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韓国映画の撮影現場は「ご飯」が違う! 俳優、武田裕光インタビュー

現地発 韓国エンタメ事情
「保安官」でチョ・ジヌン(右から2人目)と共演する武田裕光(左から2人目)=よしもとエンタテインメントソウル提供

韓国映画でよく見る日本の俳優といえば、この人だ。武田裕光。2008年から韓国に暮らし、これまで10本ほどの韓国映画に出演した。

韓国映画で活躍する俳優、武田裕光=よしもとエンタテインメントソウル提供

特に2017年に韓国で公開された映画「隊長キム・チャンス」では、かなり存在感のある役だった。キム・チャンスは、独立運動家として知られる金九(キム・グ)の青年時代の名前だ。映画の背景は1890年代、 朝鮮の王妃、閔姫(ミンビ)暗殺の敵討ちとして日本人を殺したキム・チャンス(チョ・ジヌン)は死刑判決を受け、投獄される。その裁判から死刑執行の場面(執行は撤回され、行われなかった)まで、キム・チャンスと対立する日本領事の役を武田が演じた。

実際よりも20歳ほど年上の役。メイクで老けさせ、いつもよりも落ち着いた口調で演じた。等身大の武田は「普段全然落ち着きないっしょ」と笑う、大阪出身のアラフォーだ。この作品が「最も印象に残る作品」と話し、出演シーンが多かった分、「監督とも俳優とも芝居の話がたくさんできた」と言う。特に、監獄所長役のソン・スンホンとは、ほぼ毎シーン一緒に出演し、武田が日本語指導も担当したという。

「隊長キム・チャンス」で日本領事役を演じる武田裕光(左)。右は監獄所長役のソン・スンホン=よしもとエンタテインメントソウル提供

主演のチョ・ジヌンとは「バトル・オーシャン 海上決戦」(2014)や「保安官」(2017)でも共演している。「チョ・ジヌンさんはお酒をよく飲むんですけど、二日酔いで現場に来ても、撮影が始まるとすごい集中力を発揮する。二日酔いも演技だったのかなと思うぐらい」と笑う。

日本で俳優として舞台を中心にドラマや映画にも出演していた武田が、最初に韓国を訪れたのは2006年。延世大学の韓国語学堂で3ヶ月韓国語を学んだ。もともと映画好きで、イ・チャンドン、パク・チャヌク、ポン・ジュノ、キム・ギドクら韓国の監督の作品に魅了され、「あそこ(韓国映画)に入りたい」と思うようになったという。「3ヶ月いれば、映画の現場も見られるんじゃないかと思った」。映画の現場は見られなかったが、3ヶ月の間にドラマ出演の機会を得て、ドラマの現場は見ることができた。

語学留学を終えていったん日本に戻ったが、2008年、やっぱり韓国で活動したいと思い、渡韓した。韓国映画デビューは「炎のように、蝶のように」(2009)。武田が日韓の現場を経験して最も大きな違いとして挙げるのは「ご飯」だ。「日本はお弁当で、各自が空き時間に済ませる感じ。韓国はみんなで食べる。給食みたいに列に並ぶのに監督もトップスターも関係ない」。「炎のように、蝶のように」でも、主演のチョ・スンウが、武田に「本当に日本から来たの?本当に日本人?」と話しかけたという。「日本ではなかなかトップスターが端役に声かけませんよね」。食事を通してコミュニケーションがとれる韓国の現場がおもしろいと言う。

2015年の釜山国際映画祭ではキム・ギドク監督「STOP」出演者としてレッドカーペットを歩いた。左から武田裕光、キム・ギドク監督=よしもとエンタテインメントソウル提供

共演の思い出といえば、「隻眼の虎」(2015)では、大杉漣とも共演した。1920年代、日本統治下の朝鮮で巨大な虎を捕まえる話だが、それを指揮する日本軍のトップが大杉、部下を武田が演じた。やはり一緒にご飯を食べているうちに親しくなったようだ。撮影後もたびたび東京で会い、「アウトレイジ 最終章」への出演のきっかけを作ってくれたのも大杉だった。最後に会ったのは、大杉が出演するライブ。「『武田君も音楽やりなよ』って言われて、その気でギターも買ったんですけどね」。そんな元気な姿しか記憶にない大杉が2018年、突然亡くなった。「大杉さん、『韓国映画、いいね』って何度も言ってました」。「隻眼の虎」の撮影は6ヶ月に及び、1ヶ月ほどで撮る日本映画との違いに圧倒されていたという。

武田は今年1月から、KBS WORLD Radioの日本語番組「玄界灘に立つ虹」でパーソナリティーを務めている。ラジオが好きで、韓国でも日本のラジオを聴き続けているというだけあって、最初からこなれた進行だった。実は私も隔週出演し、韓国の映画や小説を紹介しているのだが、映画で見る雰囲気とはまったく違う明るいノリで楽しませてもらっている。もう一人のパーソナリティー、日本語ペラペラの韓国人イ・ジンヒョンさんとの息もぴったり。「ジンヒョンさんがしっかりやってくれるので、僕は茶々入れるだけ」とは言うが、 特に映画紹介の回では、現場を知る立場からの貴重な話が聞けるので、私も勉強になる。新型コロナウイルスの影響で厳しい状況が続く韓国映画界だが、微力ながら一緒に盛り立てていきたい。