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米国流結婚式の最新事情 宗教色なしでQRコードと「極小のぜいたく」がトレンドに

ニューヨークタイムズ 世界の話題 更新日: 公開日:
2025年の結婚式では大胆な色彩の花が目立つようになってきた
2025年の結婚式では大胆な色彩の花が目立つようになってきた=KetaNuva Photography via The New York Times/©The New York Times

結婚式のあり方は、変わり続けている。専用のハッシュタグ作りは、もう一時期ほどひんぱんには見られない。新郎新婦に付き添う顔ぶれには、ジェンダーの多様性が反映されることが多くなった。カップルの誓いの言葉も、祭壇ではなく、手作り感が漂う場で交わされることが増えた。不意打ちでプロポーズする時代は、もうとっくに過ぎ去っている。

式の費用が上がり続ける中で個性をどう打ち出すか、新しい方法を求めるカップルの模索は続く。2025年の結婚式で招待客はどんな演出を期待できるのか。それを企画するカップルが注意すべき点は何か。専門家に聞いてみることにした。

式場の装飾やファッションから、出される料理や婚礼を進める司式者に至るまで、その回答は2025年の傾向をうかがわせてくれる。

QRコードが増えそう

ニューヨークで礼儀作法のコンサルティング会社「ボーモン・エチケット(Beaumont Etiquette)」を営むマイカ・マイヤーは2023年12月、ボストン近郊であった友人の結婚式に出かけた。披露宴では、どのテーブルにもQRコードが置いてあった。これまでの式では、見たことがなかった。招待客が式の間に撮った写真をアップロードする送り先として、新郎新婦が用意したものだった。

結局は、このQRコードを使った人はだれもいなかった、と式後に新郎新婦は打ち明けた。あまりに新し過ぎて、用途をだれも理解できなかったからだろう。しかし、翌年になると、自分の顧客の数人がそれぞれの結婚式にQRコードを利用していることに気づいた。

この流行は招待客が使うか否かにかかわらず、2025年には本格化しそうだとマイヤーは見る。とても便利だからだ。披露宴での新郎新婦の最初のダンスやさまざまなスピーチの場面、あるいは気づかれないようにそっと撮った一コマをアップロードしさえすれば、それがアルバムになる。新郎新婦はビデオを含めたすべての画像を、一目で簡単に見ることができる。

こうしたQRコードは、披露宴のメニューを記したカードの裏や座席札、自分の席を示すテーブルの名札に刷られていることが多い。

極小のぜいたく

披露宴のメニューに特別な一品を加えられないか。そう思うカップルが少なからずいることに、ニコール・ヘルナンデスは気づくようになった。

フィラデルフィアやマイアミなどの都市でケータリング業を営む「コンステレーション・カリナリー・グループ(Constellation Culinary Group)」の営業担当副社長だ。「みんな、いろいろ経験している。ミシュランに紹介されている料理の何たるかを彼らは知っている。それを自分たちの披露宴でも味わってもらいたいのだが、全品がそうである必要はない」

そんなカップルは、傑出した一品にはお金を惜しまない。だから、「『極小のぜいたく』と呼ぶことにしている」とヘルナンデス。「うんと小さいけれど、『ミシュラン』を味わえるという意味で」

「極小のぜいたく」には一口で食べられるキャビアや植物性の食材を中心にした小皿料理などが含まれる。そうした飲食物やデザートは、ゲストが着席している場合はウェーターが配る。あるいは別にコーナーを設け、取りにいってもらうようにする。

結婚式でキャビアをふるまうコーナー
結婚式でキャビアをふるまうコーナー。メニューには「極小のぜいたく」も加えられるようになってきた=Constellation Culinary Group via The New York Times/©The New York Times

婚礼の進行役は家族や親友

2025年に米国で挙式する約6千組を対象に、オンライン婚礼サービス会社の「ゾラ(Zola)」が行った年次調査の結果がここにある。それによると、回答者のうち61%が司式者には家族や親友になってもらうと答え、前年より9ポイントも増えた。

これは、式に手作り感を加えるのに最も人気があるやり方の一つだとアリソン・カルマンは指摘する。ゾラのブランドマーケティング兼戦略担当副社長だ。「司式者が自分たちのことをよく知っているので、そのカップル独自の話題や結びつきを織り込みやすくなる」

さらに、今回の調査では32%が宗教色のない挙式を考えていることが分かった、とカルマンはいい添える。「だから、宗教を離れても、特別な思いが宿るようにしたいというカップルの願いをかなえることにもなる」

思い切りおかしく

自分たちの関係のおかしな部分をこの際にさらけ出して、招待客に楽しんでもらおう。そんな趣向が顧客の間で増えている、といってエリザベス・クレイマーは笑う。結婚式の企画コンサルタント業をオレゴン州ポートランドで営んでいる。

ゾラの調査によると、2025年の結婚式にかかる費用は、平均的なところで披露宴を含めて3万6千ドル(1ドル=156円換算で約560万円)。これだけの費用をかけるなら、少しは面白おかしく楽しむのもいいだろうという論法になる。

結婚式や披露宴というお祝いの場としてはフォーマルではないかもしれないし、伝統的な意味でのエレガントさには欠けるかもしれない。でも、カップルにとっては大きな意味があるので、ちょっとしたおふざけを楽しもうという人たちがいる、と2016年から結婚式の企画をしているクレイマーは語る。

担当するカップルのうち2025年に式を挙げる一組はゲームに熱中しており、ゲームルームをいくつか式場につくることにしている。

組み立て玩具でつくった花嫁、花婿の人形と結婚指輪など
組み立て玩具でつくった花嫁、花婿の人形と結婚指輪など。結婚式ではカップルの面白おかしなところを祝福してもらう趣向も増えてきた=Nadia Padzensky/Venture Ever After via The New York Times/©The New York Times

幕を使って劇的な効果を

ニューヨークのウェディング企画会社「イェスミン・イベンツ(Yesmin Events)」の創立者アイシャ・ジャラルは、手の込んだ幕の活用を望むカップルが増えたと感じている。

幕そのものは結婚式では長らく使われてきた。ステージの上や部屋をおおうことが多かった。しかし、新たに増えている使い方は、「エッ」と思わせる劇的な効果を狙うところが違う。式場の入り口部分をトンネルのように囲う。あるいは、天井から垂らし、テントでの結婚式のようにしてしまう。

「より高く、もう少しドラマチックに、より動きを加える」とジャラルは説明する。「結婚式の演出は、それほど大がかりになっている。幕を使えば、多くの質感や動き、立体感がもたらされる」

花と果実の彫刻

「結婚式は、芸術作品の展示場のようになってきている」とニューヨーク・ブルックリンにある結婚式の企画会社「ジョーブ・マイヤー・イベンツ(Jove Meyer Events)」のオーナー、ジョーブ・マイヤーはいう。

幕による劇的な演出もさることながら、マイヤーも先のジャラルも最近は彫刻のように花を飾ることが増えているのに気づいている(ちなみに、二人はいずれも婚約中だ)。結婚式の花といえば、淡い色彩のバラやアジサイを思い浮かべがちだが、ジャラルは、より大胆な色や個性的な花の人気が高まってきたと見ている。たとえばアンスリウム(訳注=熱帯産の鉢花)やフリンジ咲きのチューリップ(訳注=花びらの先が細かく波打っている)だ。

「2025年から翌2026年には、果物や野菜を立体的な芸術作品のように仕上げ、花は最小限しかあしらわないというのがカップルの好みになってくるように思える」とマイヤーは分析する。従来のしきたりを離れ、新しさを模索している、とその目には映る。

緑への愛着

ゾラの調査によると、2025年の結婚式で最も人気のある色は緑だ。カップルの11%が、セージ色(訳注=グレーがかったやさしい黄緑色)を式の基調にしたいと答えている。ほかにも、ハンターグリーンやエメラルド色、フォレストグリーン、オリーブ色といった緑系の色合いがよく好まれている。

「屋外の結婚式は非常に人気が高く、緑はその風景によく映える『中立的な色』であることを物語っている」とゾラの副社長カルマンは説明する。

鉢植えの花や樹木、多肉植物も人気だ、とオレゴン州のウェディングコンサルタント、クレイマーは付け加える。「緑豊かな空間を作りたいという願望が込められているのだと思う」。こうした植物をレンタルで調達すれば、式後に捨てられてしまう花に大金をつぎ込む必要もなくなる。

年代ものへの郷愁

結婚業界では、2025年にはかなり多くの流行が出てくるだろう。一方で、古きものへの郷愁も見逃せないとリンゼー・ミックスは指摘する。花嫁の介添人用の衣装とウェディングドレスを売る専門店「パーク&フィフス(Park&Fifth)」の販売部門の責任者だ。

最近気づいたのは、多くのカップルが挙式用の衣装にビンテージものの靴やアクセサリーを組み合わせていることだった。リサイクルショップのようなところで買っているのかもしれないが、このところのセレブリティーたちのレトロな流行と重なり合う現象だと思うようになった。

「どこかの保管庫から抜け出てきたような靴が添えられ、純白なドレスにとてもよく合っているのを見ると、すごく素敵だと思う」とミックス。「だから、結婚式の衣装には新品とビンテージが入り交じるようになるだろう」(抄訳、敬称略)

(Sadiba Hasan)©2025 The New York Times

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