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映画、ドラマに続いてVR体験館まで…「ゾンビ全盛期」

東亜日報より 更新日: 公開日:
ゾンビは韓国ではもはやB級の素材ではない。飢えに苦しむ朝鮮版ゾンビから、菜食主義者の設定の優しいゾンビまで、様々なジャンルと「コラボ」が進んでいる。13日に公開された映画「奇妙な家族」で、キャベツが好きなかわいい「チョンビ」。(メガボックス中央プラスエム提供)

「うわ!」「びっくり」

16日、ソウル市麻浦区のVR(仮想現実)体験館に10人余りの悲鳴が響き渡った。VR専用ヘッドセットをつけた彼らは、機関銃の引き金を引きまくっていた。そろりそろりと、緊張した動作がおかしくも見えるが、仮想現実の世界はまったく違う。

明かりのない地下鉄でゾンビたちが突進してくる。腕や脚がちぎれて血が噴き出していても、ゾンビたちはひるまない。突然飛び出してくるゾンビに驚いて事故にならないよう、部屋ごとにスタッフが配置されていた。途中でギブアップする人もいる。

毎週ここを訪れる大学生のイ・ミョンジンさん(26)は、「ホラー映画を見るよりもおもしろい。一人称視点シューティングゲーム(FPS)のマニアです。ゾンビが出てくるゲームが一番好き」と話す。実際、体験館が提供する5つのVRゲームのうち、ゾンビが素材のゲームが最も人気だ。運営するイートライブ(ETRIBE)のイ・ジュンソプ本部長は、「ゾンビという素材への関心が高まって、最近は予約が爆発的に増えている」と言う。

最近、韓国はゾンビ全盛期だ。一部のマニアが求めるカルト的な素材だったゾンビが、スクリーンとお茶の間を飛び出して、多様な文化コンテンツとして拡散している。海外のゾンビとの差別化を図って、「韓国型ゾンビ」を意味する「Kゾンビ」という新造語もできたほどだ。

本格的なきっかけは映画だった。1100万人の観客を動員した映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」(2016)の大ヒットの影響が大きい。ヨン・サンホ監督は「『新感染』を作った時は、まだゾンビが大衆的な素材ではなかった。ゾンビの代わりに『感染者』として広報したぐらい」と話す。

もともと海外でも、ゾンビという素材は、低予算のホラー映画やB級のジャンルとして扱われてきた。最初は、ジョージ・ロメロ監督の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」(1968)。2010年からの米国ドラマ「ウォーキング・デッド」シリーズや、2億ドルの製作費を投じたゾンビ映画「ワールド・ウォーZ」(2013)が世界的なヒットとなり、メインジャンルに昇格した。

1月25日に公開されたネットフリックスの6部作の韓国ドラマ「キングダム」は、本格的な「Kゾンビ」時代を知らせる作品だ。朝鮮時代を背景にしたこのドラマで、悪代官の横暴と飢えに苦しむ百姓たちは、疫病にかかり、ゾンビになる。特にゾンビと時代劇を組み合わせた試みが新鮮だという意見が多い。コンリョンポ(朝鮮時代の衣服)を着て、素早く動き回るゾンビの姿は、西欧のそれとは違う。英国紙「デイリー・テレグラフ」は「ハリウッドのゾンビものが伸び悩んでいる状況で、期待を上回るヒット作が誕生した」と評価した。

13日に公開された映画「奇妙な家族」は、ゾンビとコメディーが合わさった。ゾンビウイルスは若返りの秘薬で、「チョンビ」という愛称で呼ばれるゾンビは、キャベツにケチャップをかけて食べる菜食主義者。めちゃくちゃな設定だが、「ゾンビものの新たなジャンルを開拓した」という観客の評価を受けている。

ヨン・サンホ監督の「新感染」の続編「半島」や、ロッテエンターテインメントが準備中の「汝矣島」など、当分の間、ゾンビが素材の映画が続く見通しだ。チュ・ドングン作家のゾンビものウェブコミック「今、私たちの学校は」は映画「完璧な他人」のイ・ジェギュ監督がドラマ化する。

ゾンビとの「コラボ」もある。昨年、ガールズグループLABOUM(ラブーム)は、タイトル曲「Turn It On」のミュージックビデオにゾンビを登場させ、物寂しいアルバムのコンセプトにインパクトを与えた。大型のゾンビのフィギュアなど、おどろおどろしい雰囲気を醸すゾンビがテーマの居酒屋も人気。イサベら人気ユーチューバーがゾンビの特殊効果を施した動画や、ゾンビに仮装して驚かせる、どっきりカメラの動画も人気だ。

ゾンビものへの反応が韓国内でこんなに熱い理由は何か。日本の文芸評論家藤田直哉は「ゾンビは大衆の無意識と時代の雰囲気を反映したもの」と述べた。大衆文化評論家のハ・ジェグンは「ゾンビものがB級の素材から、現代社会の問題を表現する装置として使われるようになってきた。単純なおもしろさ、遊びを越えて、社会的メッセージがこめられ、しばらくはゾンビブームが続くだろう」と話した。

(2019年2月18日付東亜日報 シン・ギュジン記者、ユ・ウォンモ記者)

(翻訳・成川彩)