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女性を奪って結婚する キルギス「誘拐婚」に世界の厳しい視線

World Now
キルギス東部の村で、女性は「34年前に誘拐婚で結婚した」と語った=中野渉撮影

キルギスでは、誘拐や略奪によって女性が結婚させられる風習「アラ・カチュー」が一部残る。しかし法改正による厳罰化や、SNSを通じて国際的な人権意識が広まったことなどで、都市部ではほとんど聞かれなくなった。

だが、昨年8月、北西部の町で、30歳の男が女子医学生を結婚目的で誘拐し、さらに警察署内で殺害して大きな問題となった。AFP通信によると、同国の裁判所は昨年12月、男に禁錮20年の有罪判決を言い渡した。国連は昨年、同国の24歳未満の女性の13.8%が誘拐による結婚を強いられたと指摘し、またこの事件を受けて根絶を求めた。

これに対し、女性人権団体の代表フロントベクキジ・ジャマル(42)は「誘拐婚は減っている。それに形態は様々で、キルギスの伝統的な側面もある」と語る。

女性人権団体の代表フロントベクキジ・ジャマル氏

■家族が共謀するケースも

男性が結婚費用を支払えなかったり、親が決めた結婚相手を女性が拒んだりした場合、家族らと共謀して形式上の誘拐結婚に持ち込むことがあるという。一部地方では男性が面識のない女性をさらうケースも。ジャマルは「これは野蛮人のやり方」と非難した。

首都ビシケクの東約220キロの村に住む女性(57)は34年前、知り合いの男性に「誘拐」される形で結婚。「でも私の4人の子どもはみな見合い結婚。いまは時代が違う。この村では最近は聞かない」と話した。

ビシケク東部の地方都市で、湖で捕れたマスなどを売る女性

ジャマルによると、見ず知らずの男に強制される形での「誘拐婚」が残るのは、特に北西部の地域だという。

■5人の男、車に女性を押し込んだ

ビシケクに住む日本語通訳の男性(42)は昨年12月、故郷の北西部の都市タラスに帰省中、「生まれて初めて強制的な誘拐婚を目撃した」と話した。

街中にある看護専門学校の正門から2人の女子学生が歩いて出たところ、白い車が急ブレーキをかけて女性の近くに止まり、中から5人の男が出てきて、1人の女性を車に押し込んだ。「女性は『やめてー』と大きな叫び声を出していた。動物を押し込むような感じで車内に入れられていた」と通訳の男性。「様子からして、相手は本当に知らない男だったと思う。私の周りにも様子を見ていた人が何人かいたが、土地柄なのかそんなに驚いていなかった」と振り返った。

キルギスの農村部。馬に乗った男性と犬

■それでも「わが国の伝統」の声

首都ビシケクでは、高学歴で仕事に打ち込む女性も増え、平均初婚年齢が上がる傾向にあるという。ビシケクの運転手のアジズ・ルスベコフ(54)は、独身の32歳の長女が結婚しないか、気が気でない。「知っている相手なら、『誘拐』されて結婚しても構わない。それがキルギスの伝統だから。ただ、私は強制はしないし、最後は2人で決めてほしいが」と話す。会社勤めの長女は法律家で英語の通訳でもあり、仕事に邁進しているという。

キルギスの首都ビシケク。奥は国立歴史博物館

ルスベコフは、自分は「保守的な人間」だといい、「『誘拐婚』はキルギスの文化。女性自ら男性の元に結婚しに行ったら、軽い女だと思われてしまう」と語った。