サンフランシスコの街では、運転手のいない自動運転のロボタクシー、グーグル傘下のウェイモが300台ほど走り回っています。テスト走行しているアマゾン系のZoox(ズークス)もよく見かけます。
当初は利用登録を早い段階から申し込んだ人や、サンフランシスコ大学の学生など利用できるユーザーの属性や時間帯も限定的でしたが、今年6月からいよいよアプリをダウンロードした人は誰でも、どの時間帯でも利用できるようになり、ウェイモの順番待ちリストも一気に解消しました。
乗車できるエリアもサンフランシスコからデイリーシティという隣の市まで徐々に広がり、55平方マイル(約140平方キロメートル)まで拡張されました。とは言え、サンフランシスコは東京と比べると小さな都市なので、千代田区、中央区、港区、渋谷区のあたりをぐるぐる走っているイメージでしょうか。
ロサンゼルス、西部アリゾナ州フェニックスなど他のエリアでも同様にエリアが拡大されていて、筆者のもう一つのオフィスがあるサンマテオという街にも近々走り始める予定となっており、テスト走行しています。
サンフランシスコ・シリコンバレーの通勤電車、カルトレインのサンフランシスコ駅から筆者のオフィスまでは早歩きで20分ほどですが、ここ数週間はイベントの関係で荷物が多いときが多く、午後2時まで20%オフのキャンペーンにつられて、ウェイモを利用することがありました。
駅のそばで何人かウーバーやリフトなどのライドシェアと共にウェイモ待ちをするエリアがあり、まったく同じデザインの車体のウェイモが数台止まっていても、イニシャルが上に点灯するので(筆者の場合はMG)どのウェイモが自分のリクエストしている車か分かるようになっています。
フェニックスではすでに、ウーバーイーツのアプリを通じたウェイモの配車サービスを提供しています。運転手のいないロボタクシーがレストランなどで頼んだ料理を配達しにやってくるイメージです。ドライバーへのチップを払う必要はなく、もし人間のドライバーがよければ、ロボタクシー配送を除外することもできます。
そして、来年2025年には、南部のジョージア州アトランタとテキサス州オースティンで、配車サービスでライドシェアのウーバーとタッグを組み、ウーバーのアプリでウェイモが利用できるようになります。
すでにウーバーのアプリを持っていて、実際に利用しているユーザーは多いので、ウェイモに登録してクレジットカード情報を入れて、という一手間と心理的バリアがなくなり、手軽に利用してみようか、という利用者が一気に増えるのではないか、と思います。
これだけウェイモが走り回っているサンフランシスコですら、移動できる距離が限定的なせいもありますが、実際に人間が運転するライドシェアに比べて頻繁に利用している人はまだ少数派なのかもしれません。
「他人の車に乗る」「同じ方向に行く知らない人どうしが乗り合った場合、料金が安くなる」。今では普通に利用しているライドシェアのサービスも、浸透するまで少し時間がかかったように、人々がライドシェア感覚で(これも日本でまだ普及していないので感覚値をお伝えするのが難しいのですが)ロボタクシーを日常使いするまでには少し時間がかかるかもしれません。
ウェイモも割引キャンペーンやソーシャルメディアなどの広告を駆使して利用者増加を図っています。
日本では運転手のいないロボタクシー、いつ導入されるでしょうか?
そして、もう一つシリコンバレーではあまり珍しくなくなってきたのが、テスラの新型EV「サイバートラック」。
昨年末や今年の初め頃などは、見かけるたびに写真を撮ったり、インスタグラムにポスティングしたり、どこどこのスーパーマーケットの駐車場で見かけた、スタンフォード大学の構内を走っていた、などの目撃情報が友人や仕事仲間の間で行き交ったときもありましたが、現在は割と街中で見かけるようになり、筆者の子供も、友達の父親が所有しているのでテニスの送迎などで乗せてもらっています。
筆者も、2020年に予約して今年3月に最初の1000台のサイバートラックのうちの一台をようやく入手したという友人のパパ友に頼んで乗せてもらいました。
最初に実際のサイバートラックを見た人の多くが、その直線的な個性あるデザインに衝撃を受けたのではないでしょうか。「テスラの初めてのピックアップトラック」と言われていますが、とてもピックアップトラックには見えません。中のインテリアも圧倒的なミニマリズムで、まずパーキングやドライブなどのシフトレバーが中型セダン「Model3」同様にありません。タッチパネルでの操作、もしくはルーフにあるボタンでの操作となります。
現在高校生の筆者の子供が小学生のとき、その当時シリコンバレーでもまだ珍しかったテスラが小学校の送迎ゾーンにスーッと入ってくると、リアドアのガルウィングが、その名前の通りカモメの翼が広がるがごとく華麗に上にあがり、そこからバックパックを背負った小学生が出てきてドロップオフされている光景をみたとき、「なんかすごいところに住んでるなあ」と思った記憶があります。
このサイバートラックのオーナーは小学生の子供もいるので、学校の送り迎えもこの車でするのかな、と想像したりしました。オフロードも走れるサイバートラックはアウトドア仕様にもなっていて、冬にスキーリゾートのタホ湖に家族で行くのが楽しみなのだそうです。
また、カリフォルニア州のアーバイン警察がサイバートラックをパトカーに採用しました。まるで近未来の映画のようです。
テスラCEOのイーロン・マスク氏の共和党への強い支持の影響が出るのか、それほど影響を受けないのか、販売数に反映されてくるのはもう少し先になりますが、昨年と比較するとカリフォルニア州のテスラの販売台数は、他の電気自動車(EV)メーカーとの競争激化もあり、2024年は減少傾向にあるようです。
それでも、2023年が好調だったためか、初めて見たときは衝撃的だったテスラも、シリコンバレーのテックオフィスの駐車場に白いテスラがずらっと並び、信号待ちをしている車が1台おきにテスラだと気がつくときもあるくらい、かつてのプリウス(1997年発売のトヨタの世界初の量産ハイブリッド車)並みに多い気がします。アメリカの郊外では夫婦で1台ずつ車を2台所有している家庭も多いですが、テスラを2台所有している家庭もちらほらみかけるようになりました。
全体的にEV車の成長は鈍化していると言われますが、カリフォルニア州では2035年に、ハイブリッドも含めたガソリン車が全面禁止されます。今後の行方も気になるところです。
そして、ライドシェアサービスの「ウーバー」や「リフト」でもテスラ所有のドライバーにあたることも増えました。先日は、サンフランシスコ郊外のサンマテオからスタンフォード大学までウーバーを利用した際、やって来たテスラの人間のドライバーはオートパイロット機能を利用していて、30キロメートル、25分ほどの乗車の間、ほぼ運転していませんでした。
筆者は自動車業界にいるわけでもなく、車にもまったく詳しくない上、居住しているサンフランシスコ・シリコンバレーが富裕層の多いテック中心の街で、アメリカでも異様な特殊地域であることは重々承知しています。
ですが、自動運転がじわじわと生活の中に普及し、生活に身近な存在となりつつあることや、テスラやウェイモが自動車会社でなく、テック企業であり、そのソフトウェアのアップデートによって継続的に価値を提供し、進化を遂げている企業であることは実感します。
テスラは、ハンドルもペダルもない無人タクシーのサイバーキャブを3万ドル(約445万円)台で2027年ごろまでに発売すると発表しました。「このタイムラインで、この価格って無理じゃない」との市場の反応で、この発表イベントの後、テスラの株価は9%下落しましたが、このタイムラインは無理でも、いつかは現実になる気がします。
サイバートラックのドアの取っ手がない(そのため開け方がわかりませんでした)、ウィンカーやシフトのレバーがない、オートパイロットで行き先を登録すると連れて行ってくれる、それだけでも一般人の筆者は驚きですが、自動車そのものの概念が変わるような画期的な変化が、初の大衆量産車「T型フォード」が1908年に出現して以来の100年以上の進化よりも、もしかしたらこの先10年で起こるかもしれません。それも生活者レベルで感じています。