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韓国は塾の国 超学歴社会を行く親子の現実

LifeStyle 更新日: 公開日:
ソウルで行われた大学入試を終えて帰路に就く学生と父母ら=東亜日報提供

「お子さんは、中学の数学を何年生で全部マスターしたんですか」

「え?うちの子は今、小学校6年なんですけど」

「私たちの学院(ハゴォン・塾)に通う小6の場合、中1の過程を全部終わっている子が多いんです。他のお子さんと水準が合わない場合は、正規班に入る前に個人授業を受けて頂くか、低学年の子どもと一緒に勉強してもらうことになります」

息子の数学塾を探していて、電話相談で交わした会話だ。「ものすごい塾だ」と思ったが、他の塾でも似たやり取りになった。

韓国では小中学校の正規授業は毎年12月に終わる。12月末から1カ月の冬休みを経て、翌年2月に卒業式があり、3月から新学期が始まる。

大学入試(修能試験)は毎年11月に実施される。学校の成績は、名門大学に進学するうえで大きな比重を占めるため、日頃から良い成績を修めることが重要だ。

だから、子供たちの休み期間は、次の学期に良い成績を修めるためのゴールデンタイムになるのだ。父母たちは、子どもの塾のスケジュールを組むことに頭を悩ませる。事前に塾の情報を入手し損ねると、有名塾に通う機会を逃してしまう。

塾が密集することで有名なソウル市江南区=東亜日報提供

私も長男と一緒に昨秋から、「塾ツアー」に突入した。重要科目の英語と国語はある程度、塾での学習になれたので、今年の冬は数学を集中的に攻略することにした。

共稼ぎだろうが、退社時間が遅かろうが大丈夫。塾の相談コーナーは深夜まで対応している。「夜10時まで相談可能です。平日が難しければ、土日でも歓迎します」とも言われた。

塾で相談をしている間、長男は別室でレベルチェックを受けた。担当者は塾が独自に開発した学習プログラムを見せながら、小6児童の高3までのロードマップについて説明してくれた。

「とりあえず、私たちの塾では中学の3年間で、高3までの学習過程をすべてマスターします」

「じゃあ、高校の時は何を勉強するんですか」

「高校に進学すれば、問題を解く訓練に突入します。問題集をちゃんと解ければ、完璧に試験に対応できますから」

韓国人の「パルリパルリ(早く早く)文化」が子どもの教育にまで浸透していることに驚かされる。

でも、問題は長男だけが一生懸命なわけではないということだ。学歴主義が強いだけに、韓国の大学進学率は70%を超える。我も我もと名門大学の入学を目標に据える。私教育の依存度が高まらざるを得ないわけだ。

韓国教育省が発表した2017年度小中高校生の私教育参加率は70・5%に達する。10人中7人以上の子どもが塾に通っている。同年度の小中高の私教育費用の総額は約18兆6千億ウォン(約1兆9千億円)。同年度の韓国国防予算は40兆3千億ウォンだ。韓国の父母は国防予算の半分近くに達するポケットマネーを、子どもの私教育に投入している。

これで終わりではない。

大学に入学しても就職難が待っている。就職のため、また塾の門をたたかなければならない若者も増えている。

スター講師を前面に押し立てた塾の広告=黄宣真撮影

塾相談を終え、複雑な心境で知り合いのオンマ(母親)たちにSOS信号を送った。ビアハウスに集まったオンマたちの心情も私と大して違わなかった。

「スボジャ(数学=スハクの学習を放棄=ボギした子=ジャ)が一番大量に発生するのが中学校1年なんだって。友達が難しい数学の問題を着々と解くのを横目で見て、だんだん数学の勉強をしなくなる。自分の子どもが自信をなくして、勉強に関心を失わないか心配なの」(専業主婦)

「あるときは教師の仕事を辞めて、自分も塾を経営するか深刻に悩んだ。スター講師なら、教師の数倍の収入があるって言うじゃない。だけど、人格教育は学校がやらなきゃいけないという義務感だけで耐えているの」(高校教師)

「国英数という重要科目だと、一科目あたりの受講料は月平均30万ウォン(約3万円)を超える。子ども1人あたり、1カ月100万ウォン(約10万円)程度が必要。自分の老後の備えなんて夢にも出てこない」(フリーランサー)

「教育は百年の大計」という言葉もある。人材養成は遠い未来を見つめながら、計画を立てる必要がある。でも、韓国では大統領選で政権が変われば、教育政策も変わる。百年どころか、5年先を見通すこともおぼつかない。

戸惑う父母たちはデータとノウハウが蓄積された私教育市場に頼るしかない。知り合いたちとの会食を終え、自宅に帰る足取りは重かった。

ソウル市内の高校で行われた漢字検定試験の様子を廊下から見守る父母ら=黄宣真撮影

長男は午前0時近くだというのに、塾の宿題に取り組んでいた。いじらしくなって長男に話しかけた。

「勉強、大変だね」

長男の答えは傑作だった。

「オンマ、今苦労しないと、後でもっと大変なんだってさ」