そして翌2022年には、杉並区長選挙で、やはり新人女性の岸本聡子氏が現職の男性に競り勝った。岸本氏は2023年の区議会選挙で女性を中心に応援、結果、過半数を女性が占めた。自民党はこうした事態を受け、経産省出身の42歳の女性を東京8区で擁立した。
先頃引退を発表した菅直人元首相(立憲民主党)のお膝元、東京18区(武蔵野、府中、小金井の3市)でも、東京都連が女性限定で公募をした。他にも丸川珠代氏が参院から鞍替えするなど、都内では女性の擁立が相次ぐ。「特に都市部で、今勝てるのは女性と若者」(自民党幹部)を、経験則的にかぎ取っているからだ。
今年4月に行われた衆参の補選でも、衆院千葉5区、衆院和歌山1区、参院大分選挙区で女性が勝った。いずれも前職は男性で、激戦とされたところだ。
自民党は、「政治の世界にも多様性が大事だから女性を増やそう」という理念を持っているのか――。いや、必ずしもそうではない。男女の候補者をできるだけ均等にするよう政党に求める「候補者男女均等法」(2018年施行)が自民党内で議論された時、所属議員からは「無理やり女性の数を増やすのは、政治家の質を下げる」「男性への逆差別だ」「女性にとっても正当な評価にならず、良くないのではないか」などの反発の声が相次いだ。
自民党議員らは「女性を増やすことに反対なのではない」と口をそろえつつも、「しかし……」となる。男性が自分の地位を脅かされるのを恐れている、ようにも見えた。それでも自民党が最近、相次いで女性を擁立するのは「生き延びる」ためだろう。
有権者が女性を好むのならば女性を擁立する。もちろん、自民党がジャパン・バロメーターの結果に基づいて擁立方針を決めているわけではない。それでも調査が示した、有権者が望む候補者像に近い人物を擁立しているのは、いかに自民党の「生存本能」がすさまじいかを物語っている。
自民党はかつて、野党として対峙し続けた社会党と連立を組んだことだってある。しぶとく、そしてしたたかなのが自民党だ。