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忙しすぎて病気になれない、させられない。……シリコンバレーの働くママ事情

働くママのシリコンバレー通信
イラスト・田上真紀子
イラスト・田上真紀子

「上の子と旦那がインフルエンザになったから、予防効果があるとかでタミフルを医者に推奨されて。自分はなっていなかったけど、飲んだのよ」「ノロウイルス、きてるらしいよ。クラスの子が5人休んでるってよ」。子供のお迎えなどでママ友に会うと、子供と自分たちの健康の話になります。

働くママが家庭と仕事の忙しいスケジュールをアプリやカレンダー機能でやりくりしているのは、日本もアメリカも同じ。特に、私が住むサンフランシスコ・シリコンバレーでは、高学歴、パワージョブに就く女性が多く、子供が通学するパブリックスクール(公立の地元の学校)の家庭を見渡せば、ママの方が高収入で忙しい、という家庭も多くみられます。私より一つ下の20~30歳代になるとその傾向は一層顕著に。全米で最も物価が高い地域のシリコンバレーでは、共働きでないと生活していけないといった現実もあり、ダブルインカムは当たり前で、仕事を持つママが感覚的には8割は超えている感じです。

そんなママたちが必死になっているのは、「いかに子供たちを元気に安全に育てるか」ということ。ワーキングスタイルの変化で、親たちにも余裕がなく、「子供を病院に連れて行く時間がない」ためです。アメリカの場合、病院に連れて行くとなると、なんだかんだと半日はつぶれてしまいます。まず、電話で予約、車を運転して病院へ。都心の場合は駐車場を探す手間が発生し、受付、待ち時間を経て診察、処方箋がでた場合はドラックストアまでまた運転、そして再び駐車場を探し、そして、薬をもらって会計して……という具合。年齢の低い兄弟を連れていかなければいけない場合は、より大変な作業となります。

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登校する子どもたち。忙しい親にとって、学校に行ってもらわないと困るのが現実=グリーンバーグ美穂撮影

ちなみに私の子供 (9歳)はそれなりに風邪もひきますが、歯医者と健康診断以外で医師にかかったことはここ3年くらいありません。というのも、熱がでて医師にみてもらうと、処方箋が必要な薬が必ず処方される日本と違い、アメリカでは「タイレノール買って飲ませて」で済んでしまうことがほとんどだからです。タイレノールは、Over The Counter (OTC)といって医師の処方箋がなくても、薬局で普通に買える医薬品です。そういうわけで、ちょっとやそっとのことで病院に行くことはなく、最後に病気で病院に行ったのが思い出せないくらいです。

もちろん人間なので熱が出たり、お腹の風邪になったりすることもありますが、親は早め早めに手を打ち、不必要な診療を避ける努力を怠りません。ママたちが集まると必ずと言っていいほどその話になりますし、ママブロガーたちの間でも盛んに議論されています。

アメリカでは健康保険や医療費が高いことは有名で、特に健康保険はここ10年で高騰していますが、自分の健康管理、健康づくりや疾病予防は自己責任、という意識が浸透してもいます。

例えば、食生活をヘルシーにすること。このトレンドは、ファーマーズマーケットが年中繰り広げられており、ちょっと高価な食材にも手を伸ばせる富裕層が多く、健康に対する意識高いサンフランシスコやニューヨークなどの都心部にとどまりません。もはや全米に広がりつつあります。 アメリカは広大なので、一概にライフスタイルの傾向を一括りにできないところはありますが、そこしか買い物するオプションがないというエリアもある世界最大のスーパーマーケットチェーン、ウォルマートの報告書によると、多忙を極めていても、家族の食事内容にエネルギーを傾けるファミリーが増えているとのこと。仕事で遅くなり、晩御飯を作る時間が十分にない場合でも、ファーストフードで済ませず、栄養価の高い食事を用意する家庭が増えているというのです。冷凍食品にしても、野菜炒めなどの製品がこれから伸びると予測しています。また、調理器具では、材料を入れてスイッチを入れておけば煮込み料理が完成する「スロークッカー」が人気。私もヘビーユーザですが、売上は年比10% 増加しています。

小売り店側も、この世の中の変化に敏感に反応。オンラインで注文して決算、店舗でささっと引き取るだけのサービスのストアピックアップ、食料品などをウェブから注文し、個人のショッパーが買い物して配達してくれる Instacart(インスタカート)、ミールキットデリバリ(その料理で使う分だけの食材が届くサービス。箱を開けて調理するだけなので便利)など新しいサービスを続々と始め、トレンドを後押ししています。Instacart は多少割高になりますが、やはり背に腹は変えられず、時間を優先して届けてもらうこともあります。アメリカの場合、店舗が広いこともあり、買いものも何かと時間がかかってしまいます。

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Instacart(インスタカート)で買い物を届ける女性。食料品などをウェブやアプリから注文し、個人のショッパーが買い物して配達してくれる。こちらも配車サービスのUber などと同じで、ショッパーが自分の空いている時間に登録して好きなときに仕事をするシェアリングエコノミーをベースとしたサービス=グリーンバーグ美穂撮影
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Instacart(インスタカート)の広告=グリーンバーグ美穂撮影

また、子供向けのサプリメントもドラッグストアの一棚を大きく占めています。中でも、グミのサプリメントは、お店に行く度にアイテムが増えている気がします。 グミは砂糖が多く含有されているらしく、歯医者さんから「グミとキャンディーは歯に長く残り虫歯の原因になるので与えないように。チョコレートやアイスクリームの方がいい」と言われているので気になります。「栄養は食事から」と考えているので、個人的にはサプリメントは与えていません。周囲のアメリカ人ママに聞くと、「自分も子供のときからサプリメントを摂っていたので、もうなんだか習慣で…」と答える人が多いです。

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アメリカでは膨大な種類のサプリメントが販売されていますが、キッズ用のサプリメントの数も豊富です。最近は、グミタイプのサプリメントが増えてきました。パッケージもカラフル=グリーンバーグ美穂撮影

子供がなかなかぐずぐずと寝ないときなど、「風邪ひいたらママが困るんだから。たっぷり寝ないと風邪ひくかもだから、寝てください!」と、つい、イライラして怒ることも。自己都合も甚だしい話ですが、インフルエンザとか風邪になってもらったらほんとにこっちが困る!

日本でも国がウーマノミクスを推進し、今後、女性の活躍の場が益々広がっていくと思いますが、このアメリカの先回り予防のトレンドは、日本の近未来の姿のような気がしています。これから日本もアメリカも風邪のシーズンがやってきます。免疫力を高めて、どうぞお身体にお気をつけになってお過ごしください。