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フェイスブックの秘密主義、猜疑心という火に油を注ぐ

ニューヨークタイムズ・マガジンから
illustration:Jon Han/The New York Times
illustration:Jon Han/The New York Times

米議会の上院情報特別委員会は昨年末、2件の報告書を発表した。2016年の大統領選にロシアが介入しようとしたとされる件についてだ。ロシアは本当にSNSへの投稿によって有権者の意向に影響を及ぼすことができたのか?

釣りや荒らしによって重要な州の投票率を本当に下げたのか?

だが報告書でも、こうした疑問点を解決する内容はほとんど見られなかった。

報告書はフェイスブックに関して、ロシアの情報工作組織とされるインターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)による選挙関連の取り組みについて新たな内部データを分析し、事例を挙げている。IRAが発信したコンテンツに対し「いいね!」やコメント、シェア、クリックなど7600万件を超える関与があったことはわかっているが、そのうち何件が実在の人物によるものだったのか、現時点では把握できていない。報告書の一つには次のようにあった。「フェイスブックから、不正な『いいね!』をする多重アカウントに関するデータが提供されなかったため、コンテンツへの関与が実在の人物によるもので、配信もされたと仮定する」

現時点では正確なことがわかっていないため、最悪の場合を想定するしかなかったのだ。別のケースも見てみる価値はある。フランスの「黄色いベスト」運動だ。米ニュースサイトのバズフィードに掲載された記事が示唆するように、「この厄介な運動はフェイスブックから生まれたと言っても過言ではない」のか?

あるいは、市民による抗議というフランスの長い伝統を受け継ぐデモ参加者が単にフェイスブックを利用しているだけなのか?

前者の説は、世間の目から隠されてきたかのように感じられる。理論的には、フェイスブックがこの疑問を明らかにできるはずだ。利用者は完全な監視状態の中で生活しており、利用者自身や周囲にあるものすべてがほぼ全面的に追跡対象となっている。同社こそが、他のどの外部調査会社よりも16年のIRAに関する疑問に答えられる。

ユーチューブがなぜ、利用者がフランスの観光地に関する動画を見た後に、欧州のイスラム教について右派が投稿した論争動画を見たいと思うと考えたのか、本当のところを知らされることはない。プラットフォームという王国で起こることはすべてシステムによって実現され、システムが正しく機能するためには機密事項として扱わなくてはならないとされている。この世界は、企業秘密によって支配されているのだ。利用者が猜疑心を持ったとしても不思議ではない。

テクノロジーの覇権を握っているプラットフォームの原罪は、自らが機能するために、その仕組みを世界に知らせないということだ。グーグルはどのようにして、ウェブの情報を調べて検索結果を表示しているのか?

それこそが企業秘密であり、グーグルを検索エンジンとして支配的な地位に押し上げ、ビジネスモデルを維持させているものである。各社の言い分としては、透明性が高すぎると製品を分析されて競合他社製品の開発・改善に利用されたり悪用されたりする恐れがあるとする。

だがプラットフォームが確固とした地位を得て、利用者にとって退会が難しくなってくると、企業秘密は利用者の鬱憤となって各社にはね返ってくる。把握している情報のずれは、プラットフォームが現実世界の出来事に関わった時に拡大する。

フェイスブックは何年にもわたり、人々をつなぎ、彼らの意思決定に影響を与えることに長けていると主張してきた。「それなら、ドナルド・トランプに投票するようにさせるのも簡単だったのでは?」と言いたくなる。この疑問から同社はうまく言い逃れてきた。

「このコンテンツは、利用者の行動には全く影響しなかったようだ」などと。

だが徹底的な解明のためには、ありのままに開示させることが必要であり、おそらく法的な強制力が必要だ。それは、利用者に公開されていないシステムや指標に、企業秘密とする価値はないかもしれないと認めるのにも等しいだろう。各社は、自らの全知が自社ビジネスに恩恵をもたらす存在であった時にこれを神話化した。神話は今も続いているが、もはや創造主の支配下にはない。むしろ逆襲が、始まろうとしている。

(ジョン・ハーマン、抄訳 河上留美)©2019 The New York Times
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John Heerman
ジョン・ハーマンは、ニューヨーク・タイムズのテクノロジー記者。