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仮面ライダーフォーゼ、伝統の涙ラインやめた理由 担当者「泣かせたくなかった」

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仮面ライダーフォーゼのフィギュア
仮面ライダーフォーゼのフィギュア

インタビューに答える田嶋秀樹さん
インタビューに答える田嶋秀樹さん

――これまでどのような作品を担当してこられたのですか。

石森プロに入る前、もともと僕は、映像の視覚効果やCG(コンピューターグラフィックス)が専門でした。

ゲームの幕間のCGムービーの演出や実作業、フジテレビさんの「SMAPXSMAP」や「めちゃ2イケてるっ!」のコーナータイトルなんかをやっていたんです。

特撮ヒーロー番組の仕事をしたのは、実は仮面ライダーじゃなくてウルトラマン。円谷プロさんの「ウルトラマンティガ」(1996年)が最初でした。

特撮作品では、ほかに東映さんの「燃えろ!!ロボコン」(99年)などをやってはいますが、石森作品に本格的にかかわったのは実はアニメ作品で、2001年にスタートした「サイボーグ009」、俗にいう「平成009」の企画です。

そのころ所属していた会社でプランニングと制作プロデューサーをつとめることになったのがきっかけでした。009の企画を立ち上げようという話があった97年は、ティガの後番組の「ウルトラマンダイナ」の仕事のまっただ中。そんな時に石ノ森章太郎先生の訃報を聞いて、「これはぜったいに実現しないといけない」と思ったことを覚えています。

故石ノ森章太郎さん
故石ノ森章太郎さん=1990年1月、東京都港区虎ノ門2丁目、花井尊撮影

――仮面ライダーのデザインにかかわったのはいつからですか。

石森プロに入って1年後に担当した「仮面ライダーキバ」(08年)が最初です。キャラクターの開発以外にも、ドラマパートで使う役者さん用の武器や、敵役の衣装の紋章、2号ライダー「仮面ライダーイクサ」のバイク「イクサリオン」のデザインなどを担当させていただきました。

「仮面ライダーW(ダブル)」(09年)では企画チームに入れていただいて、劇中のデザイン、資料担当として、キャラクターデザイン以外にも、風都タワーやガイアメモリ、衣装デザインなど、ドラマに大きく関わるデザインを数多くやらせていただきました。石森プロに入って専任のライダー担当になってから数えると、現在の「仮面ライダーフォーゼ」が3作目になります。

仮面ライダーのデザインは、東映、バンダイ、石森プロの担当10人前後が集まり、ああでもないこうでもないと協議して決めていきます。よく、「このライダーのデザインをした人はだれですか?」と聞かれます。

もちろん、フィニッシュデザインをひいていくすごく腕の立つデザイナーさん達はいるのですが、チームのみんなで知恵を絞りだして作っているので、「みんなでデザインしました!」という表現が一番しっくりきますね。

――「仮面ライダーW」のときは、どんなキャラクターデザインを目指したのですか。

「平成ライダー」シリーズは「仮面ライダーディケイド」(09年)で一区切りつきましたので、Wは、次なる10年の、昭和ライダーシリーズで言えば「仮面ライダー1号」、平成ライダーシリーズ第一期でいえば「仮面ライダークウガ」の立ち位置にくるキャラクターなんですよね。

新しいシリーズのスタートラインに立つキャラクターなので、「だれが見ても仮面ライダーだよね」といえる新しい仮面ライダーの基本をめざしたデザインになっています。

製作発表会見でポーズをとる仮面ライダーたち。前列真ん中がディケイド
製作発表会見でポーズをとる仮面ライダーたち。前列真ん中がディケイド=2009年5月、東京都、高山顕治撮影

仮面ライダーといえば大きな目とアンテナ、額にあるシグナル、そしてクラッシャーと呼ばれる牙(きば)のような口と風になびくマフラーが印象的ですよね。

「仮面ライダークウガ」以降、マフラーは1回も使われたことがなかったのですが、Wは「風のライダー」というコンセプトでもあるし、新しい時代の1号なのだからマフラーはなんとしてでもつけたいという僕の主張に、当時の東映の塚田英明プロデューサーも賛同してくれました。

そもそも、石ノ森先生が仮面ライダーに身につけさせたマフラーは、オートバイに乗って走るときに視覚的に風を感じさせるためのパーツだったんです。マフラーをなびかせて颯爽とバイクに乗って走るライダーが見たい!やっぱりライダーはこうでなくちゃ!という想いが、Wのデザインにはふんだんに取り入れられていると思います。

というわけで、Wのときは非常にスタンダードな「ライダー・オブ・ライダー」という形に仕上げていったのですが、同じことをまたやってもしょうがない。今回のフォーゼは逆にだれも見たことがないインパクト抜群のライダーをつくろうと。デザインチームはWのときとほぼ同じメンツでやっています。

――そうして生まれたフォーゼですが、ファンからはどんな反応がありましたか。

仮面ライダー、といわれてファンのみなさんが想像するのは、先ほど言ったようなライダーとしての記号がしっかり入った、いわゆるバッタをモチーフにした「仮面ライダー1号」だと思うんですね。

あるいは、いままで見てきた数々のライダーの中に、自分のマイフェイバリットライダーがあって、みなさん、「仮面ライダーはこういうものだ」というイメージをお持ちだと思うんです。

ところが今回は、トンガリ頭で、真っ白。まさか新ライダーがコーンヘッドなんてだれも想像しませんよね。「えっ!これはないでしょ?」ってどん引きする人、「見慣れたら絶対かっこいいよ!」という人、いままで以上の賛否両論さまざまなご意見をいただきました。「こんなの仮面ライダーじゃないよ」っていう完全否定の意見も多々ありましたが、それだけフォーゼのインパクトは大きなものだったということでしょうね。

僕たちはキャラクターのデザインを行う上で、初出の驚きっていうのはとても大事なものと考えています。だってフォーゼの顔を一度見たら、だれも忘れないでしょう。だれかと似ている人よりも、大きな個性をもっている人は一度見たら忘れないし、後々まで記憶に残りますよね。

それと同じで、お客さんとの初対面のインパクトは絶対にないとダメだよね、と、新しいキャラクターを作る過程では、いつも重要視しています。

もう一つは、だれでも描けるようなデザインであるということ。これも石ノ森先生がキャラクターを生む際に大事にしていたことです。子どもでも描くことができて、見たら絶対忘れない愛されるキャラクターを作るということ。その遺志を僕たちは受け継ぎ、とても大切にしています。

――原作者・石ノ森章太郎のスピリットですね。

石ノ森章太郎という人は、非常に新しいもの好きでした。入ったばかりの原稿料をすべてはたいて当時出たばかりの最新型のステレオを買ってきたり、新しい映画やサイエンス記事を見たら感化されて積極的に作品に取り入れたり。同じことを絶対にやらない、常に刺激や驚きを求めていた人だったんですね。

僕は生前に石ノ森先生にはお会いできませんでした。平成009のプランニングをしている時に、体調がよくなられたタイミングでご挨拶に、と思っていた最中に旅立たれてしまったので。

ついに一度もお会いすることはできませんでしたが、上にいる石ノ森先生に、「また同じことやっちゃって」なんて、怒られたくないですよね(笑)。「もっと面白いことやれよ、奇抜なことやれよ」といわれているような気がするんです。

その先生の遺志を継ぐとしたら、常に新しいチャレンジをして、みなさんが驚き、愛してくれるものを生み出していくか。そこをみんなで知恵を絞ってがんばっていかないとな、と思っています。

――フォーゼのデザインはどうやって生まれたのですか。

最初に塚田プロデューサーから「宇宙」「学園」というキーワードが出され、そこから発想してみんなで練っていきました。

最終的なデザインが決まるまでに、アイデアラフはみんなですごい数を描きますね。フォーゼは最終的に塚田プロデューサーのアイデアで、ロケット型の顔になりましたが、そこに行きつくまでに、本当にいろいろな案がありました。いかにも仮面ライダー、みたいなスタンダードなものももちろんありましたし、さすがにこれは行き過ぎだろう、みたいなびっくりアイデアまで。

平成ライダーも13作目になりますから、毎回最初のデザインワークでは生みの苦しみというか、みんなが脳みそをフル回転させて一番踏ん張る時期ですね。

――キャラクターやセットのデザインにあたって、宇宙のイメージをどのようにふくらませましたか。

今年2月末から3月の初め、塚田プロデューサー、バンダイチームと米航空宇宙局(NASA)のケネディ宇宙センター(フロリダ州)に取材に行ってきました。

ワシントンDCにある国立スミソニアン航空宇宙博物館も訪ねて、1週間弱の旅で資料写真を数千枚も撮影し、本物の宇宙の入口に立ってその空気を吸って、資料を集めるとともに宇宙ものを作るぞ!というモチベーションをMAXまで高めてきました。やっぱり本物に触れてきた収穫は大きくて、デザインワークにもいろいろと反映できました。

例えば、僕が担当した仮面ライダー部の部室である月面基地~ラビットハッチや部員たちが着る宇宙服、宇宙ステーションや月着陸船なんかのデザインはNASAに行く前後でだいぶ意識が変わりました。

行く前にひいたデザインは、いかにも超科学的なSF調だったのですが、現代劇である仮面ライダーフォーゼという作品世界の中で説得力のあるデザインをひくにあたって、「これはないんじゃないか」という思いが生まれて、それまでのデザインはすべて捨ててしまいました。現実味がある、あまり飛びすぎないリアルな方向。

でも、特撮ヒーロー作品ですから、そこは現実を意識しすぎておとなしくなりすぎてはだめで、ありそうでなさそうな感じにデザインの方向性を向けていきました。

フォーゼのキャラクターやモジュール(手足につくツールや武器)の一つ一つをとっても、フロリダへ取材旅行に行く前と後では、ロケットのノズル一つ、パネル一枚描くにしても、本物へのこだわりが生まれましたね。

――子どもに人気の変身ベルトも、あるものをヒントに作られているそうですね。

変身ベルト「フォーゼドライバー」のデザインコンセプトは宇宙船のコックピットです。スイッチがたくさんついていて、パチンパチンと宇宙飛行士がかっこよく操作するじゃないですか。精密なパーツで構成された宇宙服は別名「小さな宇宙船」とも呼ばれるそうですから、フォーゼという宇宙服モチーフのライダーの変身ベルトはやっぱりコックピットが一番似合うし、おもちゃにしてもパチパチとスイッチを切り替えて楽しく遊んでいただけるんじゃないかと、あのかたちになりました。

――フォーゼのデザインでは、仮面ライダーに共通していたトレードマークの一つがなくなったと聞きました。

ライダーが泣いているようにみえる「涙ライン」といわれる線です。これまでのライダーのマスクには、ほぼすべてにこのラインがありました。仮面ライダーは同族(怪人)と戦わなければならない運命を背負ったヒーローですから、その悲しみをデザインに投影して、仮面に涙が描かれているんですね。

いままで伝統的につけてきた記号なので、つけるか否か最後まで迷ったんですが、フォーゼではあえてこれをなくしました。

企画自体が飛びっきり明るい学園宇宙もの!というものですし、ちょうど僕の誕生日の3月11日にあんなに大きな震災があって、みんな笑顔をなくしている時期に正義の味方が泣いてちゃダメだろうと。

こんな時代だからこそ、仮面ライダーは元気や笑顔を届けなきゃいけない。そんな理由があって、伝統の涙ラインは今回なくしました。フォーゼに関しては泣かせたくなかったんです。

あとは、親しみがわくように、ちょっとかわいくしたかったというのもありますね。仮面ライダーの重要な記号でもあるアンテナも、フォーゼの場合ちょっと眉毛っぽくも見えますよね。

基本、未来の宇宙服、ロケットモチーフというカッコいいデザインコンセプトの中に、愛らしさといういままでのライダーデザインではあまり考えなかったポイントも乗せています。変身する主人公が底抜けに明るい如月弦太朗というキャラクターということもあって、フォーゼは親しみやすいデザインにしたかったというのもあります。

「仮面ライダーフォーゼ」の主人公、如月弦太朗を演じる福士蒼汰さん
「仮面ライダーフォーゼ」の主人公、如月弦太朗を演じる福士蒼汰さん=2011年10月、東映東京撮影所、鈴木暁子撮影

――仮面ライダーって、一言で言うとどんなヒーローですか。

「運命とたたかう人」だと思います。初代のライダーは人間だったのに怪人に改造されてしまって、それでもその呪われた運命を乗り越えて、正義のスピリットをもって悪と闘った。石森ヒーローは運命を背負い、戦うヒーローです。009もキカイダーもそうですし、平成ライダーシリーズも根底にはこのテーマが流れています。

フォーゼに関してはとにかく明るい作品にしようと立ち上げた番組ですから、そういう部分はいまは見えにくいかもしれませんね。仮面ライダーって、とかく運命を背負っちゃう人なのでトーンが暗くなりがちなんです。今回はそんなことはみじんも感じさせないような明るいスタートをきりつつも、ストーリーが進むにしたがって、「ああ、確かに仮面ライダーだよね」とみなさんが納得のできる深いドラマになっていくと思います。ご期待ください。