アメリカのリベラル地域に住む10代の子供を持つ親同士らしい話題です。
ジェンダー代名詞の問題。仕事で外国人とやり取りがある方は、受け取ったメールの署名欄に「She/Her」などと入っていることがあるかもしれませんね。
例えば、このようなフォーマットです。
John Smith (he/his)
ABC Company | Co-Founder
www.abccompany.com
m. (000)000-0000
SNSのプロフィールにもジェンダー代名詞を表示するユーザーが増えました。例えばアメリカのハリス副大統領はインスタグラムのプロフィールに「She/her」と書いています。
ジェンダー代名詞とは、自分を呼ぶときに使って欲しい代名詞のことで、自認する性別になります。
以前は「He」か「She」の男女の二択でしたが、最近では「Non-binary (ノンバイナリー)」と言って、性自認が男女いずれにもはっきり当てはまらないケースがあるという理解も広まっています。
宇多田ヒカルさんがインスタグラムで「自分はノンバイナリーに該当する、ということを最近知った。」とカミングアウトして話題になりました。ノンバイナリーの代名詞は一人称でも「they/them」です。
ジェンダー代名詞をまだ知らなかったころ、Alex、Max、Kellyなどとのユニセックスネーム(男女性別不明な名前)のために、「女性ですよ」「男性ですよ」と示しているのだと思っていました。
あるいは馴染みのない国の出身者たちが名前の読み方や性別を知ってもらうために親切心から表示しているのかと思ったこともありました。それが勘違いだとわかったのはあとになってからです。
「あなたの代名詞は何?」と最初に聞かれたとき、「ああ、わたしは女に見えないのか。そんなにも男顔なのか」とショックを受けましたが、それは「どのように呼ばれたいか?」の意味のジェンダー代名詞についての質問でした。
医科大学のカリフォルニア大学サンフランシスコ校 (UCSF)の公式サイトでは、メールの署名の代名詞の使い方のサンプルをLGBT Resource Centerのウェブサイトで紹介しています。
Example 1:
Klint Jaramillo, MEd, MSW
Pronouns: he, him, his
Director, LGBT Resource Center
Office of Diversity and Outreach
University of California, San Francisco
500 Parnassus Avenue
San Francisco, CA 94143
私自身、新型コロナウイルス感染拡大の影響でここ1年以上、打ち合わせはzoomなどのオンラインシステムでした。
初対面の方もいるため、打ち合わせの主催者から「名前の表示の横にジェンダー代名詞を入れてください」と言われることがありました。
自己紹介の際も「ジェンダー代名詞を入れてください」と言われることもあります。私の場合は「Hi, I am Miho. My pronouns are She/Her. 」となります。
zoomは最近、プロフィールにジェンダー代名詞を設定する項目を追加しました。インスタグラムも同様です。
強制ではないので、やりたくなければしなくても構いませんが、みんなが言うことでマイノリティであるLGBTQの人たちが自分のジェンダー代名詞を明言しやすくなるでしょう。
シリコンバレーのIT企業では社内のイントラネットで表示される従業員のプロフィールにジェンダー代名詞のフィールドを追加している企業もあります。Salesforceなどがそうです。
そんな変化は履歴書にも現れており、私の職場に送られてくる履歴書にもかなりの確率でジェンダー代名詞が記載されています。
さて、色んな意味で注目された東京オリンピック2020は多様性と調和がテーマでした。それを反映するかのように、LGBTQを公表しているオリンピアンが180人を超えて過去最高となりました。
サッカー女子カナダ代表として出場したレベッカ・クイン選手はトランスジェンダーを公表した初の金メダリストです。クイン選手はノンバイナリーでもあります。
また、スケートボード女子ストリートに出場したアラナ・スミス選手もノンバイナリーを自認し、ジェンダー代名詞として「they/them」を使っています。
ジェンダー代名詞をはじめ、ダイバーシティ(diversity、多様性)やインクルージョン(inclusion、包括)に特に敏感なのは、Z世代(2021年時点で6歳から24 歳)です。
ネットフリックスやディズニーなどで配信される最近のティーン向け動画では、それが強く意識されています。
コメディにしろ、ロンマンスにしろ、サスペンスにしろ、SFにしろ、一人はゲイの生徒のキャラクターを配置している作品がほとんどです。
また、People of Color (有色人種)もグループに必ず一人は入ります。ハリウッドではアジア人の配役が増えているので、日本人も含めてオーディションの機会が最近増加していると聞きます。
私が暮らすサンフランシスコ・シリコンバレーでは、日常の中、そしてコミュニティーの中にLGBTQの人たちが普通に存在しています。
同級生の中にトランスジェンダーやゲイカップルの養子がいたり、学校の先生がLGBTQであったり。
子どもが通う中学校を2、3年前に卒業した子どもたちのアルバムには、性転換した生徒2人の「ビフォー & アフター」の写真(一人は女の子から男の子、もう一人は男の子から女の子)が載っていて、「Biggest Grow Up」とコメントが称えてありました。
今回は性自認について取り上げましたが、性的指向となるとさらに複雑になり、オプションが増えます。私自身、理解に努めている最中です。
「自分の性的指向や性自認がわからなかったり、はっきりしなかったりするティーンが増えてきたのは、動画番組やSNSの影響が大きい」。そう話す上の世代もいます。
彼らはこうも考えています。若い人たちがたとえ自分がLGBTQではない場合でも、周りにいるLGBTQの友だちの影響で「もしかしたら自分もそうかも」と迷うのではないか、と。
ジェンダー代名詞や性的指向に関して、Z世代が周りの大人から「そんなことは重要でない」「そんなのを考えるのは面倒」「最近の傾向は too much」と言われて傷ついたり、強く反発したりすることがあります。
両親や祖父母と激しいディスカッションになったという話もよく耳にします。リベラル人口の多いサンフランシスコでも、世代によって理解の度合いが違います。
Z世代はしなやかにダイバーシティやさまざまなジェンダーアイデンティティを当たり前と受け入れて、空気を吸うようにLGBTQについて理解を深めていきます。なかなか頼もしいです。
そして、彼らの親世代やその上の世代は、複雑化する性自認や性的指向に賛同できなかったとしても、ありのままの彼らを受け入れる努力はすべきだと思います。
オネエ系テレビタレントだけがLGBTQではありませんし、身近なところでLGBTQは存在しています。この傾向は日本でもさらに強まると思います。
彼らもあなたやわたしのように納税し、学校に通学し、人生に悩み、そして、生ききづらいなあ、と感じているはずです。そして、それでも同じように頑張って生きているでしょう。