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『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』 カンヌで監督賞、史上2人目の女性

Cinema Critiques 映画クロスレビュー
©2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved
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映画クロスレビュー_『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』_3
ソフィア・コッポラ監督 Photo: Kishitsu Rei
映画クロスレビュー_『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ』_2
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Review01 川口敦子 評価:★★★(満点は星4つ)

コッポラ版、優雅な強さ

『ビガイルド』で第70回カンヌ国際映画祭監督賞に輝いたソフィア・コッポラは、受賞の辞でジェーン・カンピオンに感謝を捧げた。なるほどとひざを打った。女性監督と特別視する旧態依然の世の中をしり目に女性独自の感性を迷いなく追究する先達カンピオン、その名を挙げたコッポラ自身の映画もまさに女性の眼をくっきりと刻み続けているからだ。

その意味では同じ原作に基づくドン・シーゲル監督作『白い肌の異常な夜』と『ビガイルド』とを見比べてみるのも興味深い。南北戦争末期、南部の女子寄宿学校にかくまわれ、女の園の囚人と化す北軍負傷兵。その恐怖を、シーゲル版は彼の主観ショットを交えてどぎつく切り取っていく。女たちの抑圧された性的欲望の対象となる男は、クモの巣にからめ捕られた美しい蝶とも見え、男女の力関係の倒錯を若き日のクリント・イーストウッドのやさ男ぶりが効果的に裏打ちする。

かたやコッポラ版は負傷兵が巻き起こす女同士の関係の揺れにこそ目をこらす。兵士を囲む食卓でのたわいない会話にたくし込まれる見栄や嫉妬。くすくす笑いや小さな仕種が同性だけに感知し得る意味を含んで、変わりなくみえる世界を震わせる。そんな瀟洒な怖さ。やがて女たちは風と共に去った美しい世界の秩序を死守せんと扉を閉ざし自らを囲い込む。万人、とりわけ異性には理解し難そうな彼女たちの最後の選択を敢然と示す女性監督コッポラの優雅な強さを支持したい。

Review02 クラウディア・プイグ 評価:★★▲(満点は星4つ、は半分)

物語、白人だけのものなのか

美しいしつらえの、もの悲しい作品だが『マリー・アントワネット』など他のコッポラ監督作と同様、スタイル重視となっている。歴史的かつ知的な豊かさを時に欠き、物語の力を削いでいる。

女性は品よくあれという期待がいかに性的関心をゆがませ、病的にさせるかに焦点を当てている。女性たちは負傷兵に惹かれるにつれ企み、独占欲を強める。負傷兵はまるで網にかかった人質。こうした筋書きにフェミニスト的解釈を見いだす人もいるだろうが、完全にそうと受け取れるわけでもない。

感情的な動揺が多くの演技に表れているが、コッポラは原作にあった黒人奴隷の女性の役柄を省くことで、それを強調しようとした。なぜ省いたのか理解に苦しむ。奴隷制をめぐる南北戦争は後景に置かれ、物語を白人だけのものにしようとしているようだ。