How the Khashoggi killing ruinously defined Trump
11月23日付 ワシントン・ポスト紙
2012年、当時大統領だったオバマは、シリアのアサド政権に化学兵器の使用はred line(越えてはならない一線)だと警告した。しかし翌年、アサドが化学兵器を使っても、オバマは軍事攻撃しなかった。これでオバマはcredibility(信憑性、信用)を失った。結果としてアメリカのリーダーシップを強大な軍事力でバックアップしないことが明らかになり、その後、ロシアのウクライナ侵入や中国の南シナ海などへの海洋進出が起きた、とこの記事を書いた論説委員が指摘する。この論説委員によると、こうした時の大統領の決断は、core instinct(基本的な本能)を明確にするそうだ。トランプ大統領がサウジアラビアのムハンマド皇太子に対して、ジャーナリストのジャマル・カショギ氏殺害をめぐる責任を追及しなかったのは、そのようなjuncture(場面)の一つで、結果として、トランプの本質がruinously(恐ろしいほどに)明らかになったとみる。
この事件からトランプに関する基本的な事実がいくつか確認できるという。まず、彼にとってはアメリカの伝統的な価値観を守ることよりも、自分の狭くidiosyncratic(特異な)関心の方がtake precedence over(優先される)という。世界中のdespots(専制君主)が、トランプにお世辞を言い、トランプファミリーのビジネスを利用し、アメリカ製品の購入を約束さえすれば、これまでのアメリカならばcensure(問責決議)やsanction(制裁措置)を突きつけてきたであろう深刻な行動をとっても、見逃してもらえると判断するだろう、と論説委員は言う。その結果、反体制派やジャーナリスト、人権問題活動家にとってはopen season(狩猟期、攻撃が解禁になる)に違いないと危惧する。もう一つは、トランプの目には他国で起きる誘拐や殺人は、大事に映らないということだ。亡命中の反体制活動家などが今後、欧米の大都市で消えたり、死亡したりすることが増えても驚くべきではないという。
この事件をめぐり、この論説委員がさらに酷いlegacy(後に残したもの、遺産)に挙げていることは、アメリカの外交にはもはや真実が重要ではなくなった点だ。米中央情報局(CIA)は、ムハンマド皇太子がカショギ殺害の命令を出したと判断したのに、トランプはMaybe he did and maybe he didn’t(彼はやったかもしれないし、やっていないかもしれないぞ)と言い、真相を知ることに無関心を示した。なお、トランプはサウジアラビアがアメリカの兵器を大量に購入すると言い張ったが、実は約束したものをほとんど購入していなかった。石油の値段についても、イランに関しても、トランプがサウジに関して言うことと、サウジの実際の行動は正反対だったという。これでは従来の外交方針がひっくり返ってしまう。事実が関係ないのなら、アメリカは容易にbe fleeced(騙されてしまう)。
トランプは連日のように、何か新しい悪い先例を作り出しているが、残念ながらこの件もその一例である。