知事選で相次ぐ「移民」の争点化 政策にじわり影響も
「外国人問題への取り組みはどうなっていますか?」「外国人対策をしっかりやってください」。昨年夏、茨城県選出のある衆院議員は気がついた。街頭に立っていると、「外国人問題」について有権者に話しかけられることが急に増えたのだ。「今まではほとんどなかったのに」
参政党が「日本人ファースト」と打ち出し「外国人」が大きな争点になった参院選の直後だった。茨城県は2人区で、長らく自民党と野党第1党の「指定席」。そこに参政党が割り込んで議席を獲得し、衝撃を与えていた。茨城県の外国人比率は2025年6月現在で約4%と、日本全体の平均とそう変わらない。しかし人口の1割以上を占める自治体もある。
参院選によって有権者が「外国人問題」を意識するようになった――。
茨城県で昨年9月にあった知事選でも、「外国人問題」は一つの争点に。参政党の支援はなかったが、同党のシンボルカラーと同じオレンジのポスターを貼った候補者が、県職員の国籍条項の撤廃や共生社会政策を批判。組織の応援はなく、全くの無名だったが総得票数の2割を獲得し、共産党推薦の候補に迫った。
3選した知事の大井川和彦は、全国で初めて「外国人版いばらき幸福度指標」をつくって外国人から選ばれる県を目指し、25年3月から職員の国籍条項も撤廃していた。
ただ3期目以降、外国人政策は厳しさを増している。新年度から外国人の不法就労の情報を募り、県警の摘発につながれば報奨金を払う制度を始める方針だ。
茨城の1カ月後、10月の宮城県知事選では自民党の元参院議員が参政党と政策覚書を結んで支援を受けて、落選はしたものの6選の元自民党県連幹事長の現職に肉薄した。
「外国人問題」だけが争点ではなかったが、現職は、宮城県で増えていた漁業や農業の現場で働く外国人のため、共生政策に力をいれていた。イスラム教徒が望む土葬が可能な墓地の整備を議論するとしていたが、選挙前にSNSで取り上げられると、白紙撤回した。
「ターニングポイント福井!」
参政党代表の神谷宗幣がそう呼びかけて、今年1月19日、福井県知事選の候補者、石田嵩人(たかと)の支援を打ち出した。「ターニングポイント」は、宮城県知事選でも神谷が使ったフレーズだった。投開票日まであと6日。石田がSNSで外国人労働者の受け入れ制限を訴えているのに神谷が注目したのだ。
神谷は石田と共に街頭演説に立った。「(外国人政策に厳しい姿勢を示した)勇気がある候補者に福井の未来を担わせてほしい」。福井は自民党の牙城(がじょう)ともいわれるが、神谷が生まれ育った地元でもある。
そのうえで神谷は、県職員の採用での国籍条項撤廃について、「福井県は、日本人もなりたい公務員の国籍条項を取っ払おうとしている。人手が足りないところに入れるはずではなかったのか。(県職員になれば)外国人の考えがいつのまにか入ってくる。先人の知恵、積み上げてきたものがなくなる」と訴えた。
石田はその前の演説で、「単一民族国家である日本、そして福井。多民族である欧州は問題になっている。日本で同じような問題が起きたら対処できない。問題が起きてからでは遅い」と強調した(選挙後に単一民族という発言を訂正)。
福井県知事選は、現職知事のセクハラ問題での辞任から行われた。保守が分裂。自民党本部が支持した元県副知事で前越前市長の山田賢一に対し、自民党の福井市議らが石田を推した。石田が山田と共産党候補を下した。
福井県庁で40年近く働いて副知事も務め、県の国際交流協会の理事長もした山田は、「福井は外国人が来て大きな問題となったような話がない。むしろ来ていただかないといけない。(越前市長時代も)共生は大きな課題としてやってきた」と振り返る。
だから外国人問題は「論点以前」で、石田の発言も「何で今、この選挙でこんなことを言わなあかんのか」と感じたという。自身は選挙の争点と思わず、一度も外国人政策を語らなかった。
福井県では、外国人住民数が4年連続で増え、25年12月末には前年より1650人多い2万772人と、過去最多を更新した。総人口に占める割合も2.84%で、過去最高だ。都道府県庁で採用の際の国籍条項を撤廃しているのは、25年2月時点で少なくとも10ある。越前市も、山田が市長になる前、前身の武生市時代から国籍条項を撤廃している。
石田の勝因が外国人政策だったのかはわからない。山田は「結果論だが、選挙終盤で参政党の支援がもたらした影響はあったのかもしれない」。
今年2月8日に投開票だった衆院選中、参政党の神谷は茨城県で街頭演説を行った。参院選と比べ、「外国人問題」へのトーンは落ちていた。しかし集まってきた聴衆の多くは、関心を持っていた。
水戸市に住む20代の会社員男性は「ニュースを見ていると、子どもの頃より外国人による犯罪が増えたのではと不安がある」。神谷の「労働力として完全排除ではない。制限だ」という演説も、「納得ができて、いいな」と思った。
石岡市の40代保育士女性は「幼児期は母語習得のために大事な時期のはずなのに、外国人の利用者もいる。保護者と言葉が通じず、困っている」と語った。
日常の中にある外国人に対する不安や不満を、政治家が言語化し、訴える。玉石混交の情報が飛び交う中で、選挙結果にも反映される。日々の生活に身近な地域の外国人政策に慎重さや厳しさを増す状況が始まっている。