サウジ、「上からの改革」で女性の運転解禁
「自分の国で運転できる日が来るなんて、信じられない」。サウジアラビアで女性の運転が解禁された6月24日朝、東部・アルコバールに住む医師ザイナブ・イスマイール(39)はマイカーのハンドルを握り、勤務先の病院に向かった。通い慣れた45分の道だが、後部座席ではなく運転席に座るのは初めてだ。
子どもの頃からの夢をかなえて医師になり、大学時代を過ごしたパキスタンで運転免許を取ったが、帰国後は運転できなくなった。通勤のために雇ったインド人運転手の給料は物価とともに上がり、月1700リヤル(約5万円)に。「でも払わなければ仕事ができなかった」。運転を忘れないように隣国バーレーンに出かけて練習を重ね、1カ月の休暇明けの出勤日を解禁に合わせた。
世界で唯一女性の運転を禁じてきたサウジ。「束縛」の象徴として人権活動家らが長年抗議してきた。だが、解禁はあくまでも皇太子ムハンマドの「上からの改革」。石油頼みの経済から脱却するための施策の一つだが、女性の権利拡大が真の目的というわけでもなさそうだ。それを示すように、運転を求めてきた活動家らが解禁直前に一斉逮捕された。それでもザイナブは改革を歓迎している。「生活しやすくなるだけでなく、女性たちは自分にもっと自信が持てるようになる」
「女性の解放」は、ほかの国でも進む。イランでは、13年に改革派の大統領ロハニが就任して以降、頭を覆うヒジャブから前髪を出す女性が目立つようになった。以前なら逮捕されることもあったが、テヘランの警察は昨年12月、「女性がヒジャブを着崩していても逮捕しない」と発表。前髪を出すだけでなく、後ろで結わえた髪にヒジャブを軽くかけるようなスタイルで歩く女性たちも出てきた。
規制が緩まる一方で、公の場でヒジャブを脱いだ姿をツイッターなどで投稿した女性の逮捕も相次ぐなど、せめぎ合いも続いている。
「セクハラは犯罪」と初めて認定したエジプト
女性へのセクシュアルハラスメントが「当たり前」だったエジプトでは2014年の刑法改正でセクハラが初めて犯罪と認定された。
きっかけは「アラブの春」のころにデモに参加する女性を狙ったセクハラが頻発し、女性たちが被害にあった場所を示す地図をつくるなど声を上げ始めたことだ。ただ、セクハラ問題に長年取り組んできた元国会議員で政治学者のモナ・マクラム・オベイドは「政府が真剣に取り組むようになったのには、対外的イメージの改善につながるという一面もある」と指摘する。