世界中で中国にしか生息しないパンダ。飼育のノウハウも科学的知見も、すべての情報を中国が一手に握っています。パンダ研究の最先端である一方、「管理」を強める姿勢には批判の声もあるようです。
世界のパンダは、中国語で「譜系号」と呼ばれるID番号を持っている。ホワホワなら1237番、シャンシャンなら1070番。血筋を明らかにして近親婚を防ぎ、繁殖に最適な相手を選ぶのが主な目的だ。繁殖基地も増やしており、北京でも2025年に新たに開園する。世界で飼育されているパンダは757頭(2024年)と過去20年間で4.5倍に増えた。大半が中国にいる。
中国国家林業・草原局は1974年から約10年ごとに野生パンダの実態を調査している。直近の2015年で1864頭。絶滅が危惧された1980年代より7割増えた。現在第5次調査中だ。
中国政府は2021年にパンダ国立公園として、四川省、甘粛省、陝西省の2.2万平方キロメートルを保護地域にした。日本の四国より2割も広く、野生の生息域の7割以上をカバーする。パンダの保護を広げることは、自然環境全体の保護につながるとの位置付けだ。
同局によると、中国は生物学や遺伝学などの領域で、パンダに関わる100件以上の特許を取得した。扱う個体数が圧倒的に多く、比較もできる。ある調査によれば、幼少期に母親と過ごす時間が長いオスほど、成熟後に自然交配の成功率が高いそうだ。世界中の貸出先から情報も集まる。前上野動物園長の土居利光さんは「パンダ研究の最先端は文句なしに中国」と言う。
飼育下で生まれたパンダを野生へ返す取り組みも2003年から本格的に始まった。人間への依存を減らすため、飼育員がパンダの着ぐるみをかぶって接することもある。それでも、飼育施設での生活を懐かしがって戻ってきたり、厳しい生存競争を勝ち抜けず死んだりする場合もある。これまで野生で定着したとみられた12頭のうち、生存が確認されているのは10頭。中国が技術に強みを持つ監視システムやAIをいかしたモニタリングも実施している。
中国国外にいるパンダの保護監督も強める方針。もっとも中国側が情報を一手に握るだけに、外国の動物園が支払う「レンタル料」の使途を含めて「不透明」(米ニューヨーク・タイムズ紙)とする批判もある。
パンダのトリビア、あなたはいくつ知っていますか?