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働く女性の足を引っ張る日本、なぜ?

ニューヨークタイムズ・マガジンから
Peter Oumanski/The New York Times
Peter Oumanski/The New York Times

8月初旬、東京医科大学の男性幹部2人が、集まった報道陣の前で白髪の頭を下げ謝罪した。官僚の息子を入試で不正合格させたとされる問題に関する内部調査の結果、不正と差別の伝統が明らかになった。調査委員会によると、同大は10年以上にわたり入試の得点を意図的に改変し、女子の合格者数を制限するとともに、得点の低い男子受験者を合格させていたという。

開国から1世紀半が過ぎ、現在の日本は世界で最も裕福で民主的な先進国の一つである。だが、ある重要な点においては、後進的な状況が根強く残っている。日本の女性が、ビジネスや政治の世界において端に追いやられてきたということだ。

日本の安倍晋三首相は、何百万人という既婚女性を仕事に復帰しやすくさせる計画を採用した。

だが、実現したとしても、必ずしも社会を変えるとは限らない。安倍首相の政策によって、日本における女性の就業率は米国よりも高くなり、男性就業者数が着実に減少しているのを相殺する役目を果たしている。しかし、大多数の仕事は非常勤で、比較的低賃金のものだ。法政大学社会学部の堅田香緒里准教授は述べる。「経済成長だけを目標としている。そのため、女性をフルに『活用』し人的資源として消費しようとしている」

昨年、世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数」で、日本は144カ国中114位に順位を下げた。この順位には、ビジネスや政治の世界で女性リーダーが少ないままとなっている現状が反映されている。日本政府が発表した2017年の報告書によれば、女性管理職の割合はわずか13%(米国は44%)。ロイターが日本で実施した最近の調査では、回答した企業の4分の3が、女性役員がいないとしている。15年に成立した「女性活躍推進法」によって、大企業は女性の雇用・昇進について数値目標を設定し、その結果を公表することが義務付けられているが、罰則規定はない。

政治の世界はさらに、男性の牙城だ。衆議院における女性議員の割合はわずか10%で、列国議会同盟(IPU)によると、国会(二院制の場合は下院)における女性議員比率では193カ国中161位となっている。拘束力のない新法によって、政党は「可能な限り」、より多くの女性候補者を擁立し、男女平等の実現に努めることが求められている。だが、この法律にも実効性はなく、安倍首相も貢献しているとは言い難い。9月に党首として再選され、その後、新たな内閣を発足させたが、女性閣僚は19人中1人だけだった。

熊本市議会の数少ない女性議員の一人である緒方夕佳氏は、昨年、本会議中に授乳できるよう市議会に要望したが認められず、託児所の設置要望も認められなかった。そのため、昨年11月の本会議において、7カ月の息子を連れて議場に入り、息子を膝の上にのせて着席した。男性市議らはこの行為に立腹し、緒方氏と息子を退席させた。

日本は働く女性を増やすことには成功したが、その裏で、女性が子育てをしながらキャリアアップすることをほぼ不可能にする差別的な文化が存在しており、根絶するどころか立ち向かうことすらできないでいる。安倍政権では、多くの対策を講じている。保育所の増設、残業時間の上限を月100時間とする法律の制定、育休制度を男女ともに拡大することなどだ。だが、根深い姿勢や方針は、ゆっくりとしか変わらない。

9月には、熊本市議会で、緒方氏が再び男性議員とのトラブルに直面した。緒方氏が本会議で発言中、別の議員から「何か口にくわえているのか」と質問され、「喉を痛めているため、のど飴をなめている」と回答。男性議員らは会議を中断させ、飴をなめることが規則違反でないか、会議規則を急いで確認することに。緒方氏は謝罪を拒否したとして退席させられた。緒方氏は、彼女が昨年反抗的な態度を示したことへの報復だと考えている。日本経済の未来に向けた、より大きな闘いに、のど飴も特別出演できそうだ。

(ブルック・ラーマー、抄訳 河上留美)©2018 The New York Times
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Brook Larmer
ブルック・ラーマーは、ニューヨークタイムズ・マガジンの寄稿記者。