【1分でわかる】インドが「バーラト」になる日は来るのか? 国名変更騒動の深いワケ
この記事は、朝日新聞(デジタル版)の連載「今さら聞けない」で、2023年9月10日に配信された記事を再構成してお届けします。本編はこちらから
1, 国名表記が変わった衝撃
2023年の主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の公式晩餐会を主催したインドのムルム大統領が、各国への招待状で自らを、「インド大統領」ではなく「バーラト大統領」と称し、注目された。バーラト(Bharat)という呼び方はヒンディー語など主要言語で、インドの自称として広く使われ、憲法にも記されているが、外交の場で公に使われた例は極めて少ないとみられる。
2, 歴史的な呼び方を見直す
モディ政権のもとでは都市名や地名を歴史的な呼び方に戻す動きが進んでいたが、国名を変えるのは異例だ。これは2024年の総選挙を意識した“世論探り”でもあり、国民や国際社会の反応によっては変更が検討される可能性もある、と指摘された。
3, 選挙と宗教にも関係
背景には、ヒンドゥー至上主義的と指摘されるモディ政権と、野党連合「INDIA(インディア)との対立があった。モディ首相は選挙で勝つための作戦の一つとして国名を新たなイメージにし、植民地支配やイスラム王朝の歴史から距離を置く象徴にしたかったのではないか。
4, 生活への影響と課題
もし正式な国名がインドからバーラトになれば、航空会社などが企業名を変える必要がでてきて混乱が起きるかもしれないし、社会の中で賛否が割れて摩擦が生じる心配もある。そもそも政権の人気は物価高など生活課題にも左右されている。国名を変えたからといって国民生活がすぐに良くなるわけではない。
「バーラト」という呼び方はまったく新しく出てきたわけではなく、昔から存在していました。しかし、政治や国民感情の事情が絡んで、最近フォーカスされています。実際、大阪・関西万博のインド館では、「India(インド)」ではなく「バーラト」が使われました。とはいえ、国際会議や外交の場ではまだ「インド」のほうがメイン。今回のモディ首相の来日でも、日本はいつもどおり「インド」として首相を迎えました。