番組名は「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」(原題=Predator: The Secret Scandal of J-Pop)。イギリス本国では3月7日(日本時間8日)に放映された。日本では3月18、19両日に放送や配信が予定されている。
日本での放映に先立って17日、東京都内の日本外国特派員協会(FCCJ)で本編が上映され、取材にあたったジャーナリストとディレクターとによるオンライン会見が開かれた。
会見で、取材にあたったジャーナリストのモビーン・アザー氏は「私たちは取材でここまで『沈黙の壁』にぶつかるとは思っていませんでした。組織やジャーナリスト、企業、音楽業界の人々は自分たちの経験を共有したがらず、意味のある形で関わろうとしませんでした。番組の最大の狙いは議論を呼び起こすことにあります」と述べた。
またジャニーズ事務所については、「ジャニー喜多川氏の名前を今も冠し、親族が経営する企業が疑惑に真摯に向き合い責任を果たすと考えていませんが、喜多川氏が作り上げた組織に若者を擁して今日も利益を上げている企業として行いを改めてもらいたいし、世間も実際に何が起きたかを知って、安全対策を講じてほしいと思います」と話した。
日本育ちという番組のディレクター、メグミ・インマン氏は「人々が口を開くことを、ここまで恐れているとは思っていませんでした。また、この事案が人々の間でほとんど作り話や都市伝説のように考えられていること、そして、私たちが児童虐待だとみなしていることがセレブのゴシップとして扱われ、真剣に扱われていないことの2点に非常に驚きました」と振り返り、「人々が声を上げられるようになること、そしてジャニー喜多川氏のような力のある立場の人が責任を問われることを望みます」と話した。
約1時間のドキュメンタリーでは、ジャニーズ事務所にかつて所属していた男性3人が、「Jポップ界のゴッドファーザー」(アザー氏)だった喜多川氏から受けた性加害について証言している。オーディションに合格した後、「合宿所」と呼ばれたマンションに招かれ、マッサージと称して体に触れられるなどの行為があったと証言。言葉を詰まらせながら当時の状況を語るシーンもある。
また、ドキュメンタリーには1999年に喜多川氏の性加害疑惑を追った週刊文春編集部の当時の記者たちも登場する。当時の一連の報道について、日本国内の他のメディアが追随することなく疑惑についてほぼ無反応だったと証言。民事裁判で、一部の加害行為が事実であると認定する判決が確定したあとも喜多川氏に対する刑事訴追が行われなかったことを、アザー氏は驚きをもって伝える。
BBCニュース - BBC、故ジャニー喜多川氏の加害について取材 言葉を詰まらせる元ジュニアhttps://t.co/BvLMJQSZqF
— BBC News Japan (@bbcnewsjapan) March 8, 2023
喜多川氏のセクハラ行為疑惑などを報じた週刊文春の記事をめぐっては、喜多川氏とジャニーズ事務所が1999年11月、記事に虚偽の内容を書かれ、名誉を毀損されたとして週刊文春を発行する文芸春秋(東京都)側を相手取り、計1億円余りの損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。
記事の内容について真実かどうかが争われた複数箇所のうち、一審の東京地裁判決(2002年3月)は、一部について「真実か、真実と信じるだけの理由がある」としたが、喜多川氏によるセクハラ行為などについてはそれを認めず、文春側に計880万円の支払いを命じた。
原告、被告双方とも判決を不服として東京高裁に控訴し、2003年7月に控訴審判決が言い渡された。その中で、セクハラ行為については「その重要な部分について真実」と認定され、一審・東京地裁の判決を変更して賠償額を120万円に減額した。
ジャニーズ側は上告したものの、最高裁第三小法廷は2004年2月、上告の棄却を決定し、二審・東京高裁判決が確定した。
GLOBE+編集部は、3月10日と14日にジャニーズ事務所に今回BBCの放送についてコメントを求めたが、「担当者に連絡する」とした後、3月17日午後4時現在、回答はない。
BBCによると、藤島ジュリー景子社長から、疑惑についての直接の回答はなく、今後のコンプライアンス遵守の徹底など「社会から信頼いただける透明性の高い組織体制及び制度整備を一歩ずつ進めております」とする文書による回答があったという。