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【1分でわかる】オーストラリア発の「16禁」 世界初のSNS規制が投げかける問い

1分でわかる○○ 更新日: 公開日:
オーストラリアの首都キャンベラで11月5日、6年生の児童と話すアルバニージ首相=ロイター

オーストラリア政府が「16歳未満のSNS利用禁止」という規制を今年12月から始めます。違反した運営企業には罰金も科すという、国レベルでは世界初の試みです。「子どもの安全を守るため」と言いますが、本当に効果はあるのでしょうか? 専門家は「抜け穴はあるが、議論すること自体に意味がある」と指摘します。日本にも無関係ではない「SNSとの付き合い方」について、その本質を解説します。

この記事は、朝日新聞(デジタル版)の連載「今さら聞けない」で、2024年11月19日に配信された記事を再構成してお届けします。本編はこちらから

ざっくり要点

1.  豪州が16歳未満のSNS利用禁止へ。違反業者には罰金の厳しい措置
2.  SNSは「依存」で稼ぐ仕組み 若者への悪影響が世界で問題視されている
3.  抜け穴はいくらでもある。それでも、リスクを社会で議論することに意義がある
4.  単なる禁止ではなく、学校でのメディアリテラシー教育との連携が鍵

もっと知りたい

1, なぜ今、規制なのか

2000年代の普及当初、若者のSNS利用について世間は好意的に評価していました。しかし、10年代後半からは偽情報の拡散や「依存」などのネガティブな面が指摘されるようになりました。運営するプラットフォーム企業は広告収益のため、ユーザーを少しでも長く滞在させようと依存させる仕組みを作っています。公共の場としての性質と、企業の利益追求という矛盾した性質を持つSNSを若者がどう使うべきか、今こそ徹底的な議論が必要とされています。

2, 「抜け穴」と本当の狙い

専門家は、規制をしても年齢認証などの「抜け穴」は避けられないと見ています。ユーザー自身が規制を回避しようとすれば、技術的に完全に防ぐのは難しいからです。しかし、法整備の過程で社会全体が議論することには大きな意味があります。若者自身がSNSのリスクを認識し、自分で判断して利用を控えるような「自主規制」を促す効果が期待できるからです。

3, 「表現の自由」への心配は?

民主主義の国では表現の自由という観点から、情報のアクセス制限には慎重であるべきです。その点でも、オーストラリアのSNS規制は、子どもの安全を守るための新たな挑戦といえます。単に年齢で区切るだけでなく、「16歳まで待つことでどうリスクが減るのか」という説明が不可欠でしょう。SNSが「解禁」される16歳になるまでに、情報を正しく読み解く「メディアリテラシー」をどう身につけさせるか、学校教育とセットでの議論が求められます。

4,  世界の動きと日本の課題

日本では2020年にパワハラ防止法が施行され、企業に防止策を義務付けていますが、罰則規定はありません。一方、フランスでは刑法で処罰対象となり、違反すれば禁錮や罰金が科されます。ただ、世界的に見ても、罰則規定は一般的ではなく、対応は国ごとに異なります。

記者のひとこと

プラットフォーム企業の所在地は米国だけでなくTikTokの中国などと多様化しており、国際的な規制の足並みは揃っていません。これは現在の国際関係のリアルを反映しているとも言えます。日本でも若者のSNS依存は課題となっています。世界の動きを対岸の火事とせず、日本でも依存リスクや対策について深く話し合うきっかけにするべきでしょう。