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中国マネーに沸くタジキスタン 中央アジアの最貧国に迫る「債務のわな」のリスク

World Now
かつてのシルクロードの砦は新婚カップルの人気スポットになっていた=タジキスタン・ドゥシャンベ郊外のヒサール要塞、村山祐介撮影

■中国は「助けに来てくれた真の友」

雪に覆われた山々が遠くに連なる首都ドゥシャンベ郊外のバルゾフ渓谷。片側1車線の整備された道路を、資材を積んだオレンジ色の中国製トラックがひっきりなしに行き来していた。

首都と北部を結ぶ主要な幹線だが、冬も通行可能になったのは数年前のこと。中国が約2.8億ドル(約310億円)を融資して改修したためだ。タクシー運転手のベフルース・ジヤコフ(27)は中国を「タジクの真の友」と呼んだ。「助けにきて、山を掘って、首都から外に出るチャンネルをつくってくれましたから」

中国が整備した幹線道路で首都と北部が通年通行できるようになった=タジキスタン・ドゥシャンベ郊外のバルゾフ渓谷、村山祐介撮影

南北の送電線もつながるなど、険しい自然とインフラの老朽化で分断されてきた国土は、中国の資金で急速に連結が進む。政治アナリストのアブドゥガニ・ママダジモフ(54)は「国際機関はこんな内陸国に事業を持ってきてくれませんでした。道路や鉄道は我々と国際社会を結ぶもの。だから一帯一路に飛びついたのです」と話す。

政治アナリストのアブドゥガニ・ママダジモフ=タジキスタン・ドゥシャンベ、村山祐介撮影

■借金のかたに「金鉱山」

その結果、2006年にはほぼゼロだった中国からの借金は16年に11.6億ドルに達し、二国間債務の9割を占めるまでになった。一帯一路に関係する68カ国の債務を分析した米シンクタンク・世界開発センターはタジクを「返済困難に陥るリスクが高い」8カ国の一つに挙げた。別のリスク国スリランカはすでに返済に窮し、中国が17年、借金のかたのように99年間の港運営権を取得した。「債務のわな」と批判される中国式だ。

中国企業が建設したコージェネ施設=タジキスタン・ドゥシャンベ、村山祐介撮影

タジクでも昨年、電力と熱を同時に生むコージェネ施設を造った中国企業が金鉱山の権益を取得したと報じられた。建設費を回収するまで採掘できる条件とみられている。

■表に出ない「依存への懸念」

地元記者によると、それでも国内で中国依存を不安視する声は上がっていない。ここ数年で野党やメディアへの締め付けが強まり、「都合の悪い情報や批判は表に出にくくなった」。町には大統領の肖像写真が増え、政府庁舎と国会議事堂は中国の2.2億ドル(約240億円)の援助で建て替えられることになった。

街中にもラフモン大統領の肖像写真があふれる=タジキスタン・ドゥシャンベ、村山祐介

だが、だれもが中国との蜜月を快く思っているわけではない。タジクは2011年に決着した国境交渉で、中国に領土の一部を割譲した。俳優業の男性(45)はそれに触れ、「中国はあの手この手を使う」と不信感をみせる。援助についても首を振った。「昔から『いずれ手に入れる国は助けておく』というでしょう」