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韓国の「1000万映画」 大ヒットの秘訣は笑いか、涙か、恐怖か

現地発 韓国エンタメ事情
「極限職業」のワンシーン(CJエンターテインメント提供)

今年1月に公開された韓国のコメディー映画「極限職業」の観客動員数が、ついに1500万人を超え、歴代2位となった。まだまだ伸びる勢いで、歴代1位の、「バトル・オーシャン 海上決戦」(2014)の1761万人という記録を塗りかえるのかどうか、注目が集まっている。

韓国では映画が公開されると、連日のように観客数が報じられるが、そもそも興行の尺度を観客数で表現する国はあまりない。日本を含め多くの国は興行収入がいくら、という表現をする。これには、韓国では劇場公開以外の、DVD販売などの二次的な収入が少ないという事情があった。最近ではVOD(ビデオ・オン・デマンド)が普及し、劇場での観客数が少なくてもVODでの収入は多い、という事例もあるそうだが、まだまだ観客数が興行の尺度と見られている。

観客動員数1千万人超の韓国映画

近年は毎年のように1000万映画が誕生する韓国だが、最初に1000万人を突破したのは、2003年の「シルミド」だ。北朝鮮の金日成暗殺計画に携わった韓国の工作員部隊「684部隊」の実話をもとにした映画だった。その数ヶ月後には、朝鮮戦争に巻き込まれていった兄弟を描いた「ブラザーフッド」(2004)が1000万人を突破。その後も実話をもとにした、メッセージ性の強い映画が1000万映画の主流だった。1位の「バトル・オーシャン」も、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に活躍した英雄、李舜臣将軍が主人公で、韓国の観客が好むのは理解できる。

個人的には、「これぞ1000万映画」と言いたいのは「弁護人」(2013)。主人公は故・盧武鉉大統領がモデルで、政治家となるずっと前の、人権派弁護士となっていくきっかけとなった事件を描いた。それも実際にあった事件だ。主演したソン・ガンホの法廷での演技は、盧武鉉が乗り移ったかと思うほどの圧巻の演技で、本当に鳥肌が立ったのを覚えている。こういう映画に熱くなれる韓国の観客にも感動した。

「弁護人」のポスター(NEW提供)

そういう意味で、「極限職業」のようなコメディー映画が1000万映画となるのは、「おもしろいけど、おもしろいだけでいいのかな…」と不安にもなる。一方で、今の韓国社会が不景気のせいか重苦しい雰囲気で、笑いたい欲求が高まっているのは分かる。これまでのコメディー映画の歴代1位は「7番房の奇跡」(2013)だった。これは涙を誘う感動のシーンもあり、笑いに特化した「極限職業」とはちょっと違った。2本の共通点は、いずれもリュ・スンリョン主演ということだ。リュ・スンリョンは昨年は「念力」という映画に主演したが、こちらの興行は惨敗だった。前作が1000万映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」(2016)のヨン・サンホ監督の作品だっただけに、世間のがっかり度は高かったが、「極限職業」の大ヒットで再び「興行俳優」に返り咲いた。

「7番房の奇跡」のポスター(NEW提供)

「シルミド」が、実話をもとにした映画のトレンドを作ったように、「新感染」と言えば、韓国でゾンビ映画の流行を生むきっかけを作った。最近も「キングダム」「奇妙な家族」と、立て続けにゾンビ映画が作られている。ゾンビが苦手な私は、「新感染」は見るまいと思っていたが、見た人の「結局、ゾンビよりも人間が怖い」という評が気になって、見た。それはセウォル号の沈没事故を思い出すような内容だった。私自身が事故当時、現場近くの港で取材にあたった経験があるため、余計にそう感じたのかもしれない。国は個人を助けてくれない。システムが麻痺した惨状を目の当たりにしたのを思い出した。

「新感染 ファイナル・エクスプレス」のポスター(NEW提供)

今年4月、セウォル号の事故から5年を迎える。このタイミングで、セウォル号の事故を素材にした映画「誕生日」が公開される予定だ。ソル・ギョング、チョン・ドヨンという名優が主演し、個人的には期待しているが、笑いが求められている今の韓国で、この重くならざるを得ないテーマの映画がどう受け止められるのか、というのは気になるところだ。