みなさんは週に何回洗濯していますか? 私はどう頑張っても週に1回しかできません。アメリカのアパートやマンションは、自分の部屋の中に洗濯機を設置できないことが多く、洗濯がとても不便なのです。私たちが住むタウンハウスの部屋にも洗濯機はなく、敷地内にある共同の洗濯機と乾燥機を利用するか、コインランドリーに行って洗濯するしかありません。となるとフルタイムで働いている私には平日はとても無理。
アメリカの洗濯機は大型ですが、それでも家族の全員分の衣服、シーツ、タオルとなると4〜5回は洗濯機と乾燥機を回すことになります。ちなみに、アメリカでは洗濯物を外に干すことが一般的ではなく、景観を損ねるとして外干し禁止条例のあるエリアもあります。
こうした背景からか、アメリカでは都心部を中心に、普通の洗濯物の「wash and fold (洗濯して畳むサービス)」が、ドライクリーニング店やコインランドリーで行われてきました。が、最近では、洗濯する時間を見つけられない、乾いた洗濯を片付ける時間をセーブしたいというニーズに応えたさらに進化した洗濯代行サービスが登場してきました。撤退し消えていく企業もあれば、拡大を急ぐ企業もあり、各社が全米でしのぎを削っています。
以前のサービスとの違いは、専用のアプリとテクノロジーを駆使している点です。アプリで自分の都合のいい集荷日とお届け日を設定し、ナチュラル系洗剤を使用してとか、柔軟剤は入れないでなど、洗濯方法も細かくリクエストできます。サンフランシスコが本拠地のRinse の場合、料金は450グラム(Tシャツ4枚程度)につき2.25ドルと重さによる課金や、袋に詰めれるだけ詰めて1週間分の家族の洗濯が40ドル程度(年間契約キャンペーン利用)など、様々なプランがあります。
エンジニアの街、サンフランシスコ・シリコンバレーでは、FacebookのCEOのマーク・ザッカーバーグも一年中同じデザインのTシャツやパーカーを着ているように、パーティでもネクタイを締めることが少なく、ドライクリーニングが必要となる洋服を着ることはほとんどないですが、ドライクリーニングももちろん一緒に頼めます。
私は家事の中では料理は好きですが、洗濯はかなり憂鬱です。まず、時間がかかり過ぎる。洗濯に費やす時間は週に2時間以上。それならば、洗濯ではなく子供と遊んだり宿題をみてあげたりしたい。残念ながら事業解散してしまった自動衣類折り畳み機を手掛けていたセブンドリーマーズによると、人が一生のうち洗濯に費やす時間は1万8000時間。洗濯を畳み、仕分けし、クローゼットなどに収納する時間は9,000時間だそうです。その時間は一生のうち1年以上に該当するのです。
自分の洗濯くらい自分ですれば、という声も聞こえてきます。誰でもやっている家事にそんな高額を費やして贅沢だ、というご意見もあるでしょう。日本はアメリカより家事のアウトソースに抵抗がある人が多いですし、実際、「義理母になんて言われるか…」と周囲の目が気になり、サービス利用に後ろ向きの投資銀行に勤める高収入の友達もいます。
洗濯は好きでも、掃除は嫌い、という人もいるかもしれないですねよね。何もかも自分ですべてやろうとしないで、月1〜2回は掃除の人に来てもらう、料理が嫌いだったら、少しくらい外食が多くなっても罪悪感を持たないなど、何かひとつくらい家事のプレッシャーから解放されるのも一案のように思います。
日本でも、家事やベビーシッターなど生活における家事のアウトソーシングが少しずつ増えてきていますが、アメリカではさらにずっと一般的です。富裕層でなかったとしても、家事のアウトソーシングに躊躇しないのは、どうしても自分でないといけないもの以外はしなくてもいい、という考え方があるからです。彼、彼女たちは自分の時給や時間の価値を認識しているので、貴重な週末の半日を費やすことで失う対価の方が大きいという発想が背景にあります。これは、専業主婦・主夫でも同様です。
ライドシェアのUberに乗ると、早朝の数時間だけドライバーをしているブーマーズ(約55~75歳)によく遭遇します。これからますますこの世代が退職する時期に入ります。彼らはこれまでの高齢者と違い、スマートフォンのアプリを使いこなせる世代。中には働き盛り世代をサポートしたい、自分の時間を有効活用したいと希望する方々もおられるかもしれません。
「洗濯を畳むだけ」というような小さな仕事を、自分たちでアプリを駆使して自由に選ぶ。これからの時代は、そんなシェアリングエコノミーが活用されるようになるのかもしれないな、と思ったりします。