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リアーナが語る新しいランジェリーとボディポジティブの世界

ニューヨークタイムズ 世界の話題 更新日: 公開日:
ニューヨークで開かれた自分のブランド「Savage × Fenty」のランジェリーショーに登場したリアーナ=2018年9月12日、Nina Westervelt/©2018 The New York Times

気鋭のファッションデザイナーとしても活躍するようになったスター歌手リアーナ。自分のブランドが目指す全体像は何か。2017年、ファッション誌VOGUEに問われ、こう答えている。

「次にどこに向かおうとしているのか、私には分かっている。でも、全体像なんて話せないし、そんなことのどこが面白いの」

では、「次」にどう向かおうとしているのだろうか。その戦略が、浮かび上がってきた。

リアーナのランジェリーブランド「Savage × Fenty(サヴェージ×フェンティ)(訳注=185月に立ち上げ。Fentyはリアーナの姓)19年春に向けた作品ショーが189月、ニューヨークのブルックリン海軍工廠(こうしょう)で開かれた。そこで示されたのは、方向感覚を失うほどファッションの世界を押し広げようとする構想だった。

それを本人も楽しもうとしている。「いい靴だって、いいのは明日まで。それ以上は飽きてしまう。とても」。ショー後の舞台裏で、リアーナはこう例えている。

だから、向こう見ずなほどのリアーナ流の絶え間ない挑戦がある。

どこにでもあるようなワイングラスを、アクセサリーに変える。ブルックリンの私立名門校プラット・インスティテュートを出たばかりのデザイナーのドレスを、ミュージックビデオで着てみせる。

17年に始めたコスメブランド「Fenty Beauty(フェンティビューティー)」では、これまでにない多様性を追求し、微妙に異なる数十もの色調を創り出している。

そして、今回はランジェリーについても、多様性を強調してみせた。そこには、ライバルでもある米ブランド「Victoria's Secret(ヴィクトリアズ・シークレット)」への対抗心ものぞく。

ショーには、ジジとベラのハディッド姉妹らのスーパーモデルが登場した。しかし、はるかに多かったのは、さまざまな体形と人種のモデルだった。中には、おなかの大きな妊婦も2人いた。

「Savage × Fenty」ランジェリーショーの舞台裏に立つプラスサイズのモデル=2018年9月12日、Rebecca Smeyne/©2018 The New York Times

メイクアップアーティストでプラスサイズのモデルでもあるライサ・トーマス(26)は、キャスティングの担当者からSNSでダイレクトメッセージを受け取り、出場することになった。リアーナがファッション界の多様化を図っていることに感謝したいと語り、「プラスサイズや白人、黒人。数多くのタイプの人がファッションショーに出ているのを見ることは、若い人にとってもとてもよいことだと思う」と指摘する。

その見る方も、多様化しているようだった。ファッションショーといえば、セレブや常連が集まり、欧州で開かれる次のショーを見るため、空港に向かう途中で立ち寄る人も多い。しかし、これとは違う層が多く詰めかけ、会場はあふれんばかりの人で埋まった。

2018年9月12日にニューヨークで開かれた「Savage × Fenty」のランジェリーショーの会場は満員になった=Nina Westervelt/©2018 The New York Times。有名人の姿も見られたが、他のファッションショーのように目につくことはなかった

「方向性」という点でも、これまでのファッションショーとは違っていた。従来の決まりごとは、しばしば無視された。モデルは、アナウンスもなく、ほのかな明かりの中で登場した。始まったことにすぐに気づかず、あわてて撮影用のスマホを取り出す姿が数多く見られた。

モデルが歩くランウェイも変わっていた。組み立てられた装置といった方がよいだろうか。さらに、池もあれば、熱帯植物におおわれたドーム(視界を妨げもした)もあった。座席はなく、歩き回らなければ、見るべきものの半分は見落としただろう。会場の雰囲気は、見つめることが中心のショーというよりは、ダンスなどのパフォーマンスアートの催しに近かった。モデルは、スローモーションのように動き、四つん這いになり、前衛舞踏のような激しい動作も見せた。

舞台裏での取材に、リアーナはコンセプトを明かした――オーガニックなものと未来的なものとの交錯。「簡単に言えば、そうなってほしいと願うもの。それは、体形、人種、文化を問わずに、あらゆる形で女性が祝福されること。自分の体がどう見えるかで女性が悩んだり、人目を気にしたりすることほど残念なことはない」

「Savage × Fenty」のランジェリーショーでパフォーマンスを見せるモデルたち=2018年9月12日、Nina Westervelt/©2018 The New York Times

リアーナは一足先に、スポーツ用品大手プーマとのコラボを成功させている。それでも、こちらのブランド服のコレクションを18年はまだ開いていない。ニューヨーク・ファッションウィークで見せた今回のランジェリーショー(訳注=同ウィーク終盤の18912日開催)も、自らのチャリティー基金の資金集めをするダイヤモンド・ボールの開催と同じ週に組んでおり、日程を優先させた副産物にも見える。そんなこともあり、これから先をどうしようとしているのかに、やはり注目が集まる。

ランジェリーへの進出について改めて尋ねられると、リアーナは「自分の手でやってみたかった」と答えた。「この世界をあるべき方向に持っていき、きちんと敬意を払うに値するようにしたかった。だから、時間をかけて打ち込んだ」

ただし、この業界が自分を腕のよいデザイナーとして評価していることは、「ショックだ」と語る。「自分のレベルは、よく分かっている。まったくの新人だし、学ばねばならないことも多いし、発展途上にあると言った方がよい。ただ、何かを創り出すのが好きだし、そうする過程が好きなのは確かだ」

一方で、ブランド力を構築するためのプロモーションには、それほど大きな熱意は示さなかった。とくに、ソーシャルメディアの活用については冷めていた。インスタグラムを「流行の墓場」と評し、多用してきたスナップチャットも最近は使う機会が減っていると話す。

「ブランド力をつける助けになることは分かっている。イベントや新しい作品について、ファンや世界中の人たちとやりとりをするパイプであることも理解している。ただ、自分がみんなと本当に共有したいと思っていることと、みんなが知りたがっていることとの格闘もある」

そして、こう言って笑った。「ソーシャルメディアは、大事にはする。でも、一から十まで、すべてを託す気なんてない」(抄訳)

(Steven Kurutz)©2018 The New York Times

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