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マイケル・ブースが花見の季節に考えた、日本酒をヨーロッパで広げる策

マイケル・ブースの世界を食べる
北村玲奈撮影

日本酒のおいしい時期がやってきた。少なくとも私にとって、日本で桜が咲く頃は普段より多く酒を飲む口実ができる季節である。

外国人は桜の季節に日本を訪れるのが大好きだ。特に、人前でくつろぐ日本人にお目にかかれる貴重な機会となるからだ。私がとりわけ好きなのは、上野公園でブルーシートや段ボール箱で人々が器用に作る宴会のしつらえだ。去年段ボールでできた靴箱さえ見かけたことを覚えている。自分たちが陣取った場所の入り口で靴を脱ぎ、その中に片付ける……それは今まで見てきた中で一番日本人らしい光景だった。

日本に行けない年には、自宅で花見の宴会をしてきた。家の近くで桜の木が輪になって咲いていて、春になると友人や近所の人たちを招き、その下でシャンパンを1、2本一緒に飲む。

それが日本酒であるのが理想だが、ヨーロッパの大半では今もなかなか見かけない。なぜか?

中国や香港では日本酒市場が拡大しているし、欧米でもソムリエたちがより深く学ぼうとしているが(例えば、ドンペリニヨンの醸造責任者だったリシャール・ジェフロワは最近、日本酒造りに取り組んでいる)、それ以外、日本酒は依然として事実上知られていない。

普及を阻んでいるのがその味でないことは確かだ。私にとって、いい日本酒とはもっとも魅惑的で楽しいもので、満足でき、心洗われるようなアルコール飲料なのだから。一方で、日本の外で暮らす人のほとんどは、ペットボトル入りの料理酒のような質の低いものしか口にすることがない。ヨーロッパの日本食レストランで、カウンターの向こうで注がれているのを実際に見たことがある。

■残してほしい日本的な特徴

知識という課題もあるだろう。これまで新潟から神戸まで多くの素晴らしい蔵元を訪れ、日本酒の専門家と友達になってきた。だから日本酒がどのように造られ、どんなグレードがあるかはわかる。しかし、それにもかかわらず、自分が何を飲んでいるのか、何を飲みたいのかを正確に判断するのは難しい。

日本酒を純米「吟醸」か純米「大吟醸」かで選ぶのは、ワインにおけるアルコール度数と同じように有効だ。ワインと異なるのは、酒米の種類は味の指標にはそれほどならないということ。酒米の産地もまたしかりである。時にはこうした要素で味を推測することはできても、常にそうとは限らないのである。

どうすれば解決できるのか。手始めにラベルをもっとわかりやすくしてはどうだろう。瓶の中に入っている物の味の特徴を、そしてどの酒がどんな食事と合うのかといったことを理解するのに役立つ。

でも抜本的に新しくブランディングをすることには危険が伴う。外国人向けに日本語が一切書かれていないラベルの日本酒を見たが、何か日本らしさのようなものが失われている。日本酒は今までもこれからも日本の飲み物であり、そこのことは称賛されるべきである。日本酒は白ワインやウォッカなど西洋の飲み物のようなデザインの包装容器に入れられるべきではないのだ。

最近発効したEUと日本の経済連携協定で、日本の消費者はヨーロッパのワインなどを安く買えるようになってきている。日本酒産業は生き残りのため、より一層の努力が必要だろう。一番いい方法は、ヨーロッパの人に向けて日本酒を売るため、その新しい貿易の取り決めを逆方向に活用することだ。賢く、巧妙にブランディングし、知識を得てもらうのがいい。日本酒の本質的に日本的な特徴で妥協することなく、外国人にとって日本酒がより手の届きやすいものになる。

花見という伝統もまた、いいきっかけになるだろう。外国人に日本酒を紹介するなら、彼らを招いて桜やリンゴ、桃の木の下で味わうほどよい方法はない。咲いているのはなんだっていい、とにかくそこでちゃんとした日本酒が飲みたい! お願いします!(訳・菴原みなと)

■「マイケル・ブースの世界を食べる」は、毎月第一日曜に配信します。