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話題の小説「82年生まれ、キム・ジヨン」映画化 主演チョン・ユミに非難の声、なぜ?

現地発 韓国エンタメ事情
今も国内小説の棚の1位に置かれている「82年生まれ、キム・ジヨン」。2019年1月、ソウル市の教保文庫=成川彩撮影
今も国内小説の棚の1位に置かれている「82年生まれ、キム・ジヨン」。2019年1月、ソウル市の教保文庫=成川彩撮影

日本でも翻訳出版され、発売1ヶ月で5万部が売れるヒットを記録した韓国の小説「82年生まれ、キム・ジヨン」(チョ・ナムジュ著、斎藤真理子訳)が今年、韓国で映画化される。同小説は韓国では2016年の発売以降、販売部数100万部を超えるベストセラーとなっている。今も書店に行けば、国内小説の棚の1位に置かれている。ところが、昨年、映画化が決まり、チョン・ユミ主演と報じられると、非難の声が相次いだ。なぜか。

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主人公キム・ジヨン役のチョン・ユミ=マネージメントSOOP提供

私が「82年生まれ、キム・ジヨン」を手にしたのは、昨年3月だった。韓国で性被害を告発する#Me Too(ミートゥー)運動が広がる中、「フェミニズムの小説」と聞き、読んでみた。主人公の1982年生まれの女性キム・ジヨンの記憶を通し、韓国の女性たちが日常的に経験してきた男女差別が見えてくる小説だ。キム・ジヨンはごく平凡な女性で、夫はむしろ妻に優しい方だ。日本でも韓国でも、もっとひどい夫はいくらでもいる。それでも、キム・ジヨンが精神的に耐えられなくなるような男女差別の要素がいっぱいなのが、韓国の1982年生まれの女性を取り巻く現実だ。その時々の実際の出来事やデータも盛り込み、リアルな韓国社会がのぞけるような小説になっている。

ところで、私はまさに1982年生まれだが、共感する部分が多いとは言え、幼いころから男女平等を前提に育ってきた日本の状況とは若干時代が違う気もした。私より10歳ほど上の日本人女性によると「自分の世代がまさにキム・ジヨンと似ている」と話していた。男女平等に関して言えば日本と韓国で10年ほどのタイムラグがあったのかもしれない。

それも、昨年でガラっと変わった。韓国では昨年1月に女性検事が検察内のセクハラを訴えたのを皮切りに#Me Too運動が広まり、各界の大物が続々セクハラや性暴力を告発された。告発された側が自殺する事件まで起こり、有名無名を問わず、安易な言動は慎む雰囲気になった。

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キム・ジヨンの夫役のコン・ユ=マネージメントSOOP提供

ところが、残念なのは、反動から反フェミニズムの勢力も拡大したことだ。反フェミニズムのターゲットとなった一つが、小説「82年生まれ、キム・ジヨン」だ。読めば過激なフェミニズムの小説では決してないのだが、ベストセラーゆえか、過剰な反応が起きている。例えば昨年、ガールズグループ「Red Velvet(レッドベルベット)」メンバーのアイリーンが、ファンミーティングで「82年生まれ、キム・ジヨン」を読んだと語っただけで、ネット上で「フェミニスト宣言をした」などと非難を受け、アイリーンの写真を燃やしている画像をアップするような悪質な反応が見られた。

昨年9月にチョン・ユミのキャスティングが報じられると、チョン・ユミのインスタグラムに「ファンとしてがっかり」「キャリアに汚点を残す」など否定的なコメントが相次いだ。一方で、それに対抗するかのように応援のコメントも続いた。さらに青瓦台(韓国大統領府)の「国民請願」という国民がオンラインで声を寄せるホームページに、「小説『82年生まれ、キム・ジヨン』の映画化を止めてください」という声が寄せられ、話題になった。何に反対しているのか理解し難いが、チョン・ユミでなくとも、誰がキャスティングされても起こったであろう反応だ。

個人的には、本当に映画化が実現するのだろうかと心配していたが、今年1月末、クランクインしたという。主人公のキム・ジヨン役をチョン・ユミが、夫役をコン・ユが演じる。二人は映画「トガニ 幼き瞳の告発」や「新感染 ファイナル・エクスプレス」でも共演しており、息はぴったりだ。コン・ユのファンは日本にも多く、小説のヒットも受けて、映画も日本で公開されそうだ。今年の期待作の一つとして、行方を見守りたい。

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キム・ジヨンの夫役のコン・ユ=マネージメントSOOP提供