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「ミス・アメリカ」は水着姿から知性重視へ

ニューヨークタイムズ 世界の話題 更新日: 公開日:
2017年9月、露出度の高いビキニの水着で行われたミス・アメリカの水着審査。18年の大会から水着姿が不要になった=Tom Gralish/The Philadelphia Inquirer via AP

「ミス・アメリカ」の座を競う出場者たちは今年の大会から、水着姿でしなをつくって舞台を歩かなくていいことになった。ざっと100年の歴史で初めてのこと。同コンペティションの主催団体が6月5日、女性の権限強化と男女平等の時代にあって、ミスコンの役割を再定義する必要があるとして新方針を発表したのだ。

ニュージャージー州アトランティックシティーで1921年に第1回大会が開催されて以来、ミス・アメリカと水着姿は同義語であった。当初の水着は、今日から見れば控えめなワンピースだったが、その後、テレビの視聴者の目をひきつけるためにビキニ姿にハイヒールで練り歩くようになった。

今年9月の大会から水着姿を競うことをやめると発表した主催団体「ミス・アメリカ機構(MAO)」の指導部は現在、女性の役員が大半を占めている。
「『催しには参加したいけど、水着姿で歩きたくない』という若い女性たちの声をたくさん聞いてきました」と元米FOXニュースのアンカーで、MAO理事長のグレッチェン・カールソンは言う。「その思いを受け入れたんです」

MAOは、機構自体がセクハラ・スキャンダルに見舞われ、#MeToo運動も展開される中で、ここ数カ月にわたってコンペティションのふさわしいあり方を模索してきた。計9人から成るMAO理事会――このうち7人が女性――は3月、全員一致で新方針を採択した。しかし、各州レベルの理事や元ミス・アメリカたちには発表2日前まで新方針を伝えなかった。

理事長のカールソンは、元FOXニュースの最高経営責任者ロジャー・エイルズのセクハラ疑惑を2016年に告発して以来、職場における女性の権利擁護を力強く訴えてきた。ミス・アメリカ・コンペティションは参加者の才能や知性、思考力を重視して競うことになる、と彼女は言っている。

「外見をもとに判定はしません」。カールソンは米ABCテレビの番組「グッドモーニング・アメリカ(Good Morning America)」で、そう話した。彼女自身、1989年のミス・アメリカだが、「私たちはこの文化革命を前進させ、さらに進化させていきます」とも語った。

MAOの組織は、この半年の間で急速に変わった。カールソンが理事長に就任したのは1月だが、その後MAOの最高指導部に次々と女性が任命された。実は昨年12月、最高責任者だったサム・ハスクルによる元ミス・アメリカら何人かについての無礼な女性蔑視のメールが外部に流出したことが変化のきっかけだった。また、ミス・アメリカ・コンペティションの催し自体、テレビの視聴者離れが起きていることも変化を促した背景にある。

米ニュージャージー州アトランティックシティーで開かれた1981年9月の「ミス・アメリカ」の最終審査会=SARA KRULWICH/©2018 THE NEW YORK TIMES。当時はまだワンピース型の水着だった

MAOは今年初め、大手広告会社ヤング・アンド・ルビカム(Young & Rubicam)にブランド戦略の練り直しを依頼した。そこで同社はこれまでのミス・アメリカや各州レベルのボランティア、機構役員、その他の関係者らからの聞き取り調査を実施した。結果は明快だった。つまり、ミス・アメリカは現代の若い女性たちのあり方にふさわしい変革が求められているということ。同社は、過去のミス・アメリカたちが果たした職務上の実績に注目することを提案し、水着姿を競うことではない旨を示唆した。

過去何十年間にもわたり、MAOは女性の地位向上や奨学金の提供という使命と、コンペティション参加者に露出度の高い服装をさせることとをどう折り合わせるかで苦闘してきた。機構の役員たちは、すでに20年以上前から水着姿で競うことの是非について思案してきた。しかし、つい最近までそれを是とする態度が維持されていた。

今回、脱水着姿の新方針が決まったことに対し、各州のミス・アメリカ予選の機構役員からは賛否両方からの反応があった。だが、「ミス・ノースカロライナ・スカラシップページェント」の事務局長ベス・ノックスは、新方針に感激している。水着姿がどうこうより、その女性が目指す目標や願望の方がずっと大切だという。

「もし今回の新方針が決まった理由を虚心に聞けば、その前進を支持しない人はいないはずです」。ノックスは、そうメールで回答してきた。
ABCテレビで放映されるミス・アメリカ・コンペティションの視聴者は、昨年がざっと560万人で、2016年の620万人から約10%減り、15年の700万人と比べるともっと減少した。ただ、「サンデーナイト・フットボール」やオリンピック、映画のアカデミー賞、音楽のグラミー賞といったライブショーの視聴率も軒並み同じような減少傾向にある。

MAO理事長のカールソンは、観客の考えは変化したと指摘し、ミス・アメリカ・コンペティションのうち、水着姿を競う部門はそれほど視聴率を稼げるパートではないとみる。

「実際、人びとは才能を競うことの方を好んでいます」とカールソンは言っている。(抄訳)
(Matthew Haag、Cara Buckley)©2018 The New York Times

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