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Tバックのビキニに揺れるビーチ わいせつか、解放か 全裸禁止に対抗した歴史も

ニューヨークタイムズ 世界の話題 更新日: 公開日:
米フロリダ州のマイアミビーチでポーズを取る女性たち。GストリングスやTバックその他の小さなボトムは今日、どんな体形の女性も美しく見せるとして人気だ=2023年7月、Melody Timothee/©The New York Times

コディ・マーは数年前、ビキニのボトムが小さくなっていっていることに気づいた。「最初はチーキーカット(訳注=お尻が半分ほど出るセクシーな形状)で、次がブラジリアンカット(訳注=より大胆に布地がカットされた形状)でした」と30歳のマーは振り返る。

米フロリダ州のパームビーチ・ガーデンズで不動産業をしている。女性のお尻を覆っていた布地が小さくなっていくにつれ、彼女は自分もTバックの水着を買おうかと思い始めた。「そうね、みんながそれをはいているんだから、もうどうでもいいわ、気にしないわっていう感じでした」

妹のキャシディ(24)は1、2年前からTバックのビキニをつけ始めたが、その方が「お尻がちょっとカッコ良く見える」と思ったからだ。日焼けの線がつかないことも気に入っている。他の女性たちも同じ意見だ。「たまには落ち着かなく感じることがあります」とキャシディは言う。「でも、他の女性たちがそれをはいているのを見ると、もっと自信が持てるようになりました」

最近のGストリングスやTバックの急増は、エミリー・ラタコウスキーやキム・カーダシアン、ケンダル・ジェンナー、ケイト・ハドソンらセレブの水着スタイルによるものだという見方がある。

ム EMBARGO: NO ELECTRONIC DISTRIBUTION, WEB POSTING OR STREET SALES BEFORE 5:01 A.M. ET ON SUNDAY, JULY 16, 2023. NO EXCEPTIONS FOR ANY REASONS ム  Victoria Silva in Miami Beach, July 8, 2023. Today, G-strings, thongs, and other barely-there bottoms are embraced by women of all shapes and sizes. (Melody Timothee/The New York Times)
水着姿の女性=2023年7月、米フロリダ州マイアミビーチ、Melody Timothee/©The New York Times

「トンキニ(Tバックのビキニ)はハリウッドが好む水着です」とポップシュガー(訳注=米サンフランシスコを拠点にセレブのニュースやゴシップを扱っているサイト)は言った。ローリングストーン誌は、「TバックやGストリングス、チーキーカットがたくさん出現することを楽しみに待っている」と書いていた。

GストリングスとTバックという用語はしばしば同じ意味で使われることがあるが、実際は違うモノだ。Gストリングスにはお尻の割れ目を通る細いひもがあり、ウエストバンドにつながっている。Tバックは上部にV字状の布があり、お尻と腰の間のスペースを覆っている。ブラジリアンのボトムは露出度が高く、ハイカットで脚の部分が長く、お尻の大部分が露出する。

しかし、これらのバリエーションはいずれも一つのことに焦点が当てられている。肌である。

ビクトリアズ・シークレットやビラボンといった大手小売店は、2023年の水着コレクションの一部としてGストリングスやTバックの水着を発売している。

Tバックの起源は古い。その装いのバリエーションは世界中で繰り返し登場しているが、米国で初めて公衆の面前に登場したのはニューヨーク万国博覧会に先立つ1939年のことだった。当時のニューヨーク市長フィオレロ・ラガーディアが、パフォーマンスをするショーガールは全裸ではなく、そこを覆うようにと命じたのだ(全裸はこの時代の博覧会では一般的であると同時に、物議をかもしてもいた)。

1939年の義務化は「下品と猥褻(わいせつ)」な表現に対する同市長の闘いの一環だった。ラガーディアは1937年、ニューヨーク市全域で14のバーレスクシアター(訳注=ストリップとおふざけなどを目玉にしたバラエティーショーが売り物の劇場)の禁止を支持し、ストリップクラブは同市の歴史上初めて警察によって閉鎖された。禁止令には異議が申し立てられ、直ちにニューヨーク最高裁判所にまで持ち込まれた。バーレスククラブの弁護士たちが同市当局に営業許可の再発行を求めたものの、失敗に終わった。

数十年後、米西海岸では、肌の露出に反対する別の法的闘争が水着の革新に拍車をかけた。1974年にロサンゼルス市議会は公共の場でのヌードを禁止し、オーストリア系米国人のデザイナー、ルディ・ガーンライヒがTバックのビキニを考案することで(禁止に)対抗したのだ。

「Tバックは、社会の矛盾に対する私の回答です。ヌードが、ここにあるんです。多くの人が、裸で泳いだり日光浴をしたりしたいと願っています。一方にはまた、多くの人が公共の場でのヌードに気分を悪くしています」。1970年代、ガーンライヒはそう声明で言っていた。ヴォーグ誌によると、ガーンライヒはスタイルを考案する際、「参考としてブラジルの水着や相撲取りのまわし、ひもがT字形のサンダル」を挙げたという。

ガーンライヒが指摘したのと同じ対立は、やがてGストリングス問題を米連邦最高裁判所にまで押し上げることになった。

法廷は1991年のバーンズ対グレン・シアター社事件と、2000年のエリー市(ペンシルベニア州)対パップスA.M.の事件で、Gストリングスに関する判決を下した。両事件とも、全裸になることを望んでいたストリッパーたちは、法律でGストリングスの着用を義務付けるのは合衆国憲法修正第1条が規定する権利(訳注=言論の自由)の侵害だと主張した。

しかしながら、ニューヨーク大学の法学教授エイミー・アドラーによると、判事たちは立法の要件を支持した。「憲法修正第1条の論理的根拠の観点から、失敗と広く嘲笑されている」判決だった。

法廷は、女性のヌードを社会秩序に対する脅威とみなし、Gストリングスを「犯罪や病気、騒乱の解決策」として支持したのだとアドラーは言う。この衣服はすべて「空想と恐怖」の二面性があると彼女は指摘し、女性のセクシュアリティー(性的関心)を示すと同時に隠すものでもあるというのだ。

ム EMBARGO: NO ELECTRONIC DISTRIBUTION, WEB POSTING OR STREET SALES BEFORE 5:01 A.M. ET ON SUNDAY, JULY 16, 2023. NO EXCEPTIONS FOR ANY REASONS ム  A woman wears a black bikini top and a black G-string in Miami Beach, July 9, 2023. Today, G-strings, thongs, and other barely-there bottoms are embraced by women of all shapes and sizes. (Melody Timothee/The New York Times)
黒いビキニのトップに、黒いGストリングスのボトムをつけた女性=2023年7月、米フロリダ州マイアミビーチ、Melody Timothee/©The New York Times

ノースカロライナ州の自治体の多くは近年、露出度の高い(水着をつけた)海水浴客の増加に対処するためヌード関連法の規制や取り締まりを緩和した(サウスカロライナ州の自治体は、これまでのところ、Tバック法の撤廃を求める声が出ているにもかかわらず、ノースカロライナ州の例にならうことを拒んでいる)。

Tバックのビキニは、米国の大半の地域で合法だが、法律はまちまちだ。たとえば、フロリダ州では州内のビーチの一部を含む州立公園でのTバック水着の着用を禁じている。

法的な問題はともかく、多くの女性たちはそのスタイルが自分に合うと言っている。アトランタ出身で、2人の子どもがいるパラリーガル(法律事務員)のニッキー・サットンは、プエルトリコへの旅行に先立ちTバックのビキニを注文した。「ちょっとの間セクシーな気分」になりたかったからだと言う。体重が最近15ポンド(約6.8キロ)増えたが、Tバックにしたのは自分の体に「完全に満足」するためだと言っていた。

「それが、私にとってのTバックなのです」とサットン。「Tバックは私に力を与えてくれ、肌をより快適にしてくれます。本心かどうかは別として、私はある程度の自信を持って歩く必要があるんです」

また、このスタイルを両刃の剣と見る者もいる。「太った身体、高齢の身体、目に見える障害のある身体など、社会から疎外されている身体がある」とフロリダ国際大学で哲学を教えるセリーヌ・ルボフ助教授は言う。「その体のせいで、ほかの人たちから『着るべきでない』と言われてしまう服をあえて着ることで、解放される面もある。しかし、そうすると自己客観化というもう一方の端に落ちてしまう」

フロリダ州ボイントンビーチの医療技術者マリー・エレディア(49)は「お尻を日焼けさせる必要があった」ので、Tバックの水着をはいたと言う。彼女がTバックを最後に着用したのは20年前、(メキシコの)カンクンで休暇を過ごした時だった。現在の自分の体形を顧みながら、彼女はこう話した。「私は太っています。だから何? 子どもが2人いるんです。これが、私には自然な体形なんですよ」(抄訳)

(Mya Guarnieri)©2023 The New York Times

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