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英名門校の日本校に入るには?進学教室に増える相談 相次ぐ開校の背景に中国リスク?

World Now 更新日: 公開日:
年、ハロウ安比に4人が入学した「グローバル・ラーナーズ・インスティチュート」広尾校。運営する鏑木稔氏は「インター入学の相談が増えている」と語る。
昨年、ハロウ安比に4人が入学した「グローバル・ラーナーズ・インスティチュート」広尾校。運営する鏑木稔氏は「インター入学の相談が増えている」と語る。

英名門パブリックスクールの相次ぐ進出で、保護者のインターナショナルスクール(以下、インター)への関心が高まっている。

進学を後押しする教室には問い合わせが増えている。

日本校開校の背景には「チャイナリスク」も垣間見える。

教育事業「グローバル・ラーナーズ・インスティチュート(GLI)」は高級住宅街、東京・広尾に20217月、インターナショナルスクールや海外校を目指す教室を開校した。20人が英語で自ら問いを立てて情報を集めて分析し、周囲と議論しながら解決策を見つける探究学習に取り組む。

昨年は4人がハロウ安比に入学した。

「ハロウ安比の開校の反響は大きい。どうすれば行けるのか、との相談が増えている」と代表取締役の鏑木(かぶらき)稔氏は言う。

ハロウ安比の入試は半年以上の長丁場だ。

昨年、ハロウ安比に4人が入学した「グローバル・ラーナーズ・インスティチュート」広尾校での指導の様子
昨年、ハロウ安比に4人が入学した「グローバル・ラーナーズ・インスティチュート」広尾校での指導の様子=2022年11月19日、東京都港区、織田一撮影

数学なら共通の特徴をもつ図形を選ぶといった「認知能力」と、学力テストではつかめないコミュニケーション力や社会性など「非認知能力」を測る。そして約15分の面接。初年度はファーリー校長が全受験生を面接した。 ファーリー校長は「様々なことに好奇心を持っているか、学ぶことに貪欲か、学校にどう貢献してくれるかといった点をみている」と話す。

GLI広尾校から合格した4人のうちの一人は都内の中学校を受験するつもりだった。一昨年6月ごろ、ハロウの日本進出を知った。外資系企業で働く父親がイギリスのハロウ本校の卒業生ということもあって、ハロウ安比に志望先を切り替えた。

GLIでは英語の基礎力を徹底的に鍛え、同年10月には中学校卒業程度の英検3級に合格した。

鏑木氏は「学校は向上心をみている。ゼロから、マイナスから、どう努力を積み重ねて成長したか。その点、英語力ゼロだった子どもが4カ月で英検3級をとるという頑張りは、周囲の子どもにいい影響を与えると評価されたのだろう」と言う。

昨年、ハロウ安比に4人が入学した「グローバル・ラーナーズ・インスティチュート」広尾校での指導の様子
昨年、ハロウ安比に4人が入学した「グローバル・ラーナーズ・インスティチュート」広尾校での指導の様子=2022年11月19日、東京都港区、織田一撮影

「学ばせたいなら世帯収入4000万円は必要」

GLI広尾校に通う子の保護者は、高給で有名な自動車制御機器メーカーや、外資系コンサルの社員、外資系の顧問弁護士、銀座の画廊の経営者らだ。「ハロウ安比で学ばせるなら世帯年収が手取りで4000万円は必要」と鏑木氏。

今年秋には英国のパブリックスクール、ラグビースクール・ジャパン(千葉県柏市)とマルバーン・カレッジ東京(東京都小平市)が相次いで開校する。ラグビーはハロウと同じく名門「ザ・ナイン」の一つだ。

東京都内で開かれたマルバーン・カレッジ東京の学校説明会=2022年10月28日、織田一撮影
東京都内で開かれたマルバーン・カレッジ東京の学校説明会=2022年10月28日、織田一撮影

相次ぐ日本上陸、背景に中国の私立学校への規制強化?

相次ぐ「上陸」について鏑木氏は「中国が関係しているのではないか」と指摘する。多くの富裕層がいて、子の教育に資金を惜しまない中国に、欧米のインターは注目し、分校を次々に開校してきた。

しかし、中国政府は2020年ごろから、インターを含む私立学校への規制を強化。教育省は201912月に「教材管理規則」を定め、歴史や思想、宗教などに関しては国外で編集された教材を使うことを禁じた。20219月改正の「私学振興法実施条例」では、「共産党の指導を堅持する」ことを求め、私立学校の理事会構成員は中国国籍に限った。共産党担当者の参加も義務づけた。

欧米系インターは個性を重視し、リベラルな価値観を反映した独自の教育方針をとっており、当局が露骨に学校経営に介入できたりする一連の規制は受け入れがたい。北京や上海など中国各地で展開してきたハロウなど各校も事業の見直しを迫られていた。

東京都内で開かれたマルバーン・カレッジ東京の学校説明会=2022年10月28日、織田一撮影
東京都内で開かれたマルバーン・カレッジ東京の学校説明会=2022年10月28日、織田一撮影

中国式教育を敬遠し、本格的な欧米式教育を子どもに受けさせたい中国の親たちにとっても、距離的にも近く文化的にも似ている日本なら留学させやすい。「日本は中国からの子女を取り込める魅力的な市場となった」と鏑木氏。

3校は「日本進出と中国の規制強化は直接は関係ない」と説明するが、「チャイナリスク」に敏感になっていることは間違いない。

ラグビースクール・ジャパン評議会議長を務める東京大大学院の鈴木寛教授は「グローバルブランドのインターの日本校への注目度は高まる。日本はシンガポールやバンコクに比べてインターが少なく、高度人材を呼び込むにあたって、子どもの教育がネックになっていた。いまが千載一遇の機会だ」と話す。

日本で「傍流」に見られてきたインターナショナルスクール。グローバリズムが進む中で存在感を見せ始めている。