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頭上から落ちてくる巨大な「宇宙ごみ」 激化する開発競争が招く野放しの危機

ニューヨークタイムズ・マガジンから 更新日: 公開日:
地球の周りにある宇宙ごみ(デブリ)の想像図。年々、混雑が増している=欧州宇宙機関(ESA)提供

2024年12月の午後、空を切り裂くようにして、スクールバスより幅の広い燃えさかる金属塊が猛スピードで落下してきた。

それが農地に激突したときの音は雷鳴よりもすさまじく、ケニアの首都ナイロビから南へ3時間ほどのところにあるムクク村の住民全員を仰天させた。

「みんな、この世の終わりだと思いました」と、近隣に住むジョン・ムクヌウは語った。

村人たちが現場へ駆けつけると、人の背丈より高く、馬より重い巨大なリング状の物体が地面に突き刺さっていた。彼らはその物体が赤熱した状態から鈍い灰色へ冷えていくところを見守った。

首都から当局者の一団が押し寄せてくるまで、村人たちはときおり自撮りをしながらその物体を見張っていた。

このリングは、かつてロケットのパーツをつないでいたものだった。本来なら、地球に帰還する際に燃え尽きているはずのものだ。

「これは単発の出来事です」と、ケニア宇宙局は2025年の初頭に述べた。

だが、じつはそうではなかった。

地球には今、かつてないほど多くの宇宙ごみ(スペースデブリ)が降り注いでいる。これは、各国政府や米実業家イーロン・マスク率いる宇宙企業「スペースX」などの民間企業が宇宙の覇権を争う、激しい競争が生んだ結果の一つなのだ。

2025年、米宇宙軍は、地球の大気圏に突入する物体について820件近い警報を発令した。10年前には、政府が発令した警報は110件だった。

「大気圏への再突入は連日起こっています」と、ポーランド宇宙局で宇宙状況把握(SSA)業務を統括するマリウシュ・スロニナは語った。同氏によると、重量1トン以上の巨大な物体が週に1回程度の割合で飛来するという。

宇宙ごみの多くは大気圏で燃え尽きるか太平洋に落下することになるが、そうならなかった場合は、制御不能かつ予測不可能な状態で地上へ落下する。

人類が地球軌道上に打ち上げる物体が増えるほど、地球上で回避しなければならない宇宙ごみも増えることになる。2025年に打ち上げられたロケットは300基を超え、これは10年前の4倍近くに相当する。つまり、地球上に落下してくる衛星の破片や使用済み部品は今後さらに増えることが予想される。

寿命を終えた人工衛星も、この宇宙時代を代表する宇宙ごみの一つだ。現在、軌道上を周回している約1万6千基のうち、かなりの数が最終的に地球へ落下することになる。

2024年には、国際宇宙ステーション(ISS)から廃棄された機器の一部が、米フロリダ州の民家に落下した。2025年の初めには、ポーランドのポズナニにあるにぎやかなショッピングモールの近辺に、スペースX社製ロケットの一部が落下した。ポーランド宇宙局によると、同市の空港付近でも別の破片が発見されている。

その何カ月かあと(注釈:2025年10月)、運用を終えた中国の衛星がスペイン領カナリア諸島のテネリフェ島上空へ猛スピードで落下してきた。重量3トンの同衛星は、空中で分解・燃焼する前に、この地域一帯に衝撃波を発生させた。

同10月には、オーストラリアの西オーストラリア州にある砂漠の道路で燃えている破片を、鉱山労働者が発見した。今年7月には「スペースボール(宇宙からの落下球)」と呼ばれる大きな物体(注釈:計6個)がオーストラリアの海岸に漂着した。

2021年3月、国際宇宙ステーション(ISS)から放出されるバッテリーを積んだ荷物台=NASA提供

ロケットの打ち上げや軌道上の宇宙ごみを規制する現在のルールは継ぎはぎ細工を思わせる断片的な寄せ集めで、宇宙開発のスピードに追いついていない。

1万基以上の衛星を軌道上に展開しているイーロン・マスクのスペースX社は、さらに100万基の打ち上げを申請している。米実業家ジェフ・ベゾスのブルーオリジン社も同様の構想を打ち出していて、中国の「メガコンステレーション(巨大衛星群)」構想も数十万基規模の衛星運用を見込んでいる。

現時点では、落下してくる宇宙ごみにぶつかられる確率より、雷に打たれる確率のほうが高い。記録に残る唯一の事例は、1990年代にオクラホマ州の女性が破片の直撃を受けた(注釈:軽量のグラスファイバー片が肩をかすめた)ケースだが、彼女はほぼ無傷で済んだ。

だが、その確率は変わりつつある。米連邦航空局(FAA)の調査では、2035年までに、スペースX社の衛星由来の宇宙ごみだけでも2年に1人の割合で死傷者を出す可能性があると結論づけられた。

同調査は、衛星が大気圏で燃え尽きればリスクは低減すると指摘する。スペースX社は一時期、地球に戻ってくる同社の衛星はすべて燃え尽きると主張していた。

ところが2024年、カナダの農場で同社のものと見られる金属片が発見された。それ以前はFAAの報告書に異議を唱えていた同社だが、この件についての質問には回答していない。同社は現在、一部の衛星について、質量の約5%が燃え尽きずに残る可能性があるとしている。

米シラキュース大学教授でNASA(米航空宇宙局)元長官のショーン・オキーフは、次のように述べている。「人間には想像力が欠けている部分がある。自分たちの身にそれが起こるとは想像できないのです」

「主要な大都市圏に落下すれば状況は一変するでしょう」と、彼は付け加えた。

オキーフら専門家は政府や企業に対し、完全に燃え尽きる素材の使用を義務づけるべきだと主張している。

しかし現在、そのような規制は存在しない。米国では、連邦通信委員会(FCC)が企業に対し、落下する衛星による人的被害のリスクについて報告するよう義務づけているが、同機関のおもな役割は無線周波数の規制にある。

衛星の打ち上げを監督するFAAは、軌道上の宇宙ごみの廃棄を規制するルールを提案したが、宇宙産業界からの反発を受けて、今年1月にその案を撤回した。

宇宙ごみに起因する人的・物的被害に対する責任については国連の条約が適用されるが、これらは冷戦時代の遺物であり、適用範囲も限定的だ。国連は2007年に宇宙ごみに関するガイドラインを策定したが、当時は衛星の数が現在よりはるかに少なかった。さらに、このガイドラインには法的拘束力がない。

自由落下する物体については、最高レベルのロケット科学者であっても、それがどこに落下するか、あるいはそれが大気圏に突入する際に完全に燃え尽きるかどうかを、正確に予測することはできない。

フロリダ州の住宅に衝突し、NASAが回収した金属片(右)=NASA提供

非営利研究機関エアロスペース・コーポレーションによると、大気圏再突入の予測に1分の誤差が生じるだけで、着陸地点は300マイル(約480キロメートル)近くずれてしまうという。

例えば今年1月には、ヨーロッパ上空の大気圏に突入する火球が観測された。それは、中国最大級の民間商業ロケット企業ランドスペース社が前月に打ち上げたロケット「朱雀3号」の上段部分で、制御不能に陥っていた。

世界各国の宇宙機関は、この物体を4日間にわたり監視した。重量が約11トンと非常に重かったため、完全に燃え尽きることなく落下すると予想されていたためだ。

各国政府は、この物体が人口密集地に落下する可能性もあるとして警戒を強めた。英国当局は携帯電話事業者に対し、緊急警報システムの試験を行うよう指示した。

ポーランド宇宙局のスロニナは、「最後の数時間と最後の周回軌道はヨーロッパ上空にあり、きわめて危険な状況だった」と語った。

結局、この宇宙ごみはインド洋か太平洋のどこかに落下した。

宇宙ごみが人や住宅に衝突した場合、誰が賠償責任を負うのか?

その宇宙ごみが自国の企業や機関のものである場合、賠償責任の所在については国内の法制度に基づいて解決される。

それが自国のものではない場合は、国連の条約に基づいて、発生した費用を回収することになる。

例えば「宇宙損害責任条約」は、他国が宇宙に飛ばした物体が別国の市民や財産に損害を与えた場合、被害国が加害国に補償を求める権利を認めている。

また、「宇宙救助返還協定」と呼ばれる別の条約では、宇宙空間にあった物体を打ち上げ国に返還する際に生じた費用を被害国政府が請求できることになっている。

しかし、国連宇宙部(UNOOSA)で法律・政策問題を担当するロサンナ・ダイムホフマンによると、これらの条約が策定されたのは宇宙開発の初期段階であり、当時は宇宙飛行士が捕虜になることや技術が盗用されることへの懸念が優先されていた。

商業化が進み複雑化した現在の宇宙環境においても、いまだにこれらの条項が適用されていると、彼女は付け加えた。

「条約が起草された当時の意図や適用方法と、現在の解釈や使われ方は異なっている」と彼女は述べている。

したがって、その残骸がどこから来たものかを特定することが最初のステップになる。つまり、一般市民は自国政府の意のままになるしかないということだ。

ケニアでは、例の「リング状の物体」が、米国の放送衛星を打ち上げたフランスのロケットの一部であることを当局が確認するまでに数カ月を要した。フランスの宇宙機関によると、この破片は落下するまで16年以上にわたり地球軌道を周回していたという。

フランス外務省によると、ケニア政府はフランスに正式な賠償請求を行っていない。また、物体が落下した地域選出の上院議員ダニエル・マアンゾによれば、政府はこの情報を村の住民に伝えていない。住民らは落下時の衝撃で近隣の住宅にひびが入ったと訴えている。

「政府は、まずその物体の所有者を特定しなければならないと言っている。その人物こそが過失の原因だからです」とマアンゾは語った。「しかし、それは行われなかった。補償はなかったのです」

(敬称略、抄訳)

(Selam Gebrekidan)©2026 The New York Times

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