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「グリーンブック」オスカー受賞 論争呼んだ「友情物語」、評者はどう見る

Cinema Critiques 映画クロスレビュー
© 2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.

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Review01 川口敦子 評価:★★★☆(3.5=満点は★4つ)

「娯楽」の衣着た社会派

『ブラック・クランズマン』『ビール・ストリートの恋人たち』と、過去を背景にしつつも、トランプ政権下のアメリカこそを突く問題作が目につく。1962年、人種差別がはびこる米南部を旅した“おかしなふたり"の実話から生まれた『グリーンブック』もまた、人種間の偏見や憎悪を平気であおる大統領の下、人と人の間にも分厚い壁が築かれつつある今をにらむ。壁を破る希望の芽のありかをそっと指し示す。
監督ピーター・ファレリーは弟ボビーと共に“健全なアメリカ"に笑いでたて突くタブー破りのコメディーを連発してきた。兄弟監督作の核心にはしかし、人の心の機微をうがつ物語術が健やかに息づいていた。最新作も然りだ。差別主義者のイタリア系タフガイとカリスマ的黒人ピアニスト。あまりに違うふたりは旅を経て互いを知り、知らなかった自分も知り美しい友情で結ばれる。と、こう書けば紋切り型の展開とも響くが、ファレリーはあえて古風なシンプルさをその道中記に採り入れ、観客を温かな気持ちへと導くのだ。
ハリウッド伝統のウェルメイド作品の質を身につけた映画は、同時に『スミス都へ行く』などフランク・キャプラの往年の快作とも通じる娯楽の衣を着た社会派の神髄を体現している。

Review02 クラウディア・プイグ 評価:★☆☆☆(1.5=満点は★4つ)

「差別の現実」見ていない

いつから人種差別は愉快な話になったのか。実話に基づいているとしても、深刻なテーマにユーモアを見つけようとするのは、無知で浅はかだ。演技は力強いのに、シナリオが単純すぎるし、しばしば不快ですらある。
道中では笑いを誘う出来事が起こり、2人の違いが強調される。教養を身につけた黒人ピアニストのドナルドと、口汚くて粗野な白人運転手トニー。対照的な2人組の友情物語とロードムービーを交ぜたストーリーが進む。
しかし、表面的なユーモアを探すあまり、現実にある人種差別を過小評価している。ドナルドは上流階級のホールで演奏するほどの音楽家なのに、黒人専用のモーテルにしか泊まれず、レストランやトイレにも入れない。気取ったシナリオや冗談で済ませるには、あまりにも痛々しい歴史があるのだ。
もし、米国に人種をめぐる一触即発の状況がなければ、もっと好意的に受け止められたかもしれない。しかし、物語は現状からずれているし、人種差別は過去のものだという誤った認識を持つ白人に心地よい内容になっている。
2人の思いがけない結びつきを通し、「グリーンブック」の歴史を語るドキュメンタリーの方が、人種差別問題を深く掘り下げる作品になったと思う。