「世界最古の自動販売機」は、実在したかどうかも定かではないが、約2000年前のエジプト・アレクサンドリアの神殿にあったとされている。
ギリシャの科学者ヘロンが著したとされる本の写本に、構造図が残っている「聖水自販機」だ。
硬貨を入れると、てこの原理で聖水の出口をふさぐふたが短時間開き、聖水が出てくる仕組みだったという。水洗トイレのタンクと同じ仕組みだ。
「自動販売機の文化史」(鷲巣力)によると、自販機が次々に考案されるようになったのは19世紀の英国。
約200年前の1822年には、「言論の自由」を求め、思想的に販売を禁止された書籍のための「禁書自販機」も登場したという。
現存する日本最古の自販機は、郵政博物館(東京都墨田区)所蔵の「自働郵便切手葉書売下(うりさげ)機」とされる。
赤い郵便ポストや福引の抽選機の考案者としても知られる山口県の発明家俵谷高七が1904年に完成させた。
向かって右に3銭切手の販売口、左に1銭5厘のはがきの販売口があり、「うりきれ」表示も出るようになっていた。当時の逓信省が買い上げたが、作動の正確性に難点があり、実用には至らなかったという。
世界市場は成長予測
そんな歴史のある自販機。現在、日本にはどれだけの数の自販機があるのだろうか。
日本自動販売システム機械工業会の2021年末のデータでは、400万3600台。このうち約半分にあたる225万4400台が飲料の自販機だった。
これはほかの国と比べてどうなのか。
前身の団体のまとめでは、米国は13年末時点の台数が645万900台。
日本の13年当時のデータと比較すると、台数では米国が上回るが、年間売上額でみると、約427億ドル(約4兆1846億円=当時)と、日本より1兆円以上少ないと報告している。
日本でいかに頻繁に自販機が使われているかがうかがえる。
国際市場調査によると、自販機の世界市場は拡大している。
22年~27年の予測では、世界の自販機市場は年平均成長率約17%が見込まれ、市場規模は約124億ドル(約1兆6000億円)増えるとの予測もある。
現金を使わないキャッシュレスの自販機の需要が増えており、リアルタイムで販売データを収集できる自販機もトレンドだという。一方で、自販機荒らしや盗難被害などの増加も指摘している。