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仮面ライダーとスーパー戦隊、長寿の秘密 東映専務「先輩社員に怒られたら成功」

People 更新日: 公開日:
インタビューに応じる東映専務の鈴木武幸さん
インタビューに応じる東映専務の鈴木武幸さん=鈴木暁子撮影

およそ40年にわたってテレビ放送が続く「仮面ライダー」と「スーパー戦隊シリーズ」。いまや世界の子どもにも知られるヒーローだ。番組をつくり続ける裏には、どんな工夫や苦労があるのか、次なる挑戦は?東映専務の鈴木武幸さん(66)に聞いた。 (聞き手 鈴木暁子)

――2011年で仮面ライダーは番組開始から40年、スーパー戦隊は35作目。いまも人気が続いていますね。

放送を続けてきたということが何より大きいと思います。番組が始まったころは、日本が戦後の復興期をへて、ちょうどキャラクタービジネスの大きなうねりが生まれた時期でした。でも、いまも日本で放映が続いている特撮のテレビシリーズはこの2作しかありません。なぜ他の会社がつくらないかというと、実は簡単につくれないから。スキルを持っていない限りはつくれません。

――振り返ると、仮面ライダーには低迷期もありました。

2000年に「仮面ライダークウガ」で復活するまで、仮面ライダーシリーズは10年間まるまるテレビ放映を休みました。改革をするとともに、親と子が一緒に楽しめる二世代キャラクターになるまで、じっと待ちました。クウガ以降のいわゆる「平成ライダー」では、先輩社員に怒られるぐらい、思い切り内容を変えました。怒られたとき、あ、成功したなと思ったんです。

いまは毎年、内容が変わっています。よく、「ヒットしているんだから2年続ければいいじゃない」といわれますが、成功したからといって続編をやっていたらダメ。前作を否定し、常に改革していかないと。そうしてきたからこそお客さんも見続けてくれるのだと思うし、今度は何をしてくるかなと期待していただける。

勢ぞろいした歴代の仮面ライダーたち
勢ぞろいした歴代の仮面ライダーたち=2006年1月、東京都内のホテル

――ヒーロー像も変遷してきましたね。

最近じゃイケメンが登場するのは普通になりましたけれど、初期の仮面ライダーは、ちょっとおじさんっぽいけど、武道で体は鍛えていますといったヒーローが多かった。最近のライダーは特に鍛えていないですからね。佐藤健さんが演じた「仮面ライダー電王」の主人公は草食系です。どこの学校にもいるようないじめられっ子がヒーローになっちゃう、そこが面白い。そういうヒントを、その時代の中から見つけるのです。

お金をもらうわけでもないのに、ヒーローが命がけで困っている人を助ける、「無償の行為」という基本は残しています。あとは、シリーズといいながら違う番組じゃないかというぐらい内容はさまざま。いまのお子さんは3カ月で飽きてしまうから、「海賊戦隊ゴーカイジャー」(テレビ朝日系、日曜朝7時半放送)もそうですが、スーパー戦隊シリーズでは、3カ月以上たったところで新しいロボットや戦士を出すといった工夫もしています。日本はキャラクターの宝庫ですから、その中で勝ち残っていくのはとても難しいことです。

――新番組「仮面ライダーフォーゼ」(テレビ朝日系、日曜朝8時放送)の登場人物は、かなり年が若いですね。

お母さん方の間での主演俳優の評判って大事なんです。お子さんと一緒に見ているから、「今年のライダーいいわね」「スーパー戦隊シリーズいいわね」って、お母さん方で話し合うんですよね。仮面ライダーやスーパー戦隊シリーズを見て、かっこいいなといっている分には、ご主人も文句はいわない。ヒーローはお父さんより若くなきゃいけないんです。

仮面ライダーフォーゼのフィギュア
仮面ライダーフォーゼのフィギュア

――面白い番組づくりのヒントをどう見つけるのですか。若い社員を使うとか、市場調査をするとか?

市場調査は信用できないので、まったくしません。子どもって意外と周りに気を遣うので、うそが多いんです。「おもしろかったー」とかね。次に何がくるか、というヒントをかぎつけるのはプロデューサーの仕事です。

例えば僕が「超電子バイオマン」(1984)のプロデューサーをやったとき。その数年前から、バイオ、バイオって言葉が聞こえてきたんですよ。バイオマンと名付けて放送を始めたら、カネボウ化粧品が「バイオ口紅」を発売し、バイオブームがやってきた。ほんの半歩先を行けばいいんです。あまり行きすぎちゃいけないですね。

「恐竜戦隊ジュウレンジャー」(1992)を手がけたときは、どうしても恐竜がやりたかった。恐竜は世界中にあるし、大きくて子どもがあこがれる魅力的な素材。なかなか使わせてもらえなかったんですが、米国で「ジュラシック・パーク」という小説が出て、映画化するらしいという情報を入手し、よし先にやっちゃえ!と出した。

ジュウレンジャーは大ヒットして、いまや世界80カ国で放送している「パワーレンジャー」の第一作目になりました。米国でこの番組を見ていない子どもはいないでしょう。ドバイやインド、ベネルクス三国(オランダ、ベルギー、ルクセンブルク)でも人気があるんですよ。

――なぜ子どもの気持ちがわかるのですか。

ずっと子どもたちを見ているんです。私はディズニーランドにこれまで80回ぐらい行きました。なぜ行くかというと、番組づくりって全部大人でやっているじゃないですか。子どもはまったく企画に触れない。すると、子どものことをいっさい忘れて、だんだん大人っぽくなってしまうんですね。仲間うちで受けることばかりやって。

ディズニーランドに1日いると、あっ、子どもってこんなことで喜んでいるんだなと、意外と見えてくるんです。おみやげ屋さんに行っても、ああ子どもはこういうことで喜ぶんだ、忘れていたなあと思い出すんですよ。最近も行っていますよ、新しいアトラクションが始まったりすると。

――仮面ライダーの米国版に再挑戦する予定はありませんか。

まだはっきりと時期はいえませんが、いま動いています。日本でやっている仮面ライダーをどうにか米国にもっていけないかとやっています。米国・ハリウッドからでないと、世界には広がらない。他の国ではダメです。

ただ、競合が多い「1人ヒーロー」は、なかなか特徴を出しにくい。それと、日本の撮影のスピードを米国では実現しにくい、というネックがあります。米国で現地版の「仮面ライダー・ドラゴンナイト」を放送したとき、やはり仕上げが遅くて。日本のスタッフがCGを担当するといったら、米国側にいやだと断られました。「英語ができないスタッフと仕事したくない」と。そこが日本のスタッフの意外な弱点なのです。ドラゴンナイトのCG制作は、半分以上インドでつくられました。

――東映ヒーローは、2世代、3世代のヒーローへと進化していますね。

子どものころお父さんお母さんに、「そんなの見てないで、勉強しなさい」と怒られた人たちが、親の世代になりました。番組を見て育った人は、子どもには「見るな」とはいわないでしょう。そこまでキャラクターを日本で育ててきた歴史があるからこそ、いまも続いているのだと思います。

最近公開した仮面ライダーの映画には時代劇でおなじみの松平健さんまで出てきます。いまや、おばあさんからお子さんまで幅広く楽しんでいただけるものへと成長しています。