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狂気の教育熱 韓国ドラマ「SKYキャッスル」

現地発 韓国エンタメ事情
ドラマ「SKYキャッスル」で主人公の教育ママを演じるヨム・ジョンア(左)と、入試コーディネーターを演じるキム・ソヒョン=JTBC提供

韓国の受験戦争の激しさは、日本でもよく知られている。度を越えた教育熱は、時に親も子も不幸にする。そんな現実を描いたドラマ「SKYキャッスル」(全20話)が年明け早々話題を集め、視聴率を伸ばし続けている。

昨年11月下旬に始まった「SKYキャッスル」、初回の視聴率はわずか1.7%だった。その後めきめきと視聴率を伸ばし続け、1月12日放送の16話は19.2%を記録した。放送局はJTBC。12.3%(12話)の時点で「JTBCドラマの歴代最高視聴率を更新した」と報道されたが、その後も毎週更新し続けている。最近は地上波のKBSやMBCのドラマよりも、ケーブルテレビのJTBCやtvNのドラマの視聴率の方が高い傾向だ。

日本で年末年始を過ごした私は、「SKYキャッスル」の大半を見逃していたが、韓国の記者から「韓国社会を知るには絶対に見た方がいい」と勧められ、VOD(ビデオ・オン・デマンド)で初回から見直した。韓国社会の勉強のためだったのが、完全にはまってしまった。

SKYキャッスルは、ドラマの主人公たちが住む高級住宅団地の名前だ。名門大学がソウル近郊に造成し、大学病院の教授らが入居しているという設定。その入居者親子の受験戦争は自殺者が出るほど熾烈を極める。SKYと言えば、韓国ではトップ3と言われるソウル大学(S)、高麗大学(K)、延世大学(Y)を指すが、ドラマに出てくる高校生たちの目標はたった一つ、ソウル大学医学部。

SKYキャッスル入居者たちの読書会。親子一緒に参加し、討論を繰り広げる=JTBC提供

主人公は、ハン・ソジン(ヨム・ジョンア)。昨年、観客数500万人を超えるヒット作となった映画「完璧な他人」でも演技が光ったヨム・ジョンアが、コンプレックスの塊の教育ママを演じている。娘の成績のためにライバルの生徒を犠牲にする恐ろしい一面を持ちながら、貧しい家庭で育った自身の過去を隠して娘にすべてを注ぐ姿を見ていると、悪役なのに共感を集めるという不思議なキャラクターだ。

驚いたのは、「入試コーディネーター」の存在。ハン・ソジンの長女イェソのコーディネーター、キム・ジュヨン(キム・ソヒョン)は、億単位(数千万円)の報酬を受け、ソウル大学医学部入学のため、受験勉強のみならず、ボランティア活動や交友関係などすべてをコーディネートする。実際、大学受験の際には学力のみならず様々な活動が総合的に評価され、「合否の基準があいまい」という不満も高まっている。周りに聞いても「金持ちが有利なシステム」と言う。

韓国の教育費は、ドラマのような富裕層でなくとも、一般家庭でも日本に比べてかなり負担が重いようだ。周りの一般家庭でも、小学生の塾や習い事に月100万ウォン(約10万円)という話は珍しくない。日本よりも平均月給は安いので、相当な負担だ。若者にとって、子どもを産み、育てるという選択は日本以上に経済的に難しくなっている。2018年には出生率が0.95%となった。

一方、ドラマでは大学病院に勤める父親たちの出世争いも描かれている。患者のための医療よりもいかに病院に儲けをもたらし、出世するか。友達を踏んづけてでも成績を上げる子どもたちの世界と、大人の出世争いはそっくりだ。それもそのはず、この子たちが医学部に入って医師になり、同じ競争を繰り返すのだから。というのが、このドラマが鳴らす警鐘のように思う。単なる入試の不平等の問題ではない。それによってまともな医療サービスを受けられないという、すべての人に関わってくる問題だ。

合格率100%を誇る入試コーディネーターのキム・ジュヨン(キム・ソヒョン)=JTBC提供

深刻なテーマでありながら、ブラックコメディーと言っていいほど、吹き出すような場面も盛りだくさんだ。例えばイェソを生徒会長にしようとするハン・ソジンのセリフ。生徒会長は学内の選挙で決まるが、1番でなければ気の済まない負けず嫌いのイェソは、周りの生徒からは嫌われている。他の生徒の保護者からイェソが選挙で勝てると思っているのかとバカにされたハン・ソジンは、「誰もトランプが大統領になるなんて思ってなかったでしょ」と、含み笑い。結局はコーディネーターのキム・ジュヨンの協力を得てライバル候補を辞退させ、イェソを当選させる。

もちろんドラマゆえオーバーな描写は多いが、現実の韓国社会を反映しているのは間違いない。「SKYキャッスル」に関するニュースは毎日あふれんばかり報じられている。ただの娯楽として消費されて終わりとならず、熾烈な受験戦争が少しでも改善される原動力になればと願うばかりだ。