私のON
観光客向けのエコツアーを主催し、首都から70キロほど離れた草原地帯で、伝統的な遊牧生活を体験してもらっています。ヤギからカシミヤを取ると、「こんなに一生懸命やっても、これしか取れないの?」と皆さん驚きます。一緒に市場へ売りにいくと、さらに選別されて量が減る。カシミヤの貴重さを身をもって知ることができます。宿泊は伝統の移動式住居「ゲル」で。ストーブの燃料にする牛ふんも、お客さん自ら拾います。
私はウランバートルにも家がありますが、草原地帯で馬と牛、羊、ヤギを200頭ほど飼っています。世話は報酬を支払って遊牧民と一緒にやります。彼らにとっては貴重な現金収入です。
起業5年目には、モンゴル人の共同経営者らに預貯金をすべてだまし取られたこともあります。悔しくて法令や制度について徹底的に勉強したので、今ではモンゴルに進出してくる企業を支援する仕事もやっています。苦労した分、仕事のネタを見つけられて良かったなあと思います。
私のOFF
春から夏にかけておいしいのが、去勢した家畜の睾丸です。キビやアワと一緒に牛乳で炊き、おかゆにして食べます。滋養強壮によい、貴重なたんぱく源なんですよ。
寒さが厳しい11月から3月半ばはツアーも休みですが、怖いのは「ゾド」です。家畜が死んでしまうような大雪や寒波など、冬から春にかけての気象現象のことを言います。2010年には、一夜の吹雪で飼っていた家畜の半分を失いました。
モンゴル人は、契約やルールに縛られません。仕事を放棄したり遅刻したりで頭に来ることも多かったのですが、自分の心に正直で自由が大好きなだけ。最近ではイライラしつつも「かわいいなあ」と思ってしまいます。
(構成 GLOBE記者 田玉恵美)
やまもと・ちか
1991年、東京外国語大学モンゴル語学科(当時)2年で通訳の仕事を始める。モンゴル国立大学への留学や番組制作会社での勤務を経て、2002年から現職。