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半導体、乳がん診断、EV、宇宙船…ユニークな企業が登壇 スタートアップW杯九州予選

スタートアップワールドカップ 更新日: 公開日:
スタートアップワールドカップ九州予選に出場した起業家ら
スタートアップワールドカップ九州予選に出場した起業家ら=2024年8月27日、熊本市、関根和弘撮影

スタートアップ(新興企業)が自社の強みや有望性などをプレゼンテーションして競い合う世界的なピッチコンテスト「スタートアップワールドカップ」(ペガサス・テック・ベンチャーズ主催)で、初の開催となった九州予選(8月27日)を制したのは地元の創薬スタートアップ「StapleBio(ステープルバイオ)」(本社・熊本市中央区)だったが、出場したほかの10社もユニークな事業を紹介し、接戦の様相を呈した。それぞれのプレゼンを紹介する。(発表順、かっこ内は登壇者)
スタートアップワールドカップ九州予選で1位となったStapleBioの勝田陽介取締役CSO(最高科学責任者)
スタートアップワールドカップ九州予選で1位となったStapleBioの勝田陽介取締役CSO(最高科学責任者)=2024年8月27日、熊本市、関根和弘撮影

株式会社フツパー(大西洋・代表取締役兼CEO)

製造業の人手不足を解決するAIサービスを提供しています。製造業のほとんどの会社が人手不足で悩んでいて、ここをテクノロジーで解決していくのが最も重要です。メインのサービスは、外観検査の自動化ができるAIサービスを提供しています。具体的なユースケースは、生産ラインを流れているようなものを全数、目視の代わりにカメラを使って検品し、不良品が出たときにはそれを自動で排出するところまで、完全自動化します。

フツパーの大西洋・代表取締役兼CEO
フツパーの大西洋・代表取締役兼CEO=2024年8月27日、熊本市、関根和弘撮影

F.MED株式会社(下村景太・代表取締役CEO)

マイクロサージャリーとは顕微鏡を用いた手術のテクニックを指します。例えば直径1ミリ程度の血管などを縫ったり切ったりする、非常に繊細さと慎重さが要求される技術です。しかし技術的な課題があります。細かな作業のときに発生する手の震えを制御しつつ、正確に器具を操作することは非常に困難で、医師も同様で、習得には数年間、修練にいそしむ必要があります。実施できる医師が限られます。この課題に対し、私たちはロボットで解決することを目指します。ロボット本体に搭載されたビデオ型顕微鏡の映像を見ながら、医師が操縦桿(かん)を操作すると、その入力を忠実かつ手ぶれを制御して、なおかつ動作を縮小化して再現します。

F.MEDの下村景太・代表取締役CEO
F.MEDの下村景太・代表取締役CEO=2024年8月27日、熊本市、関根和弘撮影

ArchiTek株式会社(高田周一・代表取締役兼CEO)

クラウドはいろんなサービスが受けられますが、データはクラウドに吸い取られています。個人情報の問題などがありますが、ジャブジャブ電気を使うことも問題です。そこで対極的に、クラウド側にではなく、エッジ(端末機器)の方にデータをため、分散したデータを集めてリアルタイムに可視化するエッジコンピューティングが望まれています。我々はエッジのAIチップを作ることをミッションにしています。しかし非常に難しく、機能や性能、電力すべてを満足しないといけません。我々は特許を持っており、そうした問題をクリアしています。

ArchiTekの高田周一・代表取締役兼CEO
ArchiTekの高田周一・代表取締役兼CEO=2024年8月27日、熊本市、関根和弘撮影

株式会社Lily MedTech(東隆・代表取締役/CTO)

乳がんは早期発見が非常に重要な病気で、死の減少や治療後のQOL(Quality of life、生活の質)の向上という意味では早く見つけることが非常に重要で、検診が大事です。しかし、受診する人が必ずしも多くなっていない上、せっかく受診してもマンモグラフィーで見つかる人が少ないため、その結果として、必ずしも多くのがんが検診で見つかっていません。(検査側で)熟練した人を十分確保できてないということも課題になっています。様々な課題に対して、我々は東大発の技術を使って、乳房用画像診断装置、COCOLY(ココリー)を開発しました。臨床試験ではマンモグラフィーと比べて弊社の装置の方が(精度が)十分高いことが示されています。

Lily MedTechの東隆・代表取締役/CTO
Lily MedTechの東隆・代表取締役/CTO=2024年8月27日、熊本市、関根和弘撮影

株式会社エニキャリ(小嵜秀信・代表取締役)

物流DXの会社です。取り組むのは二つの柱です。一つは配送の可視化、もう一つは配送リソースの可視化です。配送の可視化ですが、私達のシステムを使えば、どの配達員が何の荷物を持ってどこに向かい、何時何分に到着するのかが、GPSとセットで可視化されます。配送リソースの可視化については、例えば町中にはたくさんのリソースがあります。軽貨物のドライバー、フードデリバリーや新聞配達員。これらのリソース、実は100%稼働しているわけでなく、一定の「空き」があります。この「空き」リソース、今まで目に見えませんでした。それを私達のシステムが可視化しました。それにより、荷物を運びたい荷主企業が我々のシステムを使うことで日本最大級の配送ネットワークを使って配送ができます。

エニキャリの小嵜秀信・代表取締役
エニキャリの小嵜秀信・代表取締役=2024年8月27日、熊本市、関根和弘撮影

Terra Charge株式会社(酒井良成・執行役員)

EVの充電器の設置から保守管理運営までを行っています。充電器というのは基礎充電、目的地充電、経路充電とそれぞれ分かれています。基礎充電は自宅充電や職場での長時間の充電、目的地充電はホテルや商業施設での中時間の充電、経路充電は急速充電器による短時間の充電、ガソリンスタンドのようなイメージです。つまり充電器は種別も違えばオーナーが求めるサービスも全然違うのですが、我々は全ての充電器を扱っているというのが競合他社に比べて大きな違いです。

Terra Chargeの酒井良成・執行役員
Terra Chargeの酒井良成・執行役員=2024年8月27日、熊本市、関根和弘撮影

WAmazing株式会社(加藤史子・代表取締役CEO)

インバウンドスタートアップです。インバウンド市場は、2019年のコロナ禍前は4.8兆円あり、このうち一番大きな費用は買い物代で1.7兆円でした。さらにこの1.7兆円のうちの1兆761億円、これが消費税が免税された価格で販売されていました。つまり外国人は10%安く買えるんですね。しかし、はんこ、紙、行列…(手続きは)非常にアナログです。法律で手続きが決まっているからです。2021年に消費税法の改正があり、免税販売の完全電子化、今まで対面でやっていた手続きを機械でやってもいいと制度が変わりました。我々は商機と考え、インバウンド旅行者が免税手続きできる日本初の自動販売機を開発し、すでに主要なすべての空港に設置しています。

WAmazingの加藤史子・代表取締役CEO
WAmazingの加藤史子・代表取締役CEO=2024年8月27日、熊本市、関根和弘撮影

株式会社トヨコー(豊澤一晃・代表取締役CEO)

レーザー工事という新市場の創出に向けて取り組んでいます。世界各地で落橋事故が多発しておりまして、多くの方が犠牲となっております。原因はさびによる腐食で、砂を高速でぶつける「サンドブラスト」という技法でさび取りの作業を行っていますが、これがとてつもなく3K仕事で、担い手が年々減っています。作業の過程で大量のCO2が排出します。これらを解決するために我々はレーザーを開発しました。昨年度には販売を開始しまして、メイドイン浜松です。世界でも圧倒的な出力を武器に、吸引しながら、早く、きれいに、クリーンな環境で作業が行えます。リベットなどの複雑形状にも対応でき、元のきれいな鋼材の表面状態にすることが可能になります。この技術は三つの課題を解決します。一つ目、光のため二次産廃物が全く出ません。二つ目。光のため、反力がなく、作業員の負担を大幅に軽減します。三つ目。他工法ではできなかった塩分の除去もきっちりできるので、さびの再発を防ぎます。

トヨコーの豊澤一晃・代表取締役CEO
トヨコーの豊澤一晃・代表取締役CEO=2024年8月27日、熊本市、関根和弘撮影

PDエアロスペース株式会社(緒川修治・代表取締役社長)

我々は宇宙輸送に技術革新を持ち込み、宇宙利用の促進、人類の宇宙進出を加速させていきます。従来のロケットは垂直に上がって2段、3段と分離して、最後に人工衛星を宇宙に放出します。我々の機体は、翼を持って水平に離発着できる飛行機のような宇宙飛行できる「スペースプレーン」です。これは一般の空港から離発着できます。空中で分離せずにそのまま宇宙空間に到達し、人工衛星を放出、あるいは宇宙ステーションにドッキングして物資を持って、また地球に帰ってきます。そのとき、スペースシャトルのように1回の着陸のチャンスが1回だけでなく、途中でエンジンを再着火させて、地上に降りる手前で空中で待機したり、着陸のやり直しがきく仕組みです。

PDエアロスペースの緒川修治・代表取締役社長
PDエアロスペースの緒川修治・代表取締役社長=2024年8月27日、熊本市、関根和弘撮影

株式会社FOMM(鶴巻日出夫・代表取締役)

我々は脱炭素、貧困の根絶を掲げ、日本でコンパクトEVの開発を行い、タイで量産化を進めています。(東日本大)震災のとき、車で逃げて、渋滞し、津波で亡くなられたのが約700人。こういった水害が多発しています。水に浮いて移動できるコンパクトEVの開発を目指して起業、2019年4月にタイでFOMM ONEの型式認定を取得し、生産、販売を行っています。世界で自動車保有台数は約15億台、世界人口81億に対して単純計算で19%の人が自動車を所有できていますが、自動車はまだ「高嶺の花」で、構造がシンプルなEVは普及する可能性ありますけど、高価なバッテリーをたくさん積んでいる現在のEVは安くできません。我々は日本の宝である軽自動車を革新して、世界中に提供します。インホイールモーターを使えば、大きさが限られている軽自動車でも知財を広く使え、我々の特許技術を使えば、「その場展開」「横に動く」ことが可能になります。

FOMMの鶴巻日出夫・代表取締役
FOMMの鶴巻日出夫・代表取締役=2024年8月27日、熊本市、関根和弘撮影