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女性候補を次々擁立する自民党のしたたか戦略 有権者の願望にも一致した「生存本能」

ジャパン・バロメーター 更新日: 公開日:
衆院選の東京8区で当選し、女性支援者と記念写真を撮る吉田晴美氏
衆院選の東京8区で当選し、女性支援者と記念写真を撮る吉田晴美氏(下列左から2人目)=2021年10月、東京都杉並区

第1回目のジャパン・バロメーターでは、自民党の擁立方針を「答え合わせ」するかのような結果が出た。衆院解散総選挙に向けて次々と候補を公認している自民党は、都市部を中心に女性を擁立している。たとえば、典型なのが東京8区(杉並区の大部分)だ。ここは長らく自民党の石原伸晃氏が議席を独占し続けたが、2021年の衆院選で立憲民主党の新人女性、吉田晴美氏に負けた。石原氏は比例復活もできなかった。(秋山訓子)

そして翌2022年には、杉並区長選挙で、やはり新人女性の岸本聡子氏が現職の男性に競り勝った。岸本氏は2023年の区議会選挙で女性を中心に応援、結果、過半数を女性が占めた。自民党はこうした事態を受け、経産省出身の42歳の女性を東京8区で擁立した。

先頃引退を発表した菅直人元首相(立憲民主党)のお膝元、東京18区(武蔵野、府中、小金井の3市)でも、東京都連が女性限定で公募をした。他にも丸川珠代氏が参院から鞍替えするなど、都内では女性の擁立が相次ぐ。「特に都市部で、今勝てるのは女性と若者」(自民党幹部)を、経験則的にかぎ取っているからだ。

今年4月に行われた衆参の補選でも、衆院千葉5区、衆院和歌山1区、参院大分選挙区で女性が勝った。いずれも前職は男性で、激戦とされたところだ。

自民党は、「政治の世界にも多様性が大事だから女性を増やそう」という理念を持っているのか――。いや、必ずしもそうではない。男女の候補者をできるだけ均等にするよう政党に求める「候補者男女均等法」(2018年施行)が自民党内で議論された時、所属議員からは「無理やり女性の数を増やすのは、政治家の質を下げる」「男性への逆差別だ」「女性にとっても正当な評価にならず、良くないのではないか」などの反発の声が相次いだ。

自民党議員らは「女性を増やすことに反対なのではない」と口をそろえつつも、「しかし……」となる。男性が自分の地位を脅かされるのを恐れている、ようにも見えた。それでも自民党が最近、相次いで女性を擁立するのは「生き延びる」ためだろう。

有権者が女性を好むのならば女性を擁立する。もちろん、自民党がジャパン・バロメーターの結果に基づいて擁立方針を決めているわけではない。それでも調査が示した、有権者が望む候補者像に近い人物を擁立しているのは、いかに自民党の「生存本能」がすさまじいかを物語っている。

自民党はかつて、野党として対峙し続けた社会党と連立を組んだことだってある。しぶとく、そしてしたたかなのが自民党だ。