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母語よりしっくり来る 日本語で人生が変わった

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クレシーニ・アンさん=2025年8月、福岡市博多区、日吉健吾撮影

コンテンツが輸出され、来日する外国人も増える中、母語ではない日本語を使いこなす人が増えている。言葉は意思疎通の道具にとどまらず、思考の土台にもなる。中には、こんな人も─。

日本語のほうが、自分の感情を表現できている、しっくり来る。応用言語学を専門とする北九州市立大のクレシーニ・アン准教授(51)が、自分は日本人だなあと思うようになったのは、そんな気づきがきっかけだった。

生まれ育った米国から23歳で来日。米国籍の夫と3人の娘を育ててきた。そして家族で一人、日本国籍取得を選んだのは「日本語が私の人生を変えたから」。

広める価値のあるアイデアを伝えるイベントの地域版「TEDx」。福岡市で2018年に開かれた際、そのステージに立った。中学時代から25年間悩まされた摂食障害を、日本で克服できた話をしようと思った。

おにぎりを残したとき、友人にとがめられたこと。「いただきます」には、動植物の命を「いただく」ことや、作ってくれた人への感謝という意味が込められていると知ったこと。そこからだ。食べ物との関係が変わった。好き嫌いが多かったが、何でも食べるようになった。

この時は日本語で話した。でも後から英語でもこの話をしようとしたら、うまくできなかったという。それまで「いただきます」を英訳するなら「Let's eat」だった。でも「命をいただく」なんて、そんな深い意味があったのか。こうなると、ぴったり当てはまる英訳も思いつかなかった。

「日本語を通じて日本文化の世界観に触れた。家に例えるなら文化は目に見える窓やドアで、世界観は土台。そこまで深く知ることで初めて分かることがある」。クレシーニさんの場合、今では頭の中でも日本語で考えている。日本語だと人格が変わるね、と言われる。

言語学者の故・金田一春彦は1988年の著書『日本語 新版』で、日本語ほど国籍と使用者が一致するのは世界でも珍しい、と指摘した。日本語=日本国の言語=日本人という見方ができるという。クレシーニさんは、その境界はあいまいになってきていると感じている。「日本語は日本生まれ、日本育ちの『日本人』のみのものじゃなくなりつつある」。その先にどんな変化が生まれるのか。学者としても注視している。