1. HOME
  2. 人生の光になる「たった一人」と出会うため Youth Prideがつなぐ思いとは

人生の光になる「たった一人」と出会うため Youth Prideがつなぐ思いとは

学生ライターが見た世界 更新日: 公開日:
Youth Prideを率いる中島幸乃さん©Tokyo Pride 2026
Youth Prideを率いる中島幸乃さん©Tokyo Pride 2026

SNSを開けば、見知らぬ誰かとすぐにつながれる時代。それでも、あえて「ただ一人との出会い」を大切にする場がある。NPO法人東京レインボープライドのユースチームが開くイベント「Youth Pride」だ。2回目となる今年は、6月13、14日に東京・原宿のWITH HARAJUKU HALLで開かれた。チームを率いるのは、中島幸乃さん(23)。学生ライターが話を聞いた。なぜ今、若い世代にこうした出会いの場が必要なのでしょうか―。

ざっくり要点

1. Youth Prideは、「つながり」を最大のテーマに据えたイベント。2回目の今年は、自分を肯定するには同世代の理解者が必要だという気づきから、交流の場を充実させました。

2. SNSで人とは簡単につながれます。でも、関係性が薄くなりがちでは? 「たった一人の存在が人生を支える光になる」というメッセージを発信し、安心して自分を出せる場所を目指しているそうです。

3. LGBTQ+について語るといっても、困難な状況や深刻な課題ばかりではありません。楽しさを大切にしたコミュニティーづくりも必要だと、中島さんは考えています。

4. 参加者として訪れた若者が、やがて運営やボランティア側に回るなど、ポジティブな循環が生まれはじめました。

「ありのまま」のために必要なこと

「ありのままを愛そう」をコンセプトに掲げた昨年のYouth Prideは、セクシュアル・マイノリティーの先輩たちによる座談会や専門家のトークなど、ステージ企画が中心のイベントだった。

しかし、参加した若者たちから最も大きな反響があったのは、最後に行われた「大交流会」だった。ゲームブースやトークスペースで行き交う同世代たちの熱気あふれる会話。その姿を見て、中島さんはあることに気づいたという。

「ありのままの自分を愛したり、ありのままに生きたりするためには、同世代に自分を理解してくれる誰かがいることが必要なのではないか」

ステージを見るだけでなく、もっと深くつながれる場所が求められている―。そう確信した中島さんは、2回目となる今年、「つながり」を最大のテーマに据え、交流の場をさらに充実させることにした。

会場にはYouth Prideのコンセプト「One Friend, One Love, One Future」が掲げられていた=2026年6月、森菜々美撮影
会場にはYouth Prideのコンセプト「One Friend, One Love, One Future」が掲げられていた=2026年6月、森菜々美撮影

今年のYouth Prideが発信するメッセージは、「たった一人の存在が、あなたの人生を支える光になる」。コンセプトには「One Friend, One Love, One Future」という言葉が掲げられた。

SNSで誰とでもつながれる時代に、なぜ「一人」なのか。中島さんは、自身の10代の経験を振り返る。住む地域や所属するコミュニティーによっては、自分の味方がいない、誰にも相談できないと感じてしまうことがある。だからこそ、たった一人でも理解者がいることが重要だと感じている。

今の学生世代の多くは、コロナ禍による人との関わり方の変化を経験してきた。SNSなどでつながりをつくりやすくなった一方、その関係は薄くなりがちだと、中島さんは感じている。

「セクシュアリティーの話やカミングアウトは、自分の自尊心の中心に関わるものです。とてもセンシティブで、開示するには勇気がいる」

安心して自分を開示できる場所や機会を用意することは、つながりやすくなった時代だからこそ必要だと、中島さんは考えている。

その思いを体現するように、今回のYouth Prideでは、全15回もの交流会が行われた。「高校生×大学生」「大学生×社会人」といった属性ごとの交流ルームから、「政治×未来議論部屋」「もやもやを話そう」といったトークテーマを設けたものまであり、参加者が関心に応じて出会い方を選べる場が用意されていた。

各日の最後には大交流会も開かれ、会場全体でつながりを広げる時間となった。

会場で配られたYouth Prideのタイムテーブル。2日間にわたり、ステージ企画や交流ルーム、大交流会などが行われた。交流ルームでは、属性別やテーマ別に参加者同士が言葉を交わせる企画が並んだ=2026年6月、森菜々美撮影
会場で配られたYouth Prideのタイムテーブル。2日間にわたり、ステージ企画や交流ルーム、大交流会などが行われた。交流ルームでは、属性別やテーマ別に参加者同士が言葉を交わせる企画が並んだ=2026年6月、森菜々美撮影

悩みを持ってこなくていい場所に

LGBTQ+について語られるとき、困難や課題が前面に出ることは少なくない。そうした中で、Youth Prideが楽しさや出会いを大切にしているのには理由がある。

特定の困難や悩みがある人を支援する団体は、ユース向けにもすでに数多くある。中島さん自身も10代の頃、関東にあるユース向けの団体を、自ら調べて訪ね歩いた経験を持つ。だが、その中で感じたことがあったという。

「悩みを言わなければいけないのかな、何か深刻なことを話さなければいけないのかな、と。深刻な課題を抱える人にそうした場が必要なのは間違いありません。でも、当時はポジティブにつながれて、ワクワクしてもう一度来たいと思える場所がほしかった」

だから、自分でそれをつくりたいと思った。中島さんが代表を務める「YouthProject」は、ユース世代のために、ユース自身がつくるコミュニティーとして運営されている。最初からリアルの場に参加するのはハードルが高いと感じる人もいるため、まずはSNSの発信を見るところから接点を持てるようにしている。

月1回開かれる交流会はオンラインでの開催もあれば、BBQやハロウィンパーティー、クイズ大会といった対面イベントもある。 自然と笑顔や会話が生まれることも、参加者が「また来たい」と感じる大切な要素になっているという。

活動の場は東京だけにとどまらない。大阪・九州・名古屋・札幌など各地のプライドイベント(性的マイノリティーの尊厳を掲げるパレードやイベント)を巡る活動も続けている。Youth Prideは、そうした日頃の交流を、より多くのユースに開く場でもある。

「移り変わりの速い流行を理解して、本気で楽しんで、つながる。それが日々の困難を乗り越えるエネルギーになる。そうした場をつくるのが、私たちの使命だと思っています」

「Youthが創る、ポジティブなLGBTQ+コミュニティ」。会場ではYouth Project によるイベントやSNS発信なども紹介されていた=2026年6月、森菜々美撮影
「Youthが創る、ポジティブなLGBTQ+コミュニティ」。会場ではYouthProject によるイベントやSNS発信なども紹介されていた=2026年6月、森菜々美撮影

受け取った人が、手渡す側になる

 そのコミュニティーの中で、関わり方を変えていくユースもいる。最初は緊張しながら参加していた人が、今ではSNSチームやイベント企画チームでリーダーを務めるようになった。今回のYouth Prideの運営にボランティアとして関わったユースの中には、この日のために福岡や名古屋から駆けつけた人もいた。

「自分が受け取ったものを、今度は次の人に手渡していく。より多くの人を巻き込んでいく循環ができています」

年齢もセクシュアリティーも聞かない。悩みは言わなくていい。楽しんで帰って、また来たときに話したくなったら、同世代の友達に打ち明けてみればいい。

「気軽に、友達をつくりに来てほしいと思っています」

たった一人との出会いが、人生を支える光になる。その光が生まれる場所を、Youth Prideはユース自身の手でつくっている。