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復活!世界一のレストラン ノーマ2.0が見せる新境地

マイケル・ブースの世界を食べる

以前この場所を車で通りかかったときは、うち捨てられたコンクリートの穴蔵でしかなかった。壁は落書きで覆われ、床には使用済みドラッグの注射針が転がっていた。しかし、今日、私が入っていくのはガラスの天井から光が降り注ぐ、木とコンクリートが融合した空間だ。建築家ビャルケ・インゲルスが手がけたこの建物の中には、上品なデンマーク家具がしつらえてあり、壁には魚介の干物が飾られている。

ここは「ノーマ(noma)」2.0。ここ10年、世界で最も影響力のあるレストランの一つが生まれ変わった。2015年にマンダリン オリエンタル 東京に期間限定で出店したことを覚えている人もいるだろう。その後、シドニーやメキシコをめぐったレストランの本店は、コペンハーゲンの港にあるミシュラン二つ星なのだ。

16年4月号に書いたこのコラムの初回が「ニューノルディック料理の終焉」についてだったことを覚えている人もいるかもしれない。ノーマを愛してはいたものの、その影響力に陰りを感じていた。私の話をどこかで耳にしたのだろう、172月には閉店してしまった。最近40歳を迎えたヘッド・シェフのレネ・レゼピは自らが限界に達したと感じ、名声も何もかもなげうって新しい店を始めたのだ。コペンハーゲンの片隅、忘れられた土地の一角で始めた「都市型農園」。目指すのは「レストラン界で最もクリエーティブな空間」を築くことだという。

オープンした週のランチに席が確保できたのは幸運だった。ほぼ自力で地域の料理を再定義したレストランで食べるランチは、ただのランチではない。

あちこちに見える日本の影響

スタートは巻き貝の出汁。貝は日本でも普段使いの食材だが、ここではフェロー諸島産のものだ。出汁は貝殻に注がれ、藻のピクルスが添えられる。この世のものとは思えないほど豊かな風味は、これまで口にした何とも違う。そこから、日本の影響があちこちに見えるようになる。生の魚介、火入れした昆布のソースで食べるイカ、カボチャの種で覆った殻ごと出されるフェロー産のウニ、手づかみで食べるタラのお頭の炭火焼き(アジアとは違って、ヨーロッパでは魚の頭は大抵捨てる)。ナマコの卵巣と皮は乾燥され、デニッシュクリームとともに誰かの内臓みたいにピクピク動くナマコとやってくる。デザートは「プランクトンケーキ」。プランクトンが食材になるとはゆめにも思わなかった。さすがにこれには戸惑った。おいしいかさえわからないが、トライできたのはよかった。

この料理は、季節に対するノーマの新しいアプローチを反映している。レゼピは一年を、魚介に力を入れる冬(スカンディナビア半島では10月から3月)、野菜をベースにする夏、そして地方のジビエを披露する秋に分けている。日本ほど細やかな手法ではないが、明らかに着想を得ている。

あのノーマが帰ってきたのだろうか? 世界一に4度も輝いたその高みに、再び到達したのか? レゼピはかつてのようにクリエーティブで、駆り立てられるように没頭している。自身とチームは、北欧の自然の恵みを開拓し始めたばかりだと信じている。料理は美しく、大胆で驚きに満ちている。そう、これなんです。

ドリンクなしで375ドルと安くはない。しかしノーマには従業員が90人いて、「アリ飼育園」から麹の発酵室、いけす、屋上農園など11棟も建物があり、どうしたって安くはならない。新しいテレビが買えるくらいの値段の食事がお得だと思えるなら、ぜひこちらに。(訳・菴原みなと)