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「女性議員3割」に自民党の壁 三浦まり上智大教授に聞く「地方議会に必要なこと」

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上智大学の三浦まり教授=2023年9月、東京都内
上智大学の三浦まり教授=2023年9月、東京都内

4割目前と「ゼロワン」で二極化

今春の統一地方選では、道府県議会、市議会などで過去最多の女性候補者と当選者数となり、大躍進だと思う。熊本県議選では女性当選者が1人から5人になった。女性を増やそうという機運が社会にあることが可視化された。

ただ、二極化している。東京の区議会(葛飾区と足立区を除く21区)は約36.8%で、4年後には4割を超えそうだ。他方、女性がゼロか1人の「女性ゼロワン議会」が統一地方選前に全国で約4割にも上り、選挙後に多少減ったとは思うが、まだかなりある。

女性議員を増やすには、東京のような都市部と地方とでは違うアプローチを考えることが必要だろう。女性が増えやすい条件としては、人口の流動性があり、しがらみで投票する人が少ないことが挙げられる。

自民党が強いところは女性が少ないという法則がある。都市部では自民党が弱く、自民党以外の政党や無所属で出馬する女性が多い。だから都市部で女性が増えている。

他方、「ゼロワン」地域は男性も高齢化していて、なり手不足だったり、無投票が多かったりする。投票率は低く、地方議会の意義自体が問われている状況だ。議員を名誉職とし、先祖代々の「家」と「地域」の代表として順番でなるため、女性が出ることは難しい。

「地域の壁」壊し、景色を変えていく

そうした中、今回の統一地方選で鹿児島や岡山、香川といった女性議員が少なかった県の県議選で、女性当選者が2割を超えたのは画期的だ。

これまでは東京都を別にして、2割を超えたのは京都府だけで、神奈川県でも2割弱だった。その京都と神奈川は今回、1人も増えなかった。そこから言えるのは、2割から3割に増やすのは相当大変だということだ。自民党が与党であり続けるかぎり、3割にするのは、ほぼ無理というのが今のところの予測だ。

香川県議選で当選が確実となり、くす玉を割る植田真紀氏(左)=2023年4月9日夜、高松市仏生山町
香川県議選で当選が確実となり、くす玉を割る植田真紀氏(左)=2023年4月9日夜、高松市仏生山町

その自民党は6月、党の女性国会議員の比率を「10年で3割」とする計画を発表した。国会議員については党が公認を出す権限を持っているので、変わっていく可能性はある。

しかし道府県議会については、県連が力を持ち、保守系で自力で当選した人が2期目以降に自民党公認になる人が多い。党のトップダウンより地域のボトムアップの力のほうが強い。「地域の壁」を壊していかないと、女性が増えていかない。また、国政以上に政権交代がないので、自民党系の会派が強いかぎり女性が3割になるのは相当難しい。

ただし、市区町村議会では無所属が多く政党色がそれほど強くないので、3割、4割、5割となっていくだろう。東京も4割が普通になっていく。そういうところから景色を変えていくことは重要だ。

政党の民主化へ 有権者やメディアも怒りを

国政で女性議員が少ないことについては、公認権を持つ政党が一番重い責任を負う。個別に見た場合、議席が最も多い自民党の責任が最も重い。議席が一番多いのに女性議員は一番少ない。

なぜ自民党が変わらないのか。それは危機感があまりないからだ。女性議員を増やさなければ政権を失うかもしれない、となれば増やすだろう。女性候補者を多く擁する野党が強くなることで、与党も変わっていくことになる。

つまりは、有権者が政党について真剣に考えなければこの状況は変わらない。政権交代がないと、新しい人は入ってこないし、投票率も低いままだろう。女性や有権者、メディアが「こんな政治はおかしい」と怒って初めて変わっていくのだ。

政党をもっと民主化、現代化していこうとする流れの中で、女性や若者、マイノリティーが少ないので、もっと多様な人を選べるようなシステムにしようと改革を進めれば、女性も入りやすくなる。

女性だけの問題ではない。だれが議員になれるのかということは、民主主義にとって重要なことだ。この点をもっと議論するべきだ。