1. HOME
  2. World Now
  3. 週4日勤務制は「いいね」 あるNZ企業の試み

週4日勤務制は「いいね」 あるNZ企業の試み

ニューヨークタイムズ 世界の話題 更新日: 公開日:
ニュージーランド(NZ)最大の都市オークランドでは、フェリーは日常の重要な交通手段だ。そのNZで、ある企業が週4日、計32時間の短縮勤務制度の導入実験をしたところ、生産性向上などの成果が得られた=David Maurice Smith/©2018 The New York Times

ニュージーランドの企業が、週4日の勤務で従来の週5日勤務と同じ給料を従業員に支払う新制度の導入実験をしたところ、好ましい労働成果が得られたとし、この制度の定着を図ろうとしている。

この企業は信託・遺言・地所などの管理を請け負う「パーペチュアル・ガーディアン(Perpetual Guardian)」社。実験の結果、勤務時間の変更で従業員240人の生産性が向上し、家族と過ごしたり、運動をしたり、料理や庭いじりをしたりする時間が増えたという。

実験は今年の3月から4月にかけて行われた。勤務時間を週40時間から32時間に短縮した実験結果については、2人の研究者に分析してもらった。

オークランド工科大学の人事学教授ジャロッド・ハーによると、従業員たちのワーク・ライフ・バランスは24%改善され、休日を過ごした後、それぞれがより元気な状態で出勤できた。

「上司が言うには、従業員たちはよりクリエーティブ(創造的)になり、勤務態度もより良くなり、時間を守り、早退したり、長い休憩をとったりしなくなった」とハーは言う。「実際の仕事の成果は、週5日勤務の替わりに4日勤務にしても変わりがなかった」と分析した。

個々人の生産性を高めることで勤務時間の短縮を図る。このコンセプトの下で、他の国でも似たような試みが行われている。スウェーデンのイエーテボリ市の実験では、1日の勤務時間を6時間に設定したところ、従業員たちは従来と同じか、それ以上の仕事量をこなすことが分かった。一方、フランスで2000年に週35時間労働を義務付けたら、競争力の低下や雇用コスト増を招き、企業は音を上げた。

パーペチュアル・ガーディアン社の場合、従業員たちは、勤務時間の変更が、仕事に就いている時の生産性をいかに高めるかを追求する動機づけになっていると話している。仕事上のミーティングの時間は、これまでの2時間から30分へと短くなり、仕事に集中できるよう従業員同士が気遣うようになった。

「彼らは時間の無駄を省くようになり、一生懸命に働くのではなく、よりスマートに働くのだ」とハーは指摘する。

パーペチュアル・ガーディアン社の創業者アンドリュー・バーンズは、ある報告書を読んで週4日勤務制の導入を考えるようになったと言っている。その報告書によると、人が生産的に仕事をするのは13時間以下で、あとは睡眠時間が短かったり、マリフアナを吸ったりした時と同じように注意力が散漫になる。

バーンズの話だと、実験結果は、従業員を新たに雇う際にはオフィスにいる時間ではなく、仕事の成果を基にした雇用契約を結ぶべきであることを示唆している。

「さもなければ、『自分は、あなたに何を求めているか明確にする能力がないから、出社してオフィスにいる時間に基づいて給料を支払います』と言っているようなものだ」とバーンズ。「雇用契約は、生産性の点で同意できる水準をベースにすべきだ」。彼はそう言い添え、「短い時間で成果を出せるなら、短縮した時間分の報酬をカットする理由などない」と話している。

この短縮勤務の制度で最も恩恵を得るのは働く母親だろうと、バーンズは言う。出産休業から職場復帰する女性はしばしばパートタイムで働くが、フルタイムと同等の成果を出してきたからだ。

パーペチュアル・ガーディアン社の上級顧客マネジャー、タミー・バーカーはバーンズの考えに同意する。

ニュージーランド最大の都市オークランドに住み、2児の母でもあるバーカーは、毎週休みの日には食料の買い出しなどさまざまな用事に走り回ってきたが、短縮勤務なら週末、家族と一緒に過ごせる時間が増える。

企業側は電気代も節約できる。バーンズは、より多くの企業が勤務時間の変更を採用すれば、その社会的な影響は大きいとみている。

パーペチュアル・ガーディアン社の取締役会は、短縮勤務制度の恒久化を検討している。

ニュージーランド政府の職場関係担当相イエイン・リーズ・ギャロウェーは、ニュージーランド人の多くが長時間労働に就いているが、「より良い勤務制度を導入しようという企業が出てきたことはすばらしいことだ」と語った。

「よりスマートに働くことの一例として、今回のケースに拍手を送りたいし、もっと多くの企業が見習ってほしい」。そうギャロウェーは言っている。(抄訳)

Jess Bidgood and Julie Bosman) ©2018 The New York Times

 ニューヨーク・タイムズ紙が編集する週末版英字新聞の購読はこちらから