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モンゴル遊牧民の健康の秘訣? 塩入りミルクティー

荻野恭子の 食と暮らし世界ぐるり旅。
塩入りミルクティー「スーテーツァイ」。「ボルソック」というおもてなし用の揚げパンに浸して食べる=竹内章雄撮影

◉暮らしとともにスーテーツァイがある

乳製品の旬とは関係なく毎日飲んでいるのが、「スーテーツァイ」という塩入りミルクティーでした。訪れた最初の日には、ボルソックというおもてなし用の揚げパンと一緒に用意されていました。モンゴルのほか、中国新疆ウイグル自治区や、中央アジアの広い範囲で食べられているパンなのですが、これがまた美味しいの。素朴なのですが、小麦の美味しさがしっかり伝わってきて、「スーテーツァイ」に浸してパクパク食べました。

「スーテーツァイ」に使うお茶は、以前何度か訪れたことのある、中国の雲南省から続く「茶馬古道」と呼ばれるルート(現在は高速道路も発達してルートは変化している)を経てきたもので、昔からチベットやモンゴルの塩や薬草、毛皮などと交易してきました。四川省を経るルートで安徽省、このほか、茶どころの県からも同様のお茶が入ってきています。雲南省は高級茶として人気の高いプーアール茶、安徽省は世界3台紅茶でもあるキームン紅茶の産地としても知られていますが、モンゴルに運ばれる団茶は、高級茶ではなく、国内で消費するような日常茶が主だそうです。

 それにしても、お茶の運搬ルートが発達した現在でも、普通の茶葉ではなく、黒茶をレンガ状や丸型に固めた団茶が使われているのは、移動の多い遊牧民の理にかなっているからなのでしょう。貴重なお茶とあって薄く薄く淹れますが、3食ごとに飲まれているのは、本当に栄養源として重宝されているからなのでしょう。現地で飲んだものはそれくらい薄いもので、飲むたびに考えさせられました。

団茶。かつて運搬時にロバが背負うことで、その体温で熟成するとも言われた=竹内章雄撮影

◉スーテーツァイの祈り

朝起きて最初の仕事は水汲みです。女の仕事なので、朝1時間も2時間もかけてお母さんが行きます。山脈の雪解け水が川のようになってちょろちょろ流れていて、それを汲むのね。私も手伝いましたが、まあ遠くて大変なのですよ。汲んできたら、鍋に水を注いで団茶を削り、煮出してから、羊や牛や馬、ラクダなど、その時に搾乳した家畜の乳を加えて岩塩を少々。カフェオレボウルのようなものに入れます。するとお母さんがこれを、「天の神様、大地の神様ありがとうございます……」って言いながら、上下に向かって撒くのですよ。「今日も1日元気に過ごせますように」という祈りを込めた儀式のようなものでしょうか。朝はスーテーツァイと餅(パン)、ヨーグルトを食べ、昼や夜は肉や穀物を入れたスープや煮込み、水餃子(バンシー)が入ったものを食べました。

そうそう、水汲みの途中、ラクダが倒れて死んでいたり、骨だけになっていたり、そんな光景をときどき目にしました。わたしが「持って帰ろうかしら」、などと言おうものなら、「荻野さんそれはやめてください!」と返されて。とにかく自然に還るまでなんにもしない、そのまま風化させるというのが彼らの摂理で、そういった考え方に感動しましたね。

(次回は、7月12日更新予定です)

※スーテーツァイ(塩入りミルクティー)の淹れ方

水4カップに団茶大さじ1を入れて煮出し、牛乳1カップと塩少々を加えて沸かす。