日本に滞在する前提で2週間は待機してほしいということで、2週間以内に出国するのは自由」との回答だった。

私は迎えに来てくれた夫のおかげで自宅に戻れたが、地方在住者など成田から自宅まで公共交通機関を使わずには行けない人も多いだろう。タクシーも使ってはダメだという。2週間成田空港近くのホテルで待機した後、公共交通機関で自宅へ戻った知人もいる。相当な経済的負担だ。一方で公共交通機関を使っても、自宅やホテルから外出しても、何のチェックもない状態で、どれだけの人が順守しているのだろうと疑問に思った。

自宅から出ない、というのも、同居者がいない場合は不可能に近い。一人暮らしの人が海外から戻ってすぐに自宅に食べ物が十分にあるというのは考えにくい。ちょうど帰国の頃、都内では買いだめで食品が品薄になっているという報道があり、心配した両親が送ってくれたので助かった。

東京の自宅で待機中に、韓国でも4月1日以降、すべての入国者に対して2週間の隔離を実施することが決まった。必要書類がそろい、再び韓国へ向かったのは4月5日。成田空港は意外に人が多く、帰国する中国人、韓国人が大半のようだった。中国や韓国で感染者が減っているのに対し、日本で増えてきたからだろう。戻りもチェジュ航空だったが、今度は8割は席が埋まっていた。客室乗務員を含め全員マスクをしていたが、密集・密閉空間なので少し不安を感じた。

機内ではやはり新型コロナ関連の質問用紙に記入し、「モバイル自宅診断アプリ設置案内」の用紙も配られた。仁川空港に着くと、入国審査に進むまでにアプリのダウンロード用QRコードが掲示されており、他の入国者にならってスマートフォンにダウンロードした。入国審査の入り口前にスタッフが数人いて、書類を提出したり、体温を計ったり、2週間隔離についての説明を受けたりした。アプリには韓国の自宅の住所を入力し、1日2回、アプリを通して体温など質問事項に回答するようにと言われた。

自宅隔離者向けのアプリ(スマートフォン画面キャプチャー)

ソウル市在住の入国者は全員がPCR検査を受ける決まりだが、私はソウル市郊外の京畿道高陽市に住んでいるので、症状があれば受けられると言われた。その場合、検査費は無料だ。

事前に韓国のニュースをチェックし、空港から自宅までは入国者専用のバスやタクシーで帰れることが分かっていたが、到着が夜の11時近い便だったので、念のため友人に自家用車で迎えに来てもらった。

4月5~19日が指定された隔離期間。その間、家から出られない。韓国の隔離は日本と違って厳格で、仁川空港で手渡された「隔離通知書」には、「違反者は1年以下の懲役または1000万ウォン(約88万円)以下の罰金に処せられうる」とあり、怖くて出られないと思った。実際、違反者が検挙されたり、外国人の場合は国外に追放されたり、というニュースも報じられている。

仕事柄、記事を書いたり、そのために映画を見たり本を読んだりは自宅でもできる。毎日午前10時と午後3時に体温を計り、咳は出ていないか、喉の痛みはないか、などの質問にアプリを通して答える。さらに高陽市や保健所から毎日電話がかかってきて、安否確認を受ける。GPS機能のあるスマートフォンを自宅に置いて外出する人もいるので、電話に出ないと警察が自宅に来るらしい。監視されている息苦しさは若干あるが、逆に何かあったら助けてもらえるという安心感もある。

自宅隔離者向けのアプリ(スマートフォン画面キャプチャー)

保健所からは職員が直接訪ねてきて、マスクや消毒剤をくれた。高陽市からは食料が段ボールいっぱい送られてきた。米やインスタントラーメン、チゲやカレーなどのレトルト食品、ツナ缶、韓国ノリなど2週間では食べきれないほどの量。個人的にも「足らない物あったら教えて」と連絡をくれる友人は数知れず、直接届けに来たり、郵送してくれたり、本当に韓国の人たちは情に厚い。日本でも韓国でも外食の多い生活をしてきたが、隔離生活の間に料理の楽しさを味わえたのは良かった。

保健所から届いたマスクや消毒剤=成川彩撮影
高陽市から届いた食料=成川彩撮影

懸案のビザは、隔離が終わればすぐに申請しようと思っていたところ、在留の期限が3ヶ月自動的に延長され、7月末までいられることになった。新型コロナ感染防止のため、出入国管理事務所にビザの延長や申請に来ないように、という措置だが、余裕ができて助かった。

日韓で経験してみると、日本の対応のゆるさが気になった。入国者に不可能に近いことを求めながら、チェック機能はないというのは問題だ。もう少し実効性を考えた対策を取れないものかと思う。