ラーメンも怖くない? 熊本発トイメディカルの減塩革命、スタートアップW杯九州予選

スタートアップワールドカップは、米シリコンバレーを拠点にスタートアップ企業への投資を手がける「ペガサス・テック・ベンチャーズ」(アニス・ウッザマン創設者兼CEO)が2017年から主催し、毎年3万社以上のスタートアップ企業がエントリーする。
7回目の今回は、世界100以上の国と地域で予選が行われ、日本では九州(熊本)、東京(7月18日)、東北(8月22日、仙台)の3地域で予定。各予選を勝ち抜いて出場する世界決勝戦でチャンピオンになれば、100万ドル(約1億5000万円)の出資を受けることができる。
5月23日に熊本城ホールで開かれた九州予選では、現地とオンラインで約2000人が観戦する中、書類審査を経た10社の代表が登壇し、自社の技術やビジネスモデルを3分30秒の枠内でプレゼンテーションした。
審査員10人と観客の投票による審査の結果、熊本発の「トイメディカル」社(熊本市南区、社員数14人)が1位に選ばれた。
同社は大学との共同研究で、食事に含まれる塩分を吸着する食物繊維(アルギン酸)を活用して体内の「排塩」をうながす技術を開発。その技術を応用して、味を大きく変えずに塩分吸収を抑える食品素材やサプリメントを開発するなど、拡大が見込まれる健康保健や食品産業での事業プランが高く評価された。
優勝を受けて、竹下社長は「うれしいの一言です。世界中の人々に食事をするときに罪悪感なく、笑顔でおいしいものを食べてほしい。そんな世界に通じる事業だと我々は考えています。サンフランシスコの決勝戦でもしっかりプレゼンし、世界に広げていきたいです」と述べた。
トイメディカル社は、東京、東北の両予選で選ばれる2社とともに、日本代表として決勝戦(10月15~17日、米サンフランシスコ)に出場する。
竹下氏の九州予選プレゼンの主な内容は以下の通り。
こんにちは皆様、きょうのお昼ごはん、何を食べましたか? そして、そのお昼ごはんにどのぐらいの塩分が入っているか、分かっている方いらっしゃるでしょうか? いないですよね、きっと。
でも、これはとても大事なことなんです。WHO(世界保健機関)によると、1日に塩分を5グラム以上摂取し続けると、心疾患と脳卒中になる可能性が大きく上昇します。
そして、年間約1500万人がこの二つの病気で亡くなっており、世界の死因の中でも圧倒的に高い割合を占めています。にもかかわらず、世界のほとんどの人はこの量をはるかに超える塩分を摂取し、自らの健康を害しています。
でも、私たちの食習慣や食文化などを考えると、減塩を続けるのはなかなか難しいですよね。何よりおいしいものを食べたいじゃないですか。
そこで、我々は減塩に替わる、新しいアプローチを検討してきました。日本古来の海藻食文化にそのヒントを得たのです。
なぜ、みそ汁にワカメが入っているのか。じつはワカメに含まれるある成分がみそ汁をまろやかにしてくれるのです。それがアルギン酸です。
これは海藻のぬめり成分ですが、塩分を化学的に吸着する性質があることが分かっています。ただ、海藻を食べるだけでは、その効果はなかなか実現できません。
そこで我々は、そのアルギン酸の塩分吸着効果を最大限に発揮する配合をずっと検討してきました。そして、アルギン酸独自の粘性を抑えるコーティングを施すことで、食品として様々に使用できる機能性アルギン酸を、5年の歳月をかけて開発しました。
この機能性アルギン酸が体内で塩分と結合することで、アルギン酸ナトリウムという物質になり、ナトリウムを体外に排出します。つまり、減塩するのではなく、塩分をオフセットすることで、その摂取を抑えることに成功しました。
この技術をすでに調味料などのプロダクトに実装しています。様々な食品において食品メーカーと一緒に実装を続けています。皆さんがおいしい料理を食べても、塩分を気にしなくていい日がやってくるんです。
我々の技術は世界の減塩食品市場において、まさに真のゲームチェンジャーになれる可能性を秘めていると確信しています。
そして、我々が世界の大きな市場にのぞむとき、原料となる海藻を養殖し「海藻の森」を育むことも検討しています。
我々は世界の健康に大きく寄与していきます。健康もおいしさもあきらめない、そして、世界の人々が笑って暮らせる社会をつくっていきたい。それが我々のスローガンです。