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「ガラスの天井」をぶち破れ アメリカの州知事選

ニューヨークタイムズ 世界の話題
ミシガン州知事選の民主党予備選挙で勝利し、デトロイトで支持者の声援にこたえるグレチャン・ホイットマー=2018年8月8日、AP

11月の米中間選挙・州知事選に向け、九つの州で女性が予備選を勝ち抜いた。うち以下の4州で初の女性知事が誕生する可能性が出てきた。

ジャネット・ミルズ(メーン州)

パウレット・ジョーダン(アイダホ州)

スティシー・アブラムス(ジョージア州)

クリスティ・ノーム(サウスダコタ州)

他の5州は――

キム・レイノルズ(アイオワ州、現職)

ケイト・ブラウン(オレゴン州、現職)

ミシェル・ルーハン・グリシャム(ニューメキシコ州)

ルーペ・バルデス(テキサス州)

ケイ・アイビー(アラバマ州、現職)

女性が続々と登場している今回2018年の中間選挙は、米国の政治世界で最も分厚い「ガラスの天井」の一つといわれる州知事の壁を、全国的に打ち破ることになるかもしれない。

とりわけ中西部は大きな挑戦の場になる。ここは女性知事の誕生が最後となった地域であり、ミシガン州でジェニファー・グランホルム(民主党)11年に退任して以降、女性の知事は出ていない。

そのミシガン州で、この87日に行われた州知事レースの予備選。元州上院院内総務のグレチャン・ホイットマーが民主党代表候補に選ばれた。その1週間後にはウィスコンシン、ミネソタ両州で民主党予備選が行われ、女性4人が知事代表候補に立った。両州はこれまで一度も女性が知事に就いたことがない。

米国ではこれまで28州で女性の知事が就任している。このうち現職でいるのは6州だ。1980年までに女性知事が就任したのは5州しかなく、当時に比べれば飛躍的な進歩といえる。だが、それでも全米50州の半分近くは女性知事が出ていない。

いったい、なぜそれほど少ないのか?

有権者は、そもそも女性の特質からして立法府には向いている、とみているようだ。すなわち女性は良き協力者であり、人の話をよく聴いてくれる、というわけだ。

だが、ボスを選ぶとなると異なる。

「たとえ有権者があなた(女性)を立派な人物だと評価しても、州政を担う(知事)など無理とみなす。仮に代表できると考えても、今度は人物的に良くないのではないか、と有権者は不安になる」。そう語るのは2011年にマサチューセッツ州の知事代理になったジェーン・M・スウィフト(訳注=当時のポール・チェルチ知事が駐カナダ大使に任命されたため、副知事から昇格した)。彼女は同州で初めてトップの座についた女性だった。しかし、02年の州知事選挙では共和党指導部がミット・ロムニーを知事候補に選んだため、彼女は出られなかった。

スウィフトはあるレジ係と会った時に「テレビで見るよりずっとすてきな方ですね」と言われたことを思い出す。

「私は思った。どうして彼女(レジ係)はテレビで私を見た時に、すてきではないと思ったのかって」とスウィフト。「答えはこうだ。彼女は私を権力の座にいる者として見ていた。権力の座にいる者は、すなわちすてきではない。これまでずっとその地位にいた男性を見ていれば、好感というのは必要条件ではない」

1970年代中ごろまでは、女性の知事といえば夫からその職務を引き継ぐか、夫の代理として選ばれるかだった。自力で知事に選ばれた女性は74年、コネティカット州のエラ・T・グラッソが初めてとされる。

米国の歴史上、女性知事はこれまで39人を数える。

そのうち25人は自力で勝ち取った。11人は知事代理もしくは辞任した知事の代わりに知事職を務めた。3人は知事だった夫の代理として務めた。

知事選に出馬したことのある女性たちは、党の指導部は伝統的な男性社会の中で物事を進める傾向があり、それが同時に女性の水準をより高くしているのかもしれない、と言う。

90年の連邦議会上院選でのこと、ニュージャージー州の共和党候補だったクリスティーン・トッド・ウィットマンは、人気のある民主党現職のビル・ブラッドリーに挑み、わずか3ポイント差で惜敗した。同州共和党指導部は、その時点で彼女を次の知事選候補の切り札と考えたとしても不思議ではなかった。だが、党指導部は彼女を選ばなかった。

ミネソタ州セントポールで開かれた共和党全国大会に登場したクリスティーン・トッド・ウィットマン=2008年9月3日、AP

彼女は結局、93年の知事選に出馬し、知事の座を射止めた。「もし私が男だったら、知事になるのに(有力な候補者を相手に)三つどもえの予備選までやる必要はなかったと思う」と彼女はインタビューで語った。「上院選であれほど善戦したのだから、私は知事選にそのまま行ける切符を手に入れているはずだった」と。

大きな問題は資金だ。

ウィットマンは「党の力は非常に強い。彼らはあなた(候補者)が自分でどれだけ資金集めができるか、その能力に期待している」と言った。しかし「女性はまだ平等な賃金にはほど遠いし、党の期待に応えるほど寄付できる収入を得ていない」と現状を語った。

ウィスコンシン州知事選の民主党予備選に出馬している前州下院議員、ケルダ・ロイズの話だと、通常、女性の寄付額は全体の約4分の1だが、彼女の選挙資金の3分の2は女性からだった。また、この20187月に行われた彼女の選挙キャンペーン向け世論調査では、民主党予備選の有権者の71%が同州初の女性知事が誕生したら「興奮する」、または「非常に興奮する」と答えたという。

それでも、ロイズは女性が知事選で勝利できるのは疑わしい、という声を耳にする。

彼女は「よく聞くわ。『おお、あなたは何と素晴らしい。でも本当に勝てる?

いっそうのこと誰かそこら辺の年長の白人を指名した方が良くなくて?

だって、その方が有権者には無難だから』って」と打ち明けた。

「答えははっきりしている。もちろん、ノー」と彼女は言った。「というのは、共和党員は選挙を盛り上げて誰にでも投票するけれど、民主党の有権者には、やる気を起こさせるような候補者が必要だから。民主党の人びとが候補者に興奮すれば、私たちは選挙に勝てる」

11月の知事選は36州で行われるが、立候補を届け出た女性は62人。これまで最多だった1994年の34人を大きく上回る。201886日現在、これまで21州で予備選が行われ、9人の女性候補が勝ち抜いた。勝率22%。その後予定されている予備選では19人の女性候補が闘っている。(抄訳)

(Denise Lu and Kate Zernike)©2018 The New York Times

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