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「経済成長になじみがない」 大学生世代が考える「豊かさ」とは

World Now
「新しい豊かさ」について一緒に考えた上智大学の学生たち=西村宏治撮影

朝日新聞GLOBEは上智大学新聞学科で、「時事問題研究」という講座を担当しています。9月下旬の初回の授業で、低成長時代の日本を生きる私たちにとっての「新しい豊かさ」とは何だろう、というテーマについて考えました。

まず話してもらったのは、豊かになるには経済成長が必要だという「成長派」のGLOBE西村宏冶記者(41)です。

「経済は、パイが大きくなるほうが分配はしやすいんです」

経済取材が長い西村記者は、学生に熱く語りました。しかし、学生からの反応はいま一つ。横で聞いていた私の印象としては、西村記者が言っていることがストンと落ちないという感じでした。

私が感じた教室の空気は、学生たちに授業の感想を書いてもらったメモで裏付けられました。本人たちの許可を得て、その一部を紹介すると……。

上智大学の学生たち=西村宏治撮影

「授業で『成長』についてどう思うかと質問がありました。私は『さとり世代』であるため、期待をしないのではないかと思いました」(3年生の益子美琴さん)

成長すれば、パイが拡大して皆が恩恵を受けられる、という説明にも、違和感を抱いた学生が複数いました。

「経済成長、豊かさの概念という議論は、いわゆる金持ちの富裕層の間でなされる議論のように感じます。パイが大きくなった方が一人あたりの分け合う量が増える、とメディアが伝えても、それは一定水準以上の人にしか届きません」「経済的下層の人々は、どうせパイが大きくなっても富裕層のせしめる量が増えるだけ、と肌で感じるのではないでしょうか。豊かである人同士で『いったい豊かさとは?』と話すことも、世界の市場成長のためには不可欠だと思いますが、その枠からあふれてしまっている人たちのことも、取り上げる回があってもよいのかなと思います」(3年生の澤田機さん)

学生には、私たちが考えたタイトル案についても意見を聞きました。その中の案の一つについて、こんなコメントをもらいました。

「経済成長になじみのない私からすると、『うーん……』という感じでした」(丸本七海さん)

上智大学の学生たち=西村宏治撮影

経済成長になじみのない私。

これ、すごいフレーズだと思いました。衝撃すら受けました。

受講している学生の多くは3年生で、1996年前後に生まれています。学生たちが10歳のころ、日本のGDP成長率は1.4%。中学時代には米国発の世界金融危機の影響で、日本経済は2年連続のマイナス成長に陥ります。

一方、1975年生まれの西村記者が10歳だったころのGDP成長率は、6.3%。まだまだ成長を続けていた時代です。

「明日が今日よりも良くなる」時代に育った西村記者と、成長そのものを体験として知らない学生たち。お互いピンとこないのも、無理もありません。西村記者は取材チームのチャットで、こう書きました。

ただ、成長を知らずに生まれ育った学生たちが、成長と共に生きてきた上の世代と比べて、現状に不満を持っているかといえば、必ずしもそうは言えません。 むしろ、豊かな人生や社会のあり方について、違う尺度・価値観を持っている人が多いのでは、と感じています。

新しい世代の「豊かさのニューノーマル」とは。これから、大学生たちとの議論も紹介しながら、掘り下げていきたいと思います。