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王室離脱のメーガン妃、今も強い影響力 推しブランド人気急上昇「人生の新たな一章」

ニューヨークタイムズ 世界の話題 更新日: 公開日:
メーガン妃とキャサリン妃
2018年7月15日、そろって観戦し選手らの健闘をたたえる(前列右から)メーガン妃とキャサリン妃=英ウィンブルドン

英王子ハリー(サセックス公爵)と妻のメーガンがロンドンから米カリフォルニア州に移住し、多くのことが変わった。

夫妻は、「英王室は一枚岩」という神話を吹き飛ばした。その後、2人目の子どもをもうけ、米テレビ司会者のオプラ・ウィンフリーのインタビューに応じた。さらに、自分たち自身についてのドキュメンタリー作りに参加し、タブロイド紙の餌食にもなった。見方によっては偏狭で人種差別的な体制と闘う勇者ともいえるし、自分勝手なペテン師といえるかもしれない。

しかし、そのすべてを通じて確かなことがある。メーガンの商品に対する広告・宣伝力が極めて高いまま保たれていることだ。だから、2020年には自分の好みにあったところに投資することを決めた。そして、主に女性が経営するいくつかの企業に少額の投資を始めた。

その最新の対象が、高級なバスケットバッグを販売する「Cesta Collective(セスタコレクティブ:以下、セスタ)」(訳注=米国のファッション業界で活動する女性2人がニューヨークで立ち上げたブランド)だ。アフリカ・ルワンダの女性の職人たちが手で編み、イタリアで仕上げている。そのブランドを、メーガンはオンラインショッピングをしながら見つけた。

英王子ハリーの妻メーガンが投資するセスタコレクティブが生産・販売する高級バスケットバッグの一つ
英王子ハリーの妻メーガンが投資するセスタコレクティブが生産・販売する高級バスケットバッグの一つ=Jonathan Dee via The New York Times/©The New York Times

「グーグル検索でブランドを探すのに、かなりの時間をかけている」。米カリフォルニア州モンテシートの自宅からの電話でメーガンは2024年8月、こう語った。ハリーとともに、南米コロンビア訪問から戻ったばかりだった。「人々がネットで探しものをしたり、何かを読んだりしているときに、私はすばらしいデザイナーを新たに見つけようとしている。とくに、これまでとは違う地域で」

メーガンがセスタのバッグとともに公の場に現れたのは、2023年5月のことだった。夫ハリーと米俳優のキャメロン・ディアス夫妻、グウィネス・パルトロー夫妻とともにディナーに出かけたときだ。

その後、このバッグを持つメーガンの写真が拡散した。すると、たちまち関心が高まったのに気づいた、とセスタの共同創業者エリン・ライダーとコートニー・ウェインブラット・ファシャーノは話す。

「ちょうどファッションカタログの撮影のために、メキシコに向かっているところだった」とライダーは振り返る。「飛行機を降り、インターネットに接続すると、いささか売れ行きの鈍かったこの商品が突如として完売になっていた。しかも、『入荷待ち』の申し込みがたくさん寄せられていた。こんなにあっという間に売れるのは何か理由があるはずなので、コートニー(ファシャーノ)がインターネットで調べると理由が判明した。1日で、これまでとしては一番の売り上げとなった」

二人はメーガンにお礼の手紙を書いた。その後もつき合いが続き、2024年夏にはセスタ初の外部投資家になりたいとの申し出が本人からあった。このブランドにどれだけの資金をつぎ込んだのか、あるいは何%の株の所有権を得たのかについて、メーガンは明かさなかった。しかし、ライダーとファシャーノは、それが少額であることを認めた。

自らが何を身に着けるかがどれほど注目されているかに気づいたのは、2017年だったとメーガンはいう。ハリーと婚約して公の場に出た際、スコットランドのブランド、ストラスベリーのバッグを持っていた。11分後、そのバッグはオンラインで完売した、とこのブランドの創業者は明かす。

自分がもたらした宣伝効果と売り上げの増加がストラスベリーの雇用の拡大につながったことを知ると、「身に着けるものの選択に対する私の認識は一変した」とメーガンは語る。

役作りのために服を着るのとたいして変わらないように見えるが、ここで演じる役柄はメーガン自身だ。

「世界的な注目を浴び、私が身に着けているもの、あるいは着用していないものが細かいところまで注目されると分かっている場に出るときは、本当に深い親交のあるデザイナーと、まだ実力にふさわしい注目を受けるに至っていない新進ブランドを応援することにしている。それが私にできる最も強力な支援の一つで、イヤリングを身に着けるというような簡単なことだから」

メーガンの資金的な援助はうれしい、とファシャーノは率直に認める。でも、それにもまして、セスタというブランドに示してくれる信頼の姿勢が重要だと強調する。

セスタのフルタイム社員はライダーとファシャーノだけだ。この二人によると、年間の収益は約100万ドル(1ドル=146円換算で1億4600万円)。バッグは一つ数百ドルで、たいていは25~50個の小さな出荷単位で生産されている。一つを編み上げるのに4日間から1週間かかるが、利益率よりもきちんと品物が作られ、適正な賃金が支払われることを優先している。

セスタコレクティブのバスケットバッグ制作を担当するルワンダの女性職人たち
セスタコレクティブのバスケットバッグ制作を担当するルワンダの女性職人たち。製品はイタリアで仕上げられ、高級品になる=Jonathan Dee via The New York Times/©The New York Times

メーガンがかかわってくれることで、ライダーとファシャーノの期待は膨らむ。バッグの販売を増やすだけでなく、最終的にはほかの途上国の熟練した女性職人たちにも入ってもらい、事業の分野を広げたいと思っている。

ブランドへの投資にメーガンが関心を持ったのは、コロナ禍のときだった。ロックダウンは、パパラッチを自分の目的のために利用する機会が減ったことを意味した。

最初に投資したのは、厳格な菜食主義者向けのインスタントラテなどを作っている健康食品会社「Clevr Blends(クレバーブレンズ)」。それが今では、投資先企業として5~10社を抱えるようになったとメーガンは話す。こうした企業を、自身が立ち上げたライフスタイル・ブランド「American Riviera Orchard(アメリカン・リビエラ・オーチャード)」を補完するものとみなしている。

「外部のブランドに投資することで、自分自身に投資するという人生の新たな一章を準備することができた」とメーガンは位置づけている。

そして、米国で人気のテレビ番組「Shark Tank(サメの水槽)」(訳注=起業を志す挑戦者が、5人の企業経営者に自分の事業計画を説明し、投資を引き出そうとするリアリティー番組で、大金が動くこともある。sharkには「他人を説得して過剰なほど投資させる人」といった意味もある)を引き合いに出し、新興企業への自分のささやかな投資をこう表現した。

「私の投資は『イルカの水槽』。小さいけれど、みんな仲よく泳いでいる」(抄訳、敬称略)

(Vanessa Friedman)©2024 The New York Times

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