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私は式の2日前に逃げ出した 「早すぎる結婚」を迫られた少女の決断(スピーチ全文)

People 更新日: 公開日:
シーラさんと一青窈さん(右端)=東京・六本木のバーニーズ ニューヨーク六本木店、宋光祐撮影

10月11日「国際ガールズ・デー」 全世界で6億5千万人。何の数字か知っていますか。18歳未満で結婚した女性の数です。「早すぎる結婚」によって、教育や社会参加の機会が奪われたり、妊娠・出産による健康被害を生んだり、また嫁ぎ先で暴力を受けたりと、さまざまな問題が起きています。国連が定めた10月11日の国際ガールズ・デー、バングラデシュから来日した大学生のシーラさん(19)が、早すぎる結婚を拒否した自らの体験を東京・六本木で開かれたトークイベントで語りました。以下がその全文です。

■シーラさんのスピーチ全文

みなさん、こんにちは。私はシーラです。バングラデシュから来ました。19歳の大学生です。今日はここで私の話を聞いていただけるのをとてもうれしく思います。

私はバングラデシュの首都ダッカのスラム地区で生まれ育ちました。スラムでの生活は楽ではありません。今も私たち家族の生活は、経済的に大変です。

それでもプラン・インターナショナルなど他からの支援を得て、小学校を卒業し、中等教育も受けることができました。

14歳の時に私の人生に大変なことが起こりました。出稼ぎでサウジアラビアに行っていた父親がひどいけがをしたのです。父は帰国し、不自由な体で働けなくなり、それから私たち家族の生活は困窮の一途をたどりました。その時に家族は私に一度も会ったことがない男性と結婚しなさいと言ったのです。

バングラデシュでは、多くの女の子たちが大人になる前に結婚を強いられます。およそ60%の女の子が18歳未満で結婚していますが、この割合は世界で最も多い国の一つに数えられます。

女の子が早すぎる結婚を強いられる主な理由は貧困と慣習です。

私の家族は、父親にのしかかる私の教育費が負担だったので、私を結婚させようとしました。

でも私はプランのおかげで、早すぎる結婚がもたらす様々な弊害について知っていました。もし結婚したら勉強をあきらめなければなりませんでしたが、私は勉強を続けたいと強く願っていました。

それで私は結婚しないと自分で決めて、理解を示してくれたおじに相談しました。とうとうおじの協力を得て、結婚式の2日前に家族に内緒で家から逃げ出しました。自分の決断は正しいと信じ、いつか家族も私の決断を理解してくれるだろうと願っていたのです。

自らの体験を壇上で語るシーラさん=東京・六本木のバーニーズ ニューヨーク六本木店、宋光祐撮影

しかし、私に対する家族の怒りは大きく、コミュニティーに恥をさらしたと責められました。親戚もみんな私に腹を立てていました。数日後、おじの家から家族のもとに戻りましたが、ずっと家族からは無視され続けて、家族の一員とはみなされませんでした。

それからはつらい日々が続きました。中学校の卒業試験に間に合わず留年しました。幸い先生のはからいで、勉強を続けることができましたが、私の家族は私の教育に一切お金を出さないと言ったので、自分でお金を稼がなくてはなりませんでした。

そこで私は学校の合間にプラン・インターナショナルが運営する小さな子どもたちのための教育センターで教えて少し収入を得るようになりました。1日合計4時間教えて、学校にも通い続けました。

高校に入学するころ、ようやく家族が私の努力を認めてくれるようになって和解できました。

いま私はプランのボランティアとして早すぎる結婚をなくすための活動や学校を中途退学した子どもたちを学校と連携しながら学校に戻す活動などを行っています。

教育を受けた女の子がどれだけ力があるか示したいと思います。いまだに「これは女の子らしい人生ではない」という人がいますが、こうした言葉には耳を傾けず、子どもたちや私と同世代の人たちに、自立しようと励ましています。

正しい活動にはいつでも参加できます。どんなこともジェンダー平等や女の子の権利促進を邪魔してはなりません。そして私たちがまずすべきことはジェンダー平等や女の子の権利を信じることです。

こうして今日、私の考えをみなさんにお伝えし、私の言葉がみなさんに届いたらとてもうれしいです。どうもありがとうございました。 

■自立を励ます同世代のロールモデルに

国連児童基金(ユニセフ)によると、バングラデシュでは約60%の女の子が18歳未満で結婚しており、世界で最も「早すぎる結婚」が多い国の一つになっている。貧困と慣習が主な原因だ。

シーラさんがその活動に早くから参加し、今回彼女を日本に招いた国際NGOプラン・インターナショナルは、世界約50カ国で、教育や健康・衛生など子どもが安全に生きていくために必要な8つの分野で改善を目指して活動している。

トークイベントには、歌手の一青窈さんや福岡市の映画配給会社「ユナイテッドピープル」の関根健次さん、プラン・インターナショナル理事の大崎麻子さんが参加した。

ガールズ・デーに寄せる思いを語る一青窈さん=東京・六本木のバーニーズ ニューヨーク六本木店、宋光祐撮影

一青さんは、シーラさんの体験を聞いた後、自らの思いとともに会場にいる人たちにも一歩踏み出すように語りかけた。「自分はこう生きていいんだ、って言えるような世の中になったらいいなと思います。そのためにシーラさんはここに立っていて、いろんな人に自分の意志を伝えています。ここにいるあなたも、自分の意見をたくさんの人に恐れずに言ってほしいなと思います」

トークイベントの参加者全員で記念撮影。左は「ユナイテッドピープル」の関根健次さん、右はプラン・インターナショナルの大崎麻子さん=東京・六本木のバーニーズ ニューヨーク六本木店、宋光祐撮影